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間章 騎士と主


 薄暗い宮殿の中を、甲冑を身に着けた女性が早足で移動している。

 リカムの首都は大陸でも北寄りに位置し、標高が高いこともあってか夏でも汗をかくほど気温が上がる事は無い。初夏の今ならば、凍えるような風もおさまりいくらかすごしやすくなっているはずなのだが、宮殿の中は氷ででも出来ているかの様に肌寒かった。


「これはカディロフ将軍。貴方がここに来るとは珍しい」


 廊下の交差する十字路にて、呼びかける声があり女性は立ち止まった。


「……セルゲイ」

「こんにちはサーシャ。うら若い乙女がこんな所に来るものじゃありませんよ」


 あんまりな言い草に、サーシャは苦笑いで返す。

 そこに居たのは、サーシャと同じリカムの将軍セルゲイ・バイエフであった。彼女にとっては古い馴染みであり、最も信頼する相手でもある。


「どうしたのですか? さっきも言いましたが、貴方がここに来るなんて久しぶりではありませんか」

「陛下に奏上を」


 短く答えたサーシャに、セルゲイはあからさまに顔をしかめてみせる。


「聞かなくても結果は分かりきっていますね」

「ああ。相変わらずイクサの言いなりだ」


 人形帝。あるいは傀儡帝。それが十五年前にリカムの皇帝の座を継いだグリゴリー三世のあだ名であった。

 国政の殆どは他人任せ。特にイクサの持ち出す案件は疑問を挟まず即座に受け入れ、逆にイクサと敵対的な者の言葉にはまったく耳をかそうとしない。

 それほど長い歴史を持たないリカム帝国は、三代皇帝にして愚帝を頂いたと陰口を叩かれる始末だ。


「セルゲイ。私は十五年前、確かにこの国は変わると思った。陛下ならば、この血塗られた国を変えてくださると。しかし実際にはこの有様だ」

「変わるには早すぎたんですよ。誰もが私や貴女のように、過去のしがらみを忘れる事ができるわけじゃない」


 サーシャとセルゲイ、二人の父は、リカムに滅ぼされた小国の騎士であった。自らの祖国を滅ぼした国に、平然と仕える事のできる者は少ないだろう。

 この国は、その巨大な腹の中に多くの憎しみと怨嗟を抱えている。


「それでも! イクサが居なければ少しはマシになったはずだ! おまえには分からないかもしれないが、日に日に奴の魔力は強大になっていく。その黒い魔力のせいで宮殿の中は侵食され、空気は淀み、兵の中には立っているだけで倒れる者まで出始めた」

