第三話 五年経ち状況を知る
年月日不明 14:20 アグラッド王国ワーテル領
5年が経った。
長いものかと思われたその期間は、経って見ると実に短い期間であった。
まずはじめに、この世界の言語を取得しようとした。当時私はこの星が地球であると思っていたから、英語を話せればいいかと思った。
しかし、その考えは、自分に会いにきたと思われる女性(おそらく母上の友達だろうか)の耳に耳が生えているのを見たときに、きれいさっぱり消え失せた。
ここは地球でない、まったく別の星である、と。
赤ん坊というのは、言語の習得が早い。他人から何も教わっていないのに、いつの間にか言葉をしゃべっているものだ。
しかしそれは、「何も知らない赤ん坊が」の話である。
こちとら日本語、英語、フランス語にラテン語が話せる(フランス語はパリに行ったときに、ラテン語は一昔前の医学論文やカルテを読むために必要となった)のだ。
そしてそれは、この世界の言語体系から成り立った通称「ベルリア語」を学ぶのに不要な知識としかならず、ずいぶんと苦労させられた。(多くの人が、中高では英語、大学では第三・四言語を覚えるのに苦労したのではなかろうか)
そして、この世界の地理・歴史・社会体制・宗教もわかった。
この世界の地理は実に簡単である。まず主な大陸は3つ。トレス大陸、ノーマン大陸、そしてベスパキア大陸。
何のことはない、それぞれ地球のユーラシア大陸、アフリカ大陸、オセアニア大陸である。おおむねそう解釈してかまわない。もちろん地球での東南アジアである、タリマン・ヴェタビア列島群もある。この国、アグラッド王国はトレス大陸の西、地球のオーストリアのあたりに位置する小国だ。
歴史はといえば、それはもう涙なしには語れないもので、この国はこの周辺地域をまとめて支配する国がいなかったために、独立せざるを得ず、しかもよりにもよって東へつながる交通の要所なので、昔から各国軍の通り道として利用されていた。そのため国家常備軍は貧弱で、装備の更新どころか定員割れを常時しているような国であった。つまり戦争が周りで起きたら即アウトなのである。
そこで全国王、スーコフ6世は軍備の大幅拡張に取り組んだ。しかしながらそんな大拡張をしたがために、国内では問題が噴出している。(拡張したとうの陸軍内でも派閥闘争が激化しているそうであるから、本末転倒である)
社会体制はさっき述べたとおり絶対王政、その元に貴族がいてさらにその下に官吏がいる。つまり、実質的な各地域の指導者は貴族(正しくは領地を与えられた貴族)なのだ。(しかし王は貴族の任命権および任務剥奪権、また勅命を出す権限を持つ、この国の指導者である)
私の家もこれである。
宗教はややこしいことにこの国内部で3つもあり、(細かい派閥を上げるときりがないので、大まかに答える)それぞれが対立している。
その仲の悪さといったらすさまじいもので、戦時中どころか占領下においてもお互い喧嘩(大人の、しかも組織同士の喧嘩がどうなるか、想像に難くないだろう)していて、それは国民内にも亀裂を生んでいる。
また、宗教派閥と犯罪組織が手を組み、一部地域は治安の悪化が激しい。
ちなみに私の家はベスターニャ教のモンテルロ派というやつで、この国にもともとあった宗教だ。
……まあ、こんなもんだろう。五年で、子供が手に入れることのできる情報量といったら、こんなものだ。(多くの情報は父親の書斎の本に書いていた)
あ、そうそう。私の名前が判明した。私の名前はジョン・ワーテルである。
今までの話含め、改行を多くしてみました。見やすくなったでしょうか?
ついに1000字を超えました。次はジョンの生活を書いてみます。