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〜ランダム〜  作者: 志貴
6/10

倉元亜紀

悔しかった。

悔しかった悔しかった悔しかった。

あいつは私の事なんて覚えていなかった。

手紙にはちゃんと名前が書いてあったはずだ。

読んでいないという事も無い。

私はあいつの顔を見ただけで分かったっていうのに。

あいつは全然。

ずっと前のあいつをそのまま成長させたような、自分のイメージ通りの外見だった。

でもあいつは、名前を見たにも拘らず、全然私の事が解っていないようだった。

結局私だけだったんだ。

あの事も、あの約束も、私の存在すらも、あいつは忘れてしまったんだ。

そう思うと、怒りよりも悔しさがこみ上げてきた。

今にも出そうになる涙をこらえて、下唇を噛む。

別に期待してたわけじゃない。

アレからもう何年も経っているのだ。忘れて当然だ。

そうだ、忘れて当然なのだ。

じゃあ、何でこんなにもムカつくの?

やっぱり覚えてほしかったのかな?


「倉元さん!」

「はっ、はい!」


急に私の名が呼ばれた。

驚いた私はちょっと声が裏返った返事をしてしまった。


「倉元さん本当なの!?」

「え、何が?」


いきなり本当も何も、話の筋が読めない。


「川島君のことよ、川島君。倉元さんがのしちゃったって本当なの?」


う、そのことか。

確かに、あいつが私とは初対面だって聞いたときに、ついカッとなっちゃって、我ながら見事な蹴りをお見舞いしたんだっけ。

それがこんなにも早く学校に広まるなんて、あいつ有名なのかしら?

ココは包み隠さず正直に答えるべきね。


「ええ、本当よ。自分でもやり過ぎたって思ってる。今度、あやま・・・・・・」

「すっっっっっごーーーーい!!!やっぱり本当だったんだ!!!!」


私が答えたとたん。教室に居た生徒全員が男女問わず一斉にこっちに向かってきた。


「あの川島君を!!勇気ある〜!」

「マジかよ。何か習ってんのか?ていうかあいつって強いのか?」

「強いって言うより恐いのよ。あの目、絶対何人か殺してるって!」

「噂じゃあ一声掛けると、百人以上の族が集まるらしいぜ」

「気をつけなよ倉元さん。ああいうのは後からが性質が悪いんだから」


え、なに?何なの??何の話???

ごちゃごちゃと周りで喋られたら聴き難い。

あいつの事よね?

別にあいつを殴る事に勇気なんて必要ない。

族って何?あんなへなちょこがそんな物と関係あるわけ無いじゃない。人も殴れない奴よ。

どうも、私の見解と周りの認識は全く別物みたいだ。

いや、私はずっと前のあいつの事しか知らない。

人は変わるものだ。

アレから、あいつが周りが言っている様な奴になっていたとしたら?

そんなはずは無い。昨日のあいつからはそんな感じは全くしなかった。昔と同じだった。

でも・・・・・・・・・。

ガラガラガラ。教室のドアが外から開けられた。

そのとたん、馬鹿みたいに騒いでいた教室が、まるで水を打ったように静まり返った。

そして、みんなの視線は一人の男に向けられている。

人を睨み殺すかのような鋭い眼。

苛立っているのか、下唇を噛んでいる。

少々伸びすぎている前髪。

噂をすれば何とやら。


「・・・倉元、亜紀・・・さん居ますか?」


丁度、噂の張本人が立っていた。

川島魁人。

私を忘れてしまった男。





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