エピソード1(少女と二つの剣)
どうも、IKAです。
今回「闇の中で鳴く鳥」略して「闇鳥」は、初投稿作品となります。
とにかく書くスピードが遅い為、ただでさえ稚拙な文章をできるだけ簡単に書いていますので、分かりづらい部分が多々あると思いますが、気にって頂くと幸いです。
短編各話が繋がった続きものでの連載形式をとっています。
出来るだけ早い更新を目指していますが、多分遅くなるはずです。
すみません。
先にあやまっておきます。
では、「闇鳥」をどうぞ
楽しんでいただけると幸いです。
【闇の中で鳴く鳥】
きこえる
暗く深い闇の底から
かすかに聞こえる弱々しい声
闇に染まった破壊の力は、遥かな時を経て再びよみがえる。
闇は全てを失っていた。
無垢な闇。
無垢な闇は、
優しき月の光に照らされ
輝き始める。
気高き日の光に照らされ
強く育っていく。
悲しき運命を背負ったまま…
【エピソード1】
山の奥深くを歩く少女がいる。
言い争う男女の声が聞こえるが、少女以外に人の姿はない。
少女の腰のあたりから声が聞こえてくる。
少女は腰の左右に長さの違う剣を帯刀していた。
右側には青い刀身の小剣が、左側には少女の小柄な体格と比べると、少しサイズの大きな、赤い刀身の剣をさげている。
少女はひたすら表情を変えずに山道を歩き進んでいるが、相変わらず男女の言い争う声は聞こえてくる。
「何度も言ってるだろ!
この辺りの国々は情勢が不安定だから、街道を避けて国境をこえたほうがいいんだよ!」
「もう三日も山の中を歩きづめなのよ!
だからもう少し国境に近づいてから山道に入ればよかったのよ!」
「今、俺たちがいるこの国と、これから入国しようとしている国とは、臨戦状態なんだ。
かなりの広範囲で巡回を行っている可能性が高い。
いざ、揉めると面倒なのは人間だからな」
「案外、すんなり入国できたかもしれないわよ〜」
「どうだかな…
武装した娘が一人で旅をしていますっていって
すんなり通してくれるわけがないだろ。
相手は人間なんだからな」
「いつまでたっても人間嫌いはなおらないわねぇ〜」
姿の見えない男女の会話が続くなか、少女の足が止まった。
眼前に、少女の三倍はある巨躯のモンスターが現れたのだ。
熊の背中からはえた何本もの蔦がうねっている。首にはたてがみのように花びらがある。
少女は左右の腰に帯びた剣を腕を交差させて抜き放つ。
「珍しいな、フラワーベアだ」
姿の見えない男の声は、赤い刀身の剣から発せられていた。
「じゃ、あたしの出番はないわね」
青い刀身の剣から女の声がする。
「フラワーベアは火に弱い。だが別の戦い方だってあるがな。
カエデ、お前はどう戦う?」
赤い剣にといかけられた少女は無表情のまま答える。
「最近覚えた…。
新しい魔法…
使ってみる」
フラワーベアの前肢から繰り出される鋭い爪は、大振りでスキが多い。
しかし、反撃しようとすると、背中から鞭のように伸びる蔦が襲いかかる。
カエデと呼ばれた少女は事もなげにフラワーベアの攻撃をかわしていた。
少女は攻撃をかわしつつ何かを呟いている。
魔法の詠唱を行っていた。
「………」
「カエデ?その魔法って…」
詠唱の途中で青い剣が何かに気づいて、声をかける。
「ちょ、ちょっとまって!
ここでそんな魔法つかっちゃうと…」
「詠唱が半分以上終っている。もう中断できないな…あきらめよう」
赤い剣があっけらかんと言いはなつ。
「あんたが悪いのよ!
あおるから!」
少女がモンスターから飛び退き距離をとる。
と同時に詠唱が終わった。
「近い…!」
「わかってるわよ!」
少女の意識がモンスターへと向いた時、フラワーベアの足元から火があらわれ、たちまち火柱となって天へと燃え上がった。
火柱に包まれたフラワーベアは跡形も無く燃えた。
少女を火柱から守るように青白い光の壁が現れていた。
「ほら!まわりの木々に燃え移っちゃったじゃない!」
「お前が消せばいいじゃないか」
青い剣は不満をもらしながら魔法の詠唱に入る。
魔法が完成すると、少女の頭上を中心に雨雲が広がり、たちまち滝のような雨が降りだした。
少女の魔法によって木々に燃え移った炎はあっというまに鎮火された。
「カエデ〜…
どうして炎の魔法なんか使ったの…?」
「火に弱いって…」
「あのね、たしかにフラワーベアは火に弱いけど、場所が…」
「マルコが火に弱いって言ったから…」
「あーん、もう!