「そのまま死んだらアンデッドにされそうですね」

「セルゲイ。私たちは、新たな魔王の誕生を見過ごしてしまったのでは無いか?」


 軽口にも反応せず問うたサーシャに、セルゲイは笑みを消して視線を返した。セルゲイとて、イクサの危険性は十分に承知している。

 だがどうしようもないのだ。あの男を殺すことなどできないと、この十五年間で多くの者が証明してきたのだから。


「……今は目前の問題に対処しましょう。ピザンとの戦、中々に手こずっているようです」

「……戦力の出し惜しみをするからだ。私が行けばリーメスの一つや二つ」

「ウォルコフ殿が行くそうです。いや、もう本当に素晴らしい笑顔で出立されましたよ」


 自分と同じ将軍の地位にある人物の名前を聞き、サーシャは呆れたような顔をする。


「何故嬉しそうに? 巨人はピザンを離れたのだろう?」


 ユーリー・ウォルコフという男は、先の大戦で最強と謳われた鬼将ウォルコフの息子であり、自らも二十七将に数えられた武の申し子だ。

 しかしどんなに大勝していた戦いでも、コンラートとの一騎打ちになると予定調和のように敗退し、一方的に不倶戴天の敵として認識しているのはリカム軍内では有名な話だ。


「祖国の危機となれば彼も戻ってきて、例え一平卒の立場でも文句も言わず剣を振るうでしょう」

「なるほど。そこまでピザンを追い詰める自信があるという事か」

「しかし最初はお父上の仇である、クラウディオ殿を狙っていたはずなのですがね。ことごとくコンラート殿に阻まれて、完全に目的を見失っていますね」

「思慮深い方なのだが、どうにも抜けているからな」


 一応は先輩にあたる人物に、二人の評価は遠慮が無かった。



 長らく膠着状態にあったピザン王国とリカム帝国の戦いは、ピザンが守るリーメスをリカムが突破する事により一気に動きを見せた。


 リーメスを守るピザン諸侯は、当初こそその猛攻をよく凌いでいた。しかし攻め手に加わった、僅か五百ほどの援軍によって、あっさりと、あっけないほどに短時間でリーメス要塞を陥落されたのである。

 援軍に現れたのは、リカム帝国白竜騎士団と、それを率いる将軍ユーリー・ウォルコフ。十五年前の戦いにおいて、ピザン王国に多大な被害を与えた鬼将ウォルコフの息子であり、自らも二十七将の一人に数えられる英雄であった。


 かくしてピザン諸侯軍は敗走を余儀なくされる。

 ピザン諸侯は大軍のままの撤退を避け、西と南に別れて逃亡を始めた。一方のリカム軍も、奪取したリーメスに少数の守りを残すと、同じく二手に別れ追撃を開始する。


 西へ逃げたピザン諸侯軍は、ザウツブルクにてアルムスター公爵軍に合流。背後に迫るリカム帝国軍へと対峙する。

 対しリカム帝国軍を率いるユーリー将軍は、兵数に差が無くとも質で大きく勝ると判断。正面からピザン諸侯軍へと攻め込んだ。


 アルムスター公爵領ザウツブルクのフロッシュ平原にて、両軍は激突した。



「壮観だな」


 平原の彼方からやってくるリカム軍を見やり、男は自身でも不思議なほど冷静な声色で漏らしていた。

 その身を包むのは、煌びやかな装飾の施された鎧。よく使い込まれたそれだけを見れば、男は歴戦の勇士であるかのように思われるかもしれない。

 しかしその甲冑は、父であるアルムスター公より譲り受けたものでしかない。男――フランツ・フォン・アルムスターにとっては、眼前に迫ったこの戦いこそが初陣であった。


「不安ですかな?」


 不意に横から問われ、フランツはそちらへ視線を向ける。

 そこには騎乗した中年の騎士が一人。厳しい顔には一筋の深い傷跡が走り、正に歴戦の勇士といった空気を醸し出している。


「不安さ。だがそれを部下に悟られてはならない。……そういった意味では、私は指揮官失格かねパウル?」


 その言葉は、苦笑では無く気負いの無い微笑の下から発せられた。それを見てパウルは首を横に振ると、岩のような顔を崩して笑みを見せる。


「外面だけを見れば完璧ですとも。しかし初陣では下は勿論上からも色々と漏らす物です故。せいぜい気を張っていてください」

「それは是非とも遠慮したいね。例え初陣であっても、優雅に己の本分を全うしなくては」


 そう身振り手振りを加えて言うフランツの姿は、舞台の上に立つ役者のようであった。はたから見れば滑稽ですらあるが、これで無能ではないのだから性質が悪い。実際貴族の令嬢(一部子息)の中には、フランツの立ち振る舞いに憧れ、挙句真似をする者までいる始末だ。

 父であるアルムスター公は、何故こうなったのかと頭を抱えていた。しかしパウルは、フランツが自分に自信をつけるために、あえてそのように振舞っていると気付き、特に咎めるような真似はしていない。

 見ていて面白いという理由もあるのだが、それは秘して墓場まで持っていくべきだろう。


「戦力は互角でもこちらが不利。さて、どうすべきだと思うパウル?」

「何故不利だと思うのですかな?」

「おや? 教えてくれたのは君だろう。単純な兵の質の差もあるが、さらに問題なのは指揮系統の差だ。あちらが全軍将軍の指揮下で統制されているのに対し、こちらは一応私が総指揮官とされているものの、実際には諸侯が各々の手勢を率いて戦うしかない」


