表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/37

弁当

 コトンコトンと列車が揺れる。北海道の雄大な大地が窓から見え景観を楽しみながら、ようやく弁当の蓋を開けた。本来ならば一人で楽しみたかったが

向かいにはお婆さんとお孫さんが座っている。蓋を開けると鮭と卵、そして昆布等が乗っている。これをご飯と交互に食べる事で口の中にドラマが生まれる訳だ。いざ、箸を動かし口の中に入れようとすると


「お婆ちゃん、お腹へったね」


とお孫さんが一言漏らした。


自分の箸もぴたりと止まる。


お婆さんとお孫さんが羨ましそうにこっちを見ている。申し訳ないが、こちらも腹ペコで弁当を楽しみにしていたのだ。いざ、と口に運ぼうとすると、じーっ・・・と物欲しそうな顔で見つめられる。


超・・・・・・食いづらい。


それでも食べようとするとお婆さんが話し掛けてきた。


「すんませんけんども、この子に一口、どうか一口おねげぇできませんか」


「いや売店で売ってると思いますけども」


「それがですね....」


家が火事になり、この子の両親は他界殆ど無一文になったという。今まさに叔父のとこにいき預けにいくところだという。


「すみませんが何卒お恵みくださいませんか。この子に最後の人の優しさ見てえなもんに触れてあったかくなってほしいんだ。むこうでいびられっかもしれんし」


「僕ハリーポッターになっちゃうの?」


「叔父さんいい人かもしれませんよね」


と言って箸を進めると


「タカシは悪でそらもう学校1の悪童だったぁ」


自分の箸がピタリと止まる。


「今は更正されてるかもしれませんね」


そういって食べようとすると


「こないだも学校のガラス全部割ってただぁ」


嘘って分かってるけど....しょうがない


「じゃあ一口....僕、何がいい?」


「鮭と卵と昆布!!」


しばくぞ、と胸内で突っ込みながらもお孫さんに


おかずを口に運んだ。美味しそうに食べる所を見て


いざ自分もという所で横槍が入る。


「お婆ちゃんも、お腹減ってるよね?」


「いいんよ私は」


そうそう 大人なんだし


「ご飯だけで」


なんでやねん そこは引いてくれやお婆さん


と思いつつもご飯を口に運ぶ。


「ありがとうござーーーーーーーーックション!!」


やりやがったなババァ。


口からジェット噴射。


吹き飛ぶご飯粒。


俺の顔面にダイレクトアタックして口から出た唾が弁当に降り注ぐ。


婆さんと目が合う。


目が泳ぎ流石にマズイと思ったのか


弁当にもういいですどうぞとジェスチャーしてきた。


「いえもういいんであげますよ」


結局ご飯を食べる事は出来なかったが二人の話でお腹が一杯になった。


そういうことにしておこう


後日レストランでお孫さんとお婆さんそれから両親とおぼしき


4人を見かけそのレストランで注文する事なく立ち去った。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