あんたのせいよ!」
赤い剣はマルコと呼ばれていた。
青い剣が呼び寄せた雨雲は消え去り、辺りには黒煙が立ち上っている。
「不味いな…。
この場所を離れよう」
「いやよ。
あんたの言ったことで
ろくなことになってないんだから」
二つの剣が言い争うなか、離れた場所から声が聞こえた。
「誰かいるぞ!」
「早いな…国境に近づいていたってことか」
「国境警備兵?」
青い剣が声をころしてつぶやく。
マルコと呼ばれた赤い剣が、少女に後方へ逃げるよう指示すると、少女は後方へと走り出した。
「逃げたぞ!」
草影に隠れていた兵士たちは姿を現すと、少女を追いかける。
「止まれ!止まらんと射つぞ!」
言うが早いか、一人の兵士が少女目掛けて矢を放った。
「止まるも何も、射ってきてるじゃないのよ!
頭にきたわ…」
青い剣は怒りの言葉を発すると、魔法の詠唱に入った。
魔法はすぐに完成した。
「跪きなさい!」
青い剣の掛け声とともに、追いかけてくる兵士たちの足元に白く輝く霧が現れたかと思うと、一瞬で兵士の足が地面ごと凍りついてしまった。
追いかける勢いをそがれ、膝をついて前のめりに倒れる。
「私に跪きなさい!」
青い剣は高笑いをあげる。
兵士たちを尻目に走り去る少女の前方に石造りの小さな建造物が見えた。
「遺跡か…
カエデ!あの遺跡に入るんだ」
「わかった…」
少女カエデが兵士たちから逃げて、遺跡に入ってから数時間はたっただろう。
外は日が暮れ始めていた。
モンスターとの戦闘でカエデが放った火柱の魔法が、木々に燃え移り鎮火するために雨を降らせた。
びしょ濡れになった衣服を乾かすために、遺跡を入ってすぐのひらけた場所で火をおこして休息していた。
普段人がいることがなく、静寂が支配する遺跡に男女の声が響く。
「ほら、カエデ。
ちゃんとローブ羽織ってないと風邪ひくわよ」
「うん…わかった。レディ」
相変わらず無表情のままだ。
「それにしても誰かさんのおかげで酷い有り様よね」
レディと呼ばれた青い剣は、皮肉のこもった言葉を赤い剣になげる。
赤い剣はただの剣であるかのように、沈黙している。
「そろそろ旅費も尽きてきてるはずだな。
荒らされてなければ旅費の足しになる物があるかもしれん。
散策してみるか?」
少女が何かに反応して辺りを見渡す。
「どうしたの?カエデ」
「何かいる…」
カエデが二つの剣を手に立ち上がると、遺跡の奥へと続く通路から三人の男が現れた。
「こいつは驚いた。
こんな山奥の遺跡に娘が一人とはな」
「なんだ、一人じゃないか…」
「あれ?たしかに男と女の声が聞こえたんだぜ」
少女一人とわかると、三人の男たちは無警戒に近づいてきた。
少女をましまじと見つめると、手にしていた二つの剣に目がとまった。
一人の男はずっとカエデの顔ばかりを見ている。
「値打ちのありそうなものをもってるな」
「この娘も上玉だぜ。
かなりの金額で売れそうだ」
「山奥くんだりまできて、遺跡がみつかったはいいが、奥に進めなくて困ってたとこだ。
お嬢ちゃん、大人しく俺たちについてきな」
「誰にケンカ売ってんのかわかってるんだろうな」
赤い剣が男たちに警告の言葉を発する。
三人の男たちは急に警戒心を強め、武器を取り出し辺りをうかがう。
「どこにいやがる!
大人しく出てきやがれ!」
「さもないと痛い目にあうぜ!」
キョロキョロと辺りをうかがう男たちにカエデは近づくと、右手に持っている赤い剣を見せて言う。
「マルコならここだ…」
「どうも、ご紹介に預かりましたマルコことサンマルクスです」
三人の男たちは理解できずに呆然と少女を見つめて立ち尽くしている。
追い討ちをかけるように少女は続ける。
「わたしはカエデ…
こっちがレディ…」
青い剣をつきだして言う。
「カエデ…?何やってるの?」
レディと呼ばれる青い剣はカエデに訪ねる。
「レディ、いつも言ってる…
初めて会った人には…
挨拶…」
「あ…」
「お前が悪い」
レディにここぞとばかりに皮肉を込めるマルコ。
「こいつらは敵よ!