 そこまで言うと、フランツは苦笑した。


「そしてそうなれば、各々の諸侯の思惑によって足並みも揃わず、最悪面倒事を他に押し付けて勝手に逃げ出す者も現れるだろう。事実既に白竜騎士団という、一番面倒な相手を押し付けられるのは決まっているしね」

「リカムの四大騎士団の一つ。率いるはリーメス二十七将の一人ユーリー・ウォルコフ。勝てる気がしませんな」

「英雄とはそれほどかい?」


 あっさりと敗北宣言をするパウルに、フランツは取り繕うのも忘れてその顔に驚きの色を浮かべた。


「士気の高揚という意味でも厄介ですが、二十七将に数えられた者たちは、いずれも一騎当千の化物ですからな。こちらもクラウディオ殿下やグラナート夫人に、出張っていただきたい所です」

「……コンラート殿が居てくれれば良かったのだがな」


 旧知の名が出て、今度はパウルが驚く。


「フランツ様はコンラートを嫌っていると思っていましたが」

「嫌うというよりは、畏怖しているのさ。もしかしたら嫉妬かもしれないね。主に全身全霊を持って尽くす忠義の騎士。私は領主などよりも、騎士になりたかったよ」

「領主も王に仕えるものでしょう」

「いやいや。王と領主の関係など、意外にドライなものだよ。まったくカールが羨ましい。ゾフィー王女から直々に騎士団へと誘われたそうじゃないか」


 コンラートが罷免され、その従騎士であったカールの扱いに国内の誰もが苦慮した。

 彼が優秀である事は、騎士に任命された後の騎馬試合で証明されている。しかし国王の不況を買った者の身内を、己の懐に入れるのは勇気がいる。

 そうやって領主や騎士団がまごついている内に、颯爽とカールを引き入れたのがゾフィー王女であった。口の悪い者は、王女の道楽騎士団に入れるなど宝の持ち腐れだと喚く。しかし当のカールがゾフィー王女に心酔してしまっては、いくら騒いでも後の祭りであった。


「ふふふ。私の手伝いをさせている内に、どさくさ紛れにカールに領主を押し付けようという私の野望は潰えたよ」

「お二方の破滅の道が回避されて何よりです」


 フランツは騎士になど向いていないし、カールもまた領主には向いていない。

 冗談半分なのだろうが、半分マジだとフランツの目が言っている。よほど騎士になりたいのか領主が嫌なのか。恐らくは両方だろう。


「戯言はここまでにしよう。ここは被害を最小限に抑えるために、守りに徹するべきだろうか? クラウディオ殿下の蒼槍騎士団が来られれば、かのウォルコフ将軍も恐るるに足らずだ」

「何と消極的な。ここはウォルコフ将軍を討ちに行くべきでしょう」


 予想外の提案に、フランツは今度こそ顔に出さぬようにして驚いた。


「攻城戦ならともかく、逃げ道がいくらでもある野戦では決着がつき辛いと教えてくれたのはパウルではなかったかね。そうでなくても相手はあの鬼将の息子だよ?」

「だからこそです。普通ならば指揮官は後方で守られるものですが、ウォルコフ将軍は間違いなく、絶好のタイミングで、こちらの嫌がる時を見計らい、自ら突撃してくるでしょう。そしてそうなれば『英雄』が居ないこちらの被害は甚大。あたら兵を失い逃走する破目になるでしょうな」

