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〜ランダム〜  作者: 志貴
5/10

負け組み候補!?

おかしい。

教室に入った俺は物凄い違和感に気が付いた。

おかしい。

みんなが俺を見てる。そして何かこそこそ喋ってる。

今までなんて、俺と目を会わす事も出来なかったはずなのに、今日はやけに視線を感じる。

何故だ?

俺は疑問符を頭いっぱいに浮かべながら席に付いた。

目玉だけを動かして部屋を見渡してみる。

男女問わず俺に視線が入っている。

何故だか居た堪れないのは気のせいでしょうか?

そう思った唐突に、教室のドアが物凄い勢いで開けられた。

バンッ、という音に俺は少し心拍数を上げた。

そっちに視線を移すと、なにやら眼鏡を掛けた、いかにもインテリっぽい奴が入ってきた。

そして歩いてくる。歩いてくる。

こっちに歩いてくる!!??

俺は内心ビクビクだったが、そこは生まれ付いての感情表現の乏しさで何とか冷静を装う。

今の俺は周りから見れば、こっちに向かってきた男をにらめ付けているのだろう。

それはそれで悲しい。

ピタッと、姿勢良く俺の目の前で眼鏡男が止まった。

やはり、俺に何らかの用があるのか。


「君が川島魁人君だね?」


姿形がインテリっぽかったら、口調もなんてインテリなのでしょうか。

ぶっちゃけ、肌が粟立つ。

俺は緊張しながら答える。


「そ、だけど。あんたは?」


そう聞いた途端、その眼鏡男はいきなり鼻息を荒くして、眼鏡をくいっと持ち上げた。


「良くぞ聞いてくれた!!この私、周藤幸太すとうこうたはこういうものです」


と言いながら、胸ポケットから一枚の紙切れを取り出した。

俺はそれを受け取る。

そこには


《負け組み愛好会 創立者兼会長兼議会長

 周藤幸太》


・・・・・・・・・。

・・・・・・。

・・・。

「・・・・・・負け組み・・・・・・」

「そう!!負け組み!!人生とは世界とは、いずれも必ず勝ち組と負け組みに分けられてしまうのだ!勝ち組は自分達がそうだと言う自覚を持たず、悠々とその生活を送るが、負け組みは違う!!何時も自分より才能が

ある他者を妬み、嫉妬し、劣等感に苛まれ続けているのだ!そんな負け組みたちを救うのがこの負け組み愛好会。自分よりも才能が無い同じ負け組みを集めることによって、その傷を薄め、癒し、友情を作る。喜べ川島魁人!君はその素晴らしい愛好会に入団する権利を得たのだ!さあ、我々と一緒に負け犬となり、遠吠えでもしながら傷の舐め合いでもしようではないか!!!」


言っていることの意味が分からない。負け組み?入団?何言っちゃってんのこいつ?


「・・・はい?」

「ふむ、現状を理解していないようだね。それも仕方が無い。こんな素敵なところに入ることが出来るのだ。混乱して当然だろう」

いやいや、負け組みのどこが素敵なんだよ!逆に嫌じゃわ!

もろ如何わしいしじゃねぇか。それに負け犬って何だ負け犬って。俺は一体何に負けたんだよ。

「説明しよう。昨日君はある女子生徒に体育館裏に呼び出されたね。実は愛好会組員の一人が早くもその情報をキャッチしていてね。君の後を付けたらしいんだ」

な、なんて奴らだ。どこでそんな情報を掴んだんだ。ていうか負け組み愛好会ってお前の他にも居たのかよ。

「そこで見たものは、女子生徒に鳩拳を食らい、膝裏と胸を蹴られ、逃げ出そうとした隙に後頭部に一撃を貰ったそうじゃないか」


なんてこった。こいつは事細かに昨日の事態の説明をしやがった。改めて聞くとなんて恥ずかしいんだ。

すると、俺の耳に「やっぱり本当だったんだ」という女子のヒソヒソ話が届いた。

やっぱりって、という事は学校中に知られてしまっているって事か。


「沈黙は肯定と取っても構わないね。そう、だからこそ君は選ばれた。君はその破壊力のある眼光によって学校を牛耳っていたが、ある美少女転校生によってその座から引き摺り下ろされ、負け犬となった。その後の君は屈辱と恥辱、後悔と孤独が待っているだけだろう。しかし、我々がそうはさせない。君を負け犬と見込み、負け組み愛好会に招待しよう」


そうか、なるほど。別に牛耳っていたなんて事実は無いが、端から見たらそうだったのだろう。

そんな俺が、突如としてやってきた転校生にコテンパにやられた訳で、無様な姿を晒しているんだろう。

しかし、周りの視線からは、同情でもなければ哀れみでもなくて、むしろ嘲笑ってないか?

なんだか精神的に痛い。

ガタッ、と椅子を引いて立ち上がる。


「おお、入団する気にって、何所に行こうとしているのかね?」


俺は眼鏡男を無視して教室のドアを開ける。


「待ちたまえ!」

「便所だ。ついて来るな」


その後、ホームルームが始まったにもかかわらず、俺はずっとトイレの個室に居た。


何してたかって?


泣いてたんだよ!!


・・・・・・少しな。


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