第七話 未来への選択
年月日不明 18:30 アグラッド王国 ワーテル領
帰ってくると早々、私は父親に呼び出された。思えば、必要な時以外は両親とほとんどしゃべらなかった。
私ははっとすると、私がまだ5歳である、という事実から、私が化け物じみていると思われているのではないか、という結論に至り、父親に謝罪した。
すると父は驚いた様子で、「そのことについてはいい」と言って、次いで私に「重要なのは、これからどうするかだ」と忠告された。
と言っても、私には何のことかよく分からない。すると父は、お前ほどの頭があれば、「学園」に行ってもおかしくないだろうと言った。
学園とは何か。それに触れる前に、読者諸君に、この世界と地球の大きな相違点について紹介しなくてはならない。
聞いて驚くなかれ。この世界には「魔法」が存在しているのである。もちろん、なんでもありではない。魔法を使うためには、もともと個人が持っている素質に加え、(生まれたときから魔法が使えない人も、世界には僅かだがいる)使用するための練習、さらに優れた魔法知識、これが必要となる。反対に言えば、これらが揃えば、魔法はまさに大きな力を使用者に与える。
しかしながら、それだけの高度な知識や訓練を一般人が独学で実行するのには無理がある。そうして現れたのが「学園」の前身、修了所だ。
この修了所を各国は大金をはたいて進化させた。それが「学園」だ。
「学園」は魔法習得のための知識および訓練を受けさせてくれ、さらには数学や地理、歴史、国文、理科などの基礎的教育も受けさせてくれる。いうなれば、この世界の大学である。
もちろん「学園」にも試験はある。だから、「学園」に入学できただけでも、その人は秀才と言える。それだけの力があるのだ。
その学園に入学しないかと、父は私に聞いたのである。
だが、だ。父も知っているはずだ。学園に「5歳」の、まだまだ(外見上)子供の私が入ると言うのは、常識では考えられないことを。(学園に年齢制限があるわけではない)
「いや、お前ならできるさ。お前にはその力がある」
と言われてみても、自信がない。おそらく周りは自分よりひと周りもふた周りも大きいのだ。
今すぐでなくともかまわない、と父は言う。平均的な入学年齢である10歳、それまで待ってもいいと。
私としては、学園に行くよりも、母親と今まで触れ合っていない分、もっと触れ合いたいと言う気持ちが強くなっていたので、「すぐに答えることはできない」と言った。
私はどうすべきなのだろうか。私はまだ、父が学園入学を私に勧めてきた意味を、見つけられずにいた。
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