「ああ、何と絶望的な予想だろうね。しかしパウルの言いたい事は分かった」


 そう言うと、フランツは婦女子が見れば一目で陥落するであろう、魅惑的な笑みを浮かべた。



 ざっと見渡した部屋の中は、応接室には見えなかった。

 目に付く調度品の類は、壷か花瓶か判断のつかない陶器だけ。置かれた椅子や机は小さく、何より部屋自体が狭い。

 椅子に腰かけた主の背後に控えたは良いが、壁際にへばりついてもなおその背が近すぎる。

 ここは本当に三公に数えられるローエンシュタイン家なのかと、同じく三公の出であるカールは呆れた視線を巡らせた。


「落ち着かないか?」

「はい!?」


 不意に目前の主――ゾフィーに声をかけられ、カールは慌てて妙な声を上げてしまう。

 すぐさま視線を前へと戻すが、そこには相変わらずピンと伸びた背。その姿に恥を覚えたのは、カールに浮ついた心があったためだろう。


「いえ、落ち着かないのは確かですが……」

「それは私のせいか。すまぬな、わがまま王女の世話をさせて」

「滅相も無い!」


 大声で否定するカールに、ゾフィーは首から上だけ動かすと、横目でカールを見やり笑った。その姿に、カールはますます慌てている自分が滑稽に思えてくる。


「し、しかし、ゾフィー様の従者に、僕などを指名してよろしかったのですか? せっかく騎士団を連れて来たのだから、他に適役はいくらでも居たでしょう」


 王女の道楽騎士団。その内実が他の騎士団にひけをとらないものだと、カールは即座に気付いていた。

 何より王女に長らく仕えていた、リーメス二十七将の一人マルティン・ローデンバルトが居るのだ。本人はもう歳だからと謙遜していたが、彼一人居るだけで他の騎士団に劣らぬ戦いをする事ができるだろう。


「今回は政治的な話故、アルムスター家に連なるそなたにも聞いておいて欲しいのだ。それにそなたが居ること、それ自体に意味がある」


 要は「アルムスター公爵はゾフィーに協力的である」という、ローエンシュタイン公へのメッセージだ。その上で、他の選定候がゾフィーに協力的であると話せば、これまで色良い返事をしなかったローエンシュタイン公も折れてくれるかもしれない。


「はあ。じゃあ騎士団を連れて来たのにも何か政治的な思惑が? 僕だったら脅迫にしか見えないんですけど」

「そちらは……念のためだ」

「はい?」


 珍しく歯切れの悪い返事に、カールは首を傾げる。

 公爵家の人間であるカールだが、それほどゾフィーと接した機会は多くない。それでも今のゾフィーの姿は、らしくないものだと思える。


「待たせたな」


 カールが首を傾げている間に、勢いよくドアが開きローエンシュタイン公が姿を見せた。

 その不躾な態度と言葉にカールは眉をひそめるが、ゾフィーは気にした様子も無い。その美貌に笑みを浮かべて、ローエンシュタイン公へと向き直る。


「構わぬ。こちらも急だった故、迷惑をかけただろう」

「確かにな。戦の最中にこそこそと動き回るどこぞの姫君のせいで、余計な手間を取らされる」

「ローエンシュタイン公!?」

「良いカール」


 不敬にも程がある態度にカールは激昂しそうになるが、当のゾフィーは片手を上げてやんわりと制してくる。

 確かにカールが怒ったところで、この状況は改善されないだろう。そう理解すると、カールは不満を顔にはりつけつつも、前に出かけていた体を戻した。


「フン。アルムスターの倅を懐柔したか。口はそれなりに巧いようだな」

「ふむ。私はどちらかというと剣を振る方が得意でな。……このように」

「……え?」


 目の前の光景に、カールは唖然とした。

 ゾフィーが立ち上がったと思ったら、正面に立つローエンシュタインの胸を貫いた。いつの間に剣を抜いていたのか、カールには見えなかったし、何よりその行動が理解できない。

 実は凄く怒っていて、限界を越えたのだろうか。そんな事を暢気に考えていたが、すぐに正気に戻りカールは叫んだ。


「ゾフィー様!?」

「何をするか!?」

「ええ!?」


 自分に続き、胸を貫かれたはずのローエンシュタイン公が叫んだので、カールは驚きの声を上げる。

 見間違いだったのかと思ったが、確かにその胸元には穴が開き、僅かだが血も流れている。血が少ないため傷が浅かったのかと思ったが、よくよく見てみれば、その穴は完全に貫通して向こう側が見えていた。

