エピソード1 紹介から始まる日常
投稿済みの作品から流れで来てくださった読者様も初めて当方の作品にたどり着いてくださった読者様も。
『とある喫茶の日常』へようこそおいでくださいました。
緩くて呑気なので、ハラハラドキドキとは無縁のお話です。
四コマ漫画のような気楽さで読んで下さると良いかもしれません。
それではお楽しみ下さい。
とある市の賑やかな通りに近い雑居ビル二階。
カウンター五席、最大四人まで座れるテーブルが五卓。
開店時間は平日土日祝日関係なく十時。
ちなみに定休日は水曜日。
閉店時間は夜八時。でも近隣でイベントがあると延長することもある。
今時の外資系カフェとは違い雰囲気はかなり落ち着いた、レトロな壁と照明にアンティークな家具や小物がさりげなく置かれているのでスタイリッシュさはまるでない。そのため客層も年齢層は高め。
カフェではない。
喫茶店である。
店の名前は『喫茶ゆとり』。
ゆっくりして欲しい、穏やかな気持ちになって欲しい、和やかな気分になってほしい、とにかくそんな気持ちをひっくるめての『ゆとり』ということらしい。
店長須藤。
日中よくシフトに入るのは年齢順に安田、野村、三崎、この主婦三人。時々入る大学生の男性アルバイトは二人いて主に夕方からと土日祝日がメインとなっている。ちなみに主婦パート組は店長よりも全員歳上のため、年齢の話しは須藤の中ではタブーとなっている。
オープンしてまだ五年の喫茶界では新参者と言ってもいい『ゆとり』。
それでも人の集まる所はそれだけ話題に困らない。
定休日以外は日々、常連含めたくさんの客が須藤たちに話題、いや、雑談のネタを提供してくれる。
皆で開店前や閉店後にその話題で盛り上がったりしていることは、客たちは知らない。
勿論、須藤達自身がネタになることをやらかすこともある。
「おはようございます」
いつものように出勤した安田は、開店前のカーテンで店内が覗けなくなっている扉を開けて中に入る。
店内の照明も空調もすでに入っているので店長の須藤が来ていることは分かっているが、その姿がない。
中に進むと聞こえる水の音。
開店前の珈琲器具の準備や掃除ではない。
この水音がする理由をこの店で働く者たちは全員知っている。
トイレの洗面台でこれでもかと水を出し、店長が顔を洗っている音である。
寝不足でしんどい時はこうして店長が夏だろうと冬だろうと水で顔を洗って目を覚ましているのだ。ちなみに須藤は車で出勤してくるので、店員全員『この人そのうち事故起こしそうで怖い』と思っている。
「冷てー! さみー!くぅぅぅぅっ!」
と、冬だと聞こえても来るが、それももう慣れているので誰も『大丈夫ですか?』なんて声をかけたりしない。
「あ、安田さんおはようございます」
「店長おはようございます。顔洗ってたんですか、寝不足? それとも昨日店に残ってなんかしてました?」
「これがね、海外ドラマ見出しちゃって気づいたら2時過ぎてたってやつで」
「寝ろよ」
暴言が出るのは御愛嬌ということで。
『お客様へ 節水にご協力下さい』
ハンドソープの定位置あたり、壁にそんなプレートを貼ったのは誰だ。
店長お前が一番節水しろよ、と言いたいのを我慢して、店員たちは日々水で顔を洗う店長の体調を少しだけ心配する。
因みに店長が顔を洗う日は二度寝をすると確実に遅刻をするから起きてそのまま早めに店にやってくる。洗面台が水浸しになるため責任をもって本人が綺麗にしその流れでお店の掃除も終わらせる。
「あ、朝掃除終わってますよ」
と主婦組とアルバイト組が言われると皆心の中ではこう思うのだ。
(あ、顔洗ったんだ)
と。
「ありがとうございまーす」
朝のやるべき事が減って楽になるだけなので、素直に感謝をするのも日常の一コマ。
『喫茶ゆとり』はこうして一日が始まる。
こちら息抜きで極稀に執筆しております。
一部は作者の体験談を盛りに盛ってネタにしております。凡そ十年前までの体験談ですがどの部分かは非公開です……www
そして創作品なので、『んな馬鹿な』という話が出てきてもあしからず。
更新ペースは不定期を予定しておりますのでお気に入り登録やブクマなどしていただけますと幸いです。
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