挨拶なんてしなくていいの!
むしろトッチメテやるの」
「トッチメる…マルコもそう思う…」
「トッチメテやれ、カエデ」
愉快そうに答えるマルコ。
「剣が喋ってる…」
いまだに正気を取り戻せない男たちだったが、少女が剣を構えるとあわてて体勢をととのえる。
一瞬のことだった。
瞬く間に二人の男は石畳に叩き伏せられていた。
それを目の当たりにした一人の男は、腰を抜かして尻餅をつく。
「わたしにひざまずきなさい…」
「ひぃ!」
無感情に言いはなつ少女の言葉に怯える男たち。
「カエデ…跪きなさいって…」
力の抜けた声を発するレディ。
「お前のせいだな」
笑いをこらえながらマルコがレディに追い討ちをかける。
「さ、こんなやつらほっといて、遺跡の散策を始めましょ」
話をそらすように遺跡散策を促す。
ひらけた場所から男たちが来た方へと進むと、両開きの扉が道を塞いでいた。
「あいつらじゃ開けられねぇはずだ。
魔法で鍵がかかってる」
少女の腰で赤い剣が光を放ち始めた。
輝きが増し光が消えると眼前の扉が開きだした。
扉の中は二十畳ほどの空間になっており、奥に小さなドアがある。
「進むしかないようね」
少女は奥のドアへと歩みを進めた。
部屋の真ん中辺りに差し掛かった時、突然床が消えた。
「しまった、罠か!」
落とし穴の罠魔法がかけられていたのだ。
「カエデ、浮遊魔法を使え!」
マルコの指示にすぐさま詠唱に入る少女。
奈落の底へと落ちていく少女の体が浮いた。
ゆっくりとだが落とし穴の底へ降下しているようだ。
底へと到達すると、人間がすっぽりと入る石造りの箱が半壊していた。
「どうやら罠じゃなかったらしいな」
「どういうこと?」
「はるか昔、天魔大戦と呼ばれる天使と悪魔の戦いがあったらしい。」
「有名な昔話でしょ」
「天魔大戦後に今の魔法歴が始まったとされているが、一説では天魔大戦後と魔法歴の間に空白の時代と呼ばれる記録の無い時代が存在したらしい。
魔法歴が始まって以来、どんな資料にも記述されていない高度な魔法道具が見つかっているが、
それは空白の時代に作られたものである可能性が高い」
「へぇ〜、この残骸もその名残ってわけ」
「こいつは階段を使わずに建造物の階層を行き来できる大型の魔法道具だろうな」
「こんな有り様じゃ、
旅費の足しにもならないでしょ。先に進みましょ」
落下した場所は廊下のようになっていて、奥へと続いていた。
通路の突き当たりにドアがある。
ドアは少女が押すと簡単に開いた。
中は八畳ほどの個室になっていた。
ベッドと一人用の机、壁一面に本棚があり書物が整然と並べられていた。
「魔術ギルドに持っていけば良い値で引き取ってくれるはずだ」
「四、五冊ってところね。
あとは紙くず同然の価値しかないわね」
少女はマルコにいわれた書物を手に取り、腰の背後にある鞄につめた。
「ん?
カエデ。その棚にある白い表紙の本を押してみろ」
言われるままに少女は白表紙の本を押してみる。
隣の本棚が壁にひき込まれ、通路が現れた。
隠し通路を進むと石階段があり、先には微かに光が見える。
扉の隙間から光がこぼれていたのだ。
扉を開けると外に出た。
そこは辺りを見渡せる高台になっていて、離れた場所に明かりの灯る砦が見える。
「国境を抜けたようだな。あの砦は俺たちが越えようとしていた国境の砦だ」
「今日は散々だったわ」
「近くに町があったはずだ。そこで一泊しよう」
月明かりに照らされ、一人の少女と二つの剣は近くの町へと向かい歩き始めた。
「そうだわ、カエデ。
あのね…跪きなさいっていうのはね―――」
「レディ、かっこよかった…
かっこいいこと大事…
マルコいつも言ってる…」
「はっはっは!
その通りだ!」
「マルコ!結局あんたが原因じゃないのよ!」
「ひざまずきなさい…。
…かっこいい…」
「カエデぇ〜!」
「はっはっは!」
〜つづく〜