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動画①『美少女ニート姫を部屋から脱出させてみたww』

今の状況を一言で説明するなら、それは犯罪だった。


ギンギラギンであからさまな自己主張強すぎる金髪ヘアーに、室内なのにサングラスを掛けた20代位の海パン姿の男が、ネグリジェ姿でベッドに横たわっている14歳位の黒髪ロングの美少女の上に覆いかぶさっていた。世が世でなくても、どの世界でも犯罪である。じわりと少女の目に涙が滲んだのを観て、チャラ男は我に返って、跳ねるように少女から離れて後ずさる。


「ウェイウェイウェイ、ちょ~と待って下さいヨゥこれは!」

「変質者さん……ですか?」

「違う違う断じて違う! 俺はこう見えてリスペクトされないダーティな犯罪だけはやらない主義なの! このチャラ男の男を賭けて誓ってもいい!」

「男を賭けるって…なんか卑猥…」

「あ、結構そういうの大丈夫な子なんだな。いやまあこんな格好だとなに言っても信じてもらえないよね」

「普通の格好をしてても信じない」

「ですよねぇ~! フッフゥ~↑↑!!……泣いていい?」

「どうぞ。ハンカチ」

「ありがと、あとでちゃんとクリーニングして返すわ」



「それで、貴方は誰? なんでそんな格好で私の部屋に居るの?」

「キモ据わってるねぇちっちゃいのに。とりあえずなんか服くれない? 流石にこのままの格好で他の人きたら通報されるだろ」

「この部屋には私の服しかない…」

「なんかねえの?Tシャツとかさ」

「てーしゃつ? 丁字型のショーツならあるけど」

「それ女の子のパンツやーん!余計変態度上がるパティーンやーん!」

「あとはこれとか」

「超高級そうなビロードのドレスやーん俺が着られるわけないやーん!…君わざとやってるだろ」

「ちょっとおもしろかったから」

「はははこやつめ。まあいいや、適当にカーテン使わせてもらおう。古代ギリシャ彫刻的ファッションですって言い張ればなんとかなるだろ」

「彫刻というには体が貧相」

「それは地味に傷つくから言わないで……、ってまあこんな感じで俺が変なやつだとはわかってもらえただろうけど、同時に悪いやつでもないってわかってもらえたかな?」

「十中八九変態だとは思うけれど、九割五分ダメな大人だとは思うけれど……」

「からの~↑↑」

「概ねおおよそ処刑対象で、おそらくまずまず性格合わないかもかもしれないけど……」

「ウェ、ウェイ」

「そんなことはどうでもいい」

「ウェ?」

「だって、この部屋には誰も入ってこれないもの」

「どゆいみ?」

「誰もこの部屋には入ってこれない。ご飯を持ってきてもらった時だけ、ドアの下についた小さいドアが開く。だから通報とかそういうのは気にしなくていい」

「あ~、なんというか、うん、あれだな、知ってる知ってる。俺の世界でもいたこういう子。小4のときクラスメイトのよっちゃんがこんな感じだった。えーと、なんというか、あれだ……人付き合いに不慣れな子?」

「引きこもり」

「あー言っちゃったかそれー!ッカー言わないでおいたのに! ……あー、なんて言えばいいのかなこういう時」

「別に気にしないでいい。ふつうのコトだから」

「普通じゃないと思うけどなーそれ」

「生まれた時から、こんなだったから」

「え?」



「私のお父さん、この世界を支配する覇王でね。世界征服する過程でちょっとひどいことをして、ある先住民の一族を皆殺しにしたの。国単位で。その時、お父さんは呪いを受けた。その呪いは『今後生まれる子供が、一生部屋から出られない』というものだったの。呪いは本当にあって、私は一歩もこの家から出たことがないの」

「ウェイ……」

「こんなに知らない人と長く話したのははじめてだった。ちょっと変態っぽくて馬鹿っぽいけど、私は嬉しかった。だから通報なんてしないよ……ってなんで泣いてるの?!」

「こ”べ”ん”、お”れ”こ”う”い”う”は”な”し”に”よ”わ”く”て”」

「どうぞ、ハンカチ」

「あ”り”が”と”……ち”ゃ”ん”と”ア”イ”ロ”ン”か”け”る”か”ら”……ってそうだ。本題忘れるところだった」

「え?」

「俺がなんでここにきたか、教えてなかったよね?」

「理由があるの?」

「ああ、俺実は元の世界で死んじゃってさ、でも天界のジーザス的な奴らが俺の事チョー受けるって思ったらしくて、異世界で復活することになったんよ」

「チョー受ける」

「そういうニート離れした適応力好きよ。でね、なんか俺のこれからの寿命ってのが天界のYouTubeみたいなのの再生数に比例するらしくて、色々突拍子もない事しないと死んじゃうわけよ」

「泳ぎ続けないと死んじゃう魚みたいだね」

「そそ、で、そろそろ何かしないといけないっぽいんだよ。このくだりもういいって合図来ててさ。んで、一つ思いついた」

「え?」

「試しに、話通じそうな偉い人呼んで?」



「本当にうまくいくのかな?」

「いくっしょー間違いなく行くっしょー」

「で、でもこんなノリと勢いしか無い屁理屈みたいな話で本当に……」

「俺だってノリと勢いしか無い展開で天界から転生したんだから大丈夫っしょー! ってあれ、展開で天界から転生ってなにげに韻踏んでてかっこ良くね?! すごくね? ってなんでめっちゃ冷めた目で見られてるの俺」

「人が引きこもり脱出しようとしている時に……」

「リラックスさせようって思ったんだよわかってよ~。ほら、扉に手をかけて」

「う、うん」


二人が巨大な開かずの扉に手を当てると、扉はゆっくりと、少しずつ開いていった。眩しい光、新鮮な空気、心配そうな表情で見守っていた大勢の家臣達が、扉が開ききる前に姫の手を代わる代わる握り、涙を流した。


「ほ、本当に開いた」

「な、言っただろ?」

「呪いが「部屋から出られない呪い」だからって、世界をまるごと買い取って一つの家だって言い張ればいいだなんて……」

「ウェイ? 惚れちゃった? 頭良すぎて惚れちゃった?」

「涙がでるほどアホ過ぎる」

「ウェーイ↓↓ ま、これで良かったじゃん。部屋から出られて」

「うん!」

「俺も部屋から出られて、天界YouTubeの再生数そこそこ稼げたから万々歳だろ。……さて、次はどこ行くかな」

「え? ここに残ってくれるんじゃないの?」

「いやー残りたい気持ちはやまやまだけど、俺もネタ探しし続けないと死んじゃうからな」

「そんな……」

「それに、せっかく異世界にきたんだ。色々見て回らないともったいないだろ」

「あ、あの!」

「ウェイ?」

「わ、私も、私も連れてって!」

「いいよ!」

「即答?! いいのそれで?!」

「パーリーピーポーの仲間力なめんじゃねえぞ~昨日の他人は今日のマブダチってな!」


こうしてチャラ男とニート姫は、その場のノリと勢いで旅をすることになった。


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天界YouTube動画タイトル『美少女ニート姫を部屋から脱出させてみたww』

今回の動画再生数:5094345215回

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