 死んでもおかしくない。というか死んでないのがおかしい。


「演技が下手だなローエンシュタイン。胸を突かれたら死ななければならないだろう。それとも、銀の剣で無いと不服か?」

「……え?」


 ゾフィーの言葉に、ようやくカールは状況を把握する。

 アンデッド。そう呼ばれるモノにローエンシュタイン公はなってしまっているという事。


「国内にイクサの手の者が紛れ込んでいるとは思っていたが、まさか貴様がな」

「まさかと言ったか。そう思っている時点で、貴様らは後手に回っている」

「何?」


 ローエンシュタイン公の言葉に顔をしかめるゾフィー。そんなゾフィーに向かって、ローエンシュタインは最早話す事は無いとばかりに、人語ですらない雄叫びを上げて襲いかかる。


「遅い!」


 ゾフィーの剣が翻り、ローエンシュタイン公の両の手を切り飛ばす。しかしゾフィーにアンデッドとの戦った経験が無いのが災いした。両手を失ったローエンシュタインは、それを気に止める様子も無く、捨て身でゾフィーへと迫りその喉下へ食らいつこうとする。


「危ない!」


 間一髪。ゾフィーの背後から躍り出たカールが、その顎が届く前に首を切り飛ばした。

 アンデッドは、例え首を切り落とされても行動を続ける。それを思い出したゾフィーは今更ながら警戒を増すが、首を切り飛ばされたローエンシュタインの死体はピクリとも動こうとしなかった。

 何故だろうかと疑問に思うゾフィー。その答えはカールの手の中にあった。


「銀の短剣か。用意が良いなカール」

「お守りのつもりだったんですけどね。使う事になるとは思いませんでしたよ」


 そういっておどけてみせるカールだったが、その胸の内では心臓が激しく自己主張していた。

 何せ突然主人の命の危機が訪れたのだ。相手がアンデッドであると判断し、咄嗟に腰の剣では無く短剣を抜けたのは、半ば無意識の事。我ながらよくやったと褒めたい気分だ。


「しかしよくローエンシュタイン公がアンデッドだと分かりましたね」

「ああ、私にもよく分からないが、何故か確信めいた勘が働いた」


 自分でも不思議なのか、心なしか目の力を緩め可愛らしい顔でゾフィーが言う。

 間違っていたらどうするつもりだったのかと思ったが、カールは聞かないことにする。


「しかしローエンシュタインの周囲のどこまで、イクサの手が及んでいるか分からぬな。最悪ジレント攻めに加わっているグスタフもイクサの手の内にあると見るべきか」

「そういうのは後にして、まずは騎士団と合流しませんか? 敵地だと分かったのにのんびりしてるわけにもいかないでしょう」

「それもそうか」


 僅かだが、屋敷の空気が変わった。恐らくはローエンシュタイン以外にもアンデッドが居るのだろう。すぐにでもここに殺到するかもしれない。

 カールの言葉に頷き、ゾフィーはドアへと歩き始める。しかしそれを遮るように、カールが前に立った。


「……私は守られるほど弱くは無いぞ」

「万が一という事があります。それに、例えどんなに強かな女性が相手でも、か弱きものとして扱え。それがマスターの教えです」


 カールの言葉にゾフィーは目を丸くする。あの堅物と言っていいコンラートが、そんな事を教えるとは予想外だった。

 しかしすぐにそれがとてもおかしな事に思えて、ゾフィーは笑みを浮かべる。


「そうか。ならば大人しく守られるが、無茶はしてくれるな」

「御意!」


 ゾフィーの言葉に勢いよく答えると、カールはドアを蹴り飛ばすようにして開けた。 



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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました
日本の神々の長である天照大神は思いました。最近日本人異世界に拉致られすぎじゃね?
そうだ! 異世界に日本人が召喚されたら、異世界人を日本に召喚し返せばいいのよ!
そんなへっぽこ女神様のせいで巻き起こるほのぼの異世界交流コメディー
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