無様な姿が・・・
やっぱり、あいつは変わっていなかった。
人を殺した?不良を束ねてる?あははは、そんなことがあいつに出来るわけがないじゃない。
クラスのみんなはあいつの事を買いかぶりすぎているのだ。
あいつは人も簡単には殴れない、臆病者なのよ。
確かに眼は危ないけど、たったそれだけじゃない。
あいつは誰よりも素直で、優しくて、しっかり者なんだから。
何にも恐くない。
でも私を忘れていることは許せないわね。
まあいいわ、忘れてしまったことは思い出してもらえばいい。
例えどんな手段を使ってでも、ね。
それにしても、あの土下座は爆笑モノだったわ。
まるでプライドなんて言葉を知らないような、見事に無様な姿だったわ。
ああ、思い出しただけで笑えてくる。
私は笑いを何とか堪えながら、教室に入った。
「おおおおおおおおおおっっっっ!!!!」
と同時に耳に響く歓声と拍手が沸き起こった。
え、何?今度は何なの?
私はポカンと呆けたまま、その場に固まっていた。
はああっ。
溜息が止まらない。
溜息をすると幸せが逃げていくというが、本来溜息とは憂鬱だからするものなのだ。
俺の場合、憂鬱イコール不幸だという事だから幸せが逃げていく前ではなく、幸せが逃げてから溜息が出るのだ。
はああっ、
溜息が止まらない。
「そんなに溜息ばかりしていると幸せが逃げるぞ」
うるさい。
もう逃げちまったよ。
後の祭りなんだよ、
「ま、これから良い事があるさ」
いい事ってなんだよ。
そんな何の根拠もない事を言ったって、全然慰めにならねんだよ。
・・・・・・・・・?俺は一体誰と?
「いや、根拠ならあるさ。君は私が見込んだ負け組みなのだからな!!」
「なに!?」
俺の隣にはいつの間にか眼鏡男がいた。
ていうか、まだ諦めてなかったのかこいつ・・・・・・!?
「さあ、改めて君を負け組み愛好会に招待しよう。どうだい?これ以上のいい事はそうそうは無いだろう」
い、や、だ!!
負け組みなんて入った暁には、俺はきっと立ち直れなくなる。
男としての何かが脆く崩れ去ってしまうだろう。
今でも危険な状態だというのに、これ以上精神衛生面上よくないことをして堪るか!!
「拒否する」
俺は即行で断る。ついでに睨みを利かせる。
常人であるならこれで、俺に付き纏う事は無いだろう。
無いはずだった。
「ふっふっふ。そんな恐い顔しても、今回はちびらないな」
ちびったことあるんかい!!
我ながら恐ろしいな。
ていうか、何気にこいつ余裕だな。
しかもなんか、笑い方がキモイし。
「これを見たまえ!!これでもう君は、言い逃れは出来ないはずだ!!」
とか言いながら、眼鏡男は何かを俺に突き出してきた。
・・・・・・写真?
俺はそれをまじまじと見る。
仁王立ちをしている女性と、無様なほどに地面に額をこすりつけている男の姿が・・・・・・・・・なにーーーーーっっ!!
そこにはつい先ほどの、俺と倉元亜紀のワンシーンが映っていた。しかも人には絶対見せたくない場面だ。
ていうか現像早すぎだろっ!!




