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第14話 ── 霧の海、巨獣との対峙(後編)



ソードザラシの突進が止まった。

だが、海はまだ荒れていた。

浮きが揺れ、波が跳ね、霧が震える。


ヨランは片腕を押さえながら、歯を食いしばって立っていた。


ヨラン

「アジム……! 俺は……大丈夫だ……! やれ……!」


その声は震えていたが、目だけは、まだ戦っていた。


アジム

「……はい!!」


アジムは胸の奥の黒い感情を押し殺し、

ヨランの方を見ずに前を向いた。


(……僕は、あの一瞬…… “死ねばいい”と思った。 最低だ。 でも…… だからこそ、終わらせる)


ソードザラシが海中で身をよじり、浮きが沈んだり浮いたりを繰り返す。


バルじい

「浮いたぞ!! 今じゃ! 巻けぇぇぇ!!」


村人たちがドラムの取っ手を掴み、全力で回す。


「せーのっ!!」


ラチェットが激しく鳴り、ワイヤーが巻き取られる。


ソードザラシが少しずつ引き寄せられる。

海面が盛り上がる。

霧が裂ける。


アジム

(……効いてる! 浮力と摩擦で、確実に弱ってる!)


だが、ソードザラシは最後の力を振り絞り、海面を割って跳ね上がった。


「……ォォォォォ!!」


その咆哮は、海そのものが叫んでいるようだった。


トマル

「やべぇ……! まだ来る!!」


セラン

「崖に突っ込むぞ!!」


アジム

「踏ん張ってぇぇぇ!!」


村人たち

「うおおおおおお!!」


ワイヤーが限界まで張り詰める。

滑車が悲鳴を上げる。

鎖が軋む。


アジム

(……耐えろ……!

 耐えてくれ……!)


ソードザラシが牙を振り上げ、崖に向かって突進した。


その瞬間――


巨大な浮きが、崖に叩きつけられた。


アジム

「今です!! 浮きを……崖に押しつけて!! 頭を固定します!!」


バルじい

「よし!! 浮きをぶつけろ!! 頭を挟み込むんじゃ!!」


村人たちがワイヤーを引き、巨大な浮きを崖へ押しつける。


ソードザラシの頭が、浮きと崖に挟まれる。


魔獣が暴れる。海が跳ねる。

霧が揺れる。


だが――


浮力と摩擦が、魔獣の動きを奪った。


アジム

「……止まった……!」


トマル

「動かねぇ……!」


セラン

「弱りきったんだ……!」


ヨラン(腕を押さえながら)

「……やった……のか……?」


バルじい

「……追い払えたんじゃ。 もう、あいつは戦えん」


ソードザラシは、最後に低く咆哮を上げると、ゆっくりと海へ沈んでいった。


霧の奥へ消え、波だけが残った。


■ 戦いの後


アジムは膝をつき、深く息を吐いた。


(……終わった…… でも……)


倒れたヨランの血が、アジムの視界に焼きついて離れなかった。


ヨラン

「アジム…… お前の……作戦がなきゃ…… 村は……終わってた……」


アジム

「……すみません…… 僕のせいで……!」


ヨラン

「違ぇよ…… お前が……やったんだ…… “未来”を……」


アジムは言葉を失った。


バルじいが肩に手を置く。


「アジム。 お前のおかげで……村は未来を掴んだ。 ヨランの怪我は……痛い。 だが、誰も責めん。 これは……村の戦いじゃ」


アジム

「……はい」


霧が晴れ始め、朝日が海を照らし始めた。


アジムはその光を見つめながら、静かに思った。


(……この痛みを忘れない。 これが、俺の“代償”だ)


そして、新しい一日が始まった。


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