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sideB-2 ハリエット・ライデンシャフト

「それで──?」


 冷たく響く青年の声。私は彼を一ミリたりとも信用していないが、立場上そうせざるを得ないので深く頭を垂れる。


「ウィルバート殿下……ですから、カトリーナとの婚約は破棄のままで結構でございます。あの娘は行方をくらましておりますゆえ」


 あなただってあんな娘、お断りでしょうよ。

 それなのに、殿下はなんだか惜しそうな顔をしている。

 王家の中でも見目麗しく、愛らしいお顔立ち。ふわふわで黄金の髪色に、明るいグリーンの瞳。細くて柔らかな体躯。泣きぼくろのある甘いマスクは幼い印象を与え、優しく微笑まれると並の若い女性はコロンと落ちてしまうでしょう。

 そんな殿下は白い衣装に身を包み、私をじっと見つめては色っぽいため息をつく。正直、鬱陶しい。


「ハリエット夫人。言っとくけど、隠し立てはダメだからね?」

「えぇ、もちろんでございます。屋敷をくまなく見ていただいても構いません」

「そんな面倒なことはしないさ。ふむ、あんたが匿ってるのかと思ってたけど、そうだったね、あんたとカトリーナは犬猿の仲。割と有名な話だったよな」


 楽しそうに笑いながら言うのね。いちいち鼻につくわ。

 それに、何を考えているのかひと目ではわからない。色ボケ王子のように見せかけているけれど、その実、ウィルバート殿下も第三王子という立場として、他王子らの影に隠れてコソコソと何かをしている。

 噂では隣国とのご令嬢と恋仲であるとか。しかしそれもカモフラージュで、王座を狙っているなんて黒い噂がまことしやかに囁かれている。


 私は王より直々に、この黒い噂を払拭するべくカトリーナを嫁がせるというお約束をしたのだった。王のご命令であるがゆえに拒むことはできない。


「ウィルバート殿下。カトリーナを見つけたら、こちらで処罰をいたします。国王様もそのように致すよう仰せでした」

「でも私は気が済まないよ。あなたが変わりに罰を受けるっていうならいいけど。いやぁ、これは見ものだねぇ。さて、何をしようかな」


 こんな屈辱、あってはならない。

 王立学術院時代を思い出す。まだ若く、世間知らずだった私が他の錬金術師に遅れを取り、いじめまがいのことをされた。あの時代を──。


「夫人……ハリエット夫人」


 殿下は足を組み替え、頬杖をついてふんぞり返った。


「ここからが本題。カトリーナへの罰のことだ」

「え? あぁ……それなら、こちらで対処しますが」

「貴族籍の除籍はしなくていいよ。だって、私が彼女を娶るからね」


 殿下はあっさりと言った。


「……は?」


 私は空いた口が塞がらなかった。

 そんな私を見て面白がるように殿下は笑って、懐から何かを出した。


「これ、知ってる?」

「はぁ……魔石ライトでしょうか。巷で流行っているという」


 見た目はそれだ。私の調べではカトリーナが作ったものという。

 それを思い出すだけでイライラするけれど、殿下がそれを持っているというのは奇妙な話だ。


「子供のおもちゃでしょう? 殿下がお持ちになるようなものでは」

「おもちゃ、ね。うん、言い得て妙だね」


 魔石ライトをうっとりと見つめる殿下。その目はどこか遠くを見つめるようだった。

 

 ***


 カトリーナを嫁がせるのは、正直愚策ではあったものの我が伯爵家に繁栄をもたらすならそれが良いと判断したまで。

 婚約破棄騒動にお咎めどころか、最初の話の通りカトリーナを娶ってもらえるなら好都合。


 だけど……話が出来すぎている。


 ひとまず、あの娘を連れ戻さなければ。

 最近はトーマンもおとなしいけれど目星はついているのよ。


 あの男のところに、カトリーナはいる。

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次回は第4章です!

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