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〜ランダム〜  作者: 志貴
3/10

突発的な行動派

ワッツ!?

そう思って不思議じゃない衝撃が、俺のみぞに襲い掛かった。


「か、はっ」


悶える。そして悶える。

まるで世界が一瞬にして夢の中に変わってしまったような、あまりにも現実を無視したくなる苦しみ。

一体俺が何をしたというのだ。


「あんたみたいな極悪人は百回死んだってまだ足りないわ!!」


俺を殴った張本人がなにやら叫んでいるが、正直苦しすぎて聞き取れない。

改めていよう。俺はこの十六年間、人様を殴ったことも無ければ口論をした覚えさえないのだ。

そんな超平和主義者たるこの俺が、なぜ意味も分からず突然、鳩尾を殴られると言う体罰を甘んじなければならないのだ?

おかしい。おかし過ぎるぞ。

こんなおかしい状況になったのは今から数分前。




約束通り放課後、教室から体育館裏に移動中。

いや、別に手紙だったから約束なんてしてないけど。

それどころか命令形だったからどっちかって言うと強制だろう。

宛先人不明の手紙に従った俺に、吉が出るのか凶と出るか、はてさて疑問だね。

しかし、この学校で誰とも交流が皆無の俺に、誰が呼び出しなんてしたのだろう。

こっちは不安と少しの期待で鼓動が収まらないではないか。

体育館裏という最も予測不可能なところで、俺に一体何が待ち受けているのか。

俺は思考を止めて歩きに専念する。

そして、体育館裏に到着。

そこには、一人の女子が立っていた。

物凄い不機嫌そうな顔で。


「・・・あ」


目が合った。

しかも、かなり睨んでいる。


「おそいっ!!」


いやいや、遅くない遅くない。

授業終わって即行でココにきましたよ。貴方が早すぎるんです。

と言う文句は心の中でだけにしておいた。


「えっと、手紙・・・くれた人?」


正直自信が無かったので、小声で聞いてみた。

彼女の制服の胸の部分に青色の名表がぶら下がっているので、どうやら自分と同じ二年生のようだ。

だがおかしい。この少女は見たことが無い。自分で言うのもなんだが俺は記憶力が抜群にいい。一度見た顔も早々には忘れんはずだが。


「あんたが、川島魁人?」


相手も疑問系だ。

尚更おかしいぞ。俺と分かっていたから手紙をくれたんじゃなかったのか?

もはやこの学校で俺のことを知らないのは新入生である一年ぐらいだぞ。二年になってまで知らないはずが無い。

そういえば、隣のクラスに転校生が来たとかクラスメイト達が話してた様な気が。


「そうだけど、君は誰ですか?」


そう聞いた瞬間。彼女から鋭い眼光が消え。無表情に近くなった。

そして、トコトコ、と俺に向かって歩いてきて。

ドゴッ

俺に向かって拳を突き出してきた。



其れがさっき起こった出来事。

全く意味が分からん。あの会話にこの女の気に触るようなことでもあったのだろうか。


「けほ、けほ」


俺は咳き込みながら立ち上がる。


「初対面の人に暴力するなんて、どこの国の挨拶だ?」


ドカッ

今度は膝の裏を蹴られた。

筋肉で守られていないのでかなり痛い。ついでにヒザカックンされたみたいに、途端にバランスが崩れて膝が地面に付く。


「もう一度言ってみなさい。誰と誰が初対面ですって?」


底冷えするような恐怖の声。

それは、不正解を答えたら即刻抹殺してやると言っているようだ。

世の中はおかしい。俺の面なんかより物凄く恐いモノだってあるじゃんか。


「え、ええと。俺ときぐほっ!!!」


言い終わる前にまた蹴られた。


「あんたと私が初対面?はっ、白々しいとはこの事ね。私に行った数々の恥辱、忘れたとは言わさないわよ!!」


そ、そんな馬鹿な。

俺は今まで十六年間。人様を殴った事も・・・・・・以下省略。

ついでに言うと、無口で、無愛想で、人に話しかける勇気の無い俺がそんな大それた事するはずがない。

そんな事、俺の自慢の海馬にだって記録されて無いぞ。


「ちょ、待て、人違いだっ!もしくは誤解!!」


俺は必死の説得を試みようとした。

だがそれは、目の前の女には無意味だったようだ。


「誤解?人違い?今更そんな言い逃れするなんて、たいした奴じゃない。いいわ、ココで引導を渡してあげる」


引導なんて渡されて溜まるか!

この女はおかしい。

きっと被害妄想か何かが、俺の面を見たことによって爆発してしまったのだろう。

そんな巻き添えを食らってたまるかっ。

俺は痛みで鈍くなった身体に喝を入れ、身体を起き上がらせると早急にこの場を脱しようと後ろに走る。


「逃がすかっ!!」


その女は逃げようとした俺の足に自分の爪先を引っ掛けて、足払いをしてきた。

角度、タイミング共に絶妙であったが、俺も空手二段の実力者。こけない様に素早くバランスを立て直す。

だが、相手の方が一枚上手だった。

バランスを立て直すことに精一杯だった俺の後頭部に向かって、容赦無い蹴りが跳んできた。

もちろん、そんなものを防ぐ暇など無いわけで、ゴンッ、と鈍い音を立てて直撃してしまった。


「がっ」


世界が回る回る回る回る。

世界が暗くなる暗くなる暗くなる。

世界が??????????

「魁・・・バ・・・・・・い」

なにやら聞こえてきたが、今の俺にはそんな物を聞き取れる状況ではなかった。

そして俺は、意識の狭間をさまよい続けた。




余談になるが、この光景を誰かに見られてしまっていたらしい。

そのおかげで、俺は今よりもっと不幸になってしまった。


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