5.VSガンベルク
「機体、変わってないんだね。その子の名前は?」
話しながらも切り結ぶ。ストームが得意では無い、と言っても名前持ちの範囲であるが、近距離戦を迫られている。
[ウォーテラー。それがこいつの名前だ。
中距離戦は被弾が少ないからな。機体が傷付く前に終わることの方が多い。こんなに追い詰められるのも…いつぶりだろうな]
通信を開いて語り始めながらも、中距離戦を狙う為、距離を取れるタックルを繰り返しながら話す。
「そう。じゃあ、残念」
[…そう簡単に終わると思うな]
後は斬るだけ。その状況でウォーテラーが腰から新たに装備を出した。構えと同時に何かを撃ち込み、重みのある破裂音が響く。咄嗟に回避し距離をとったものの、完璧には避けきることは出来なかった。
一見大砲でも取り出したのかと思えるほどの巨体。しかしリコルの機体に付いた切裂くような傷跡。
「ショットガン…」
[新調しておいたんだ。見ればわかる通り、まともに喰らえば…]
「生きては帰れない」
[出したくは無かったが仕方ない。降参はしてくれないのだろう?…致命傷は喰らってくれるな]
「…頑張る」
再び、戦いは始まった。
奥の手の甲斐あってストームは距離を手に入れ、中距離戦が始まる。
[先程までと同じようにいくと思うな!]
左手にショットガン、右手にアサルトライフルの磐石の構え。簡単な戦いでは無くなっていくのが分かる。
(…面倒。距離を詰めるにもあの精度の銃撃は無理。)
(こいつを出した時、既に模擬戦の域を超えてしまった。死ぬなよアカツキ!)
得意のアサルトライフルが火を吹いている。連射にも関わらず機体を掠めるその正確性にリコルは顔を顰めた。
先程と同様、避けきった後の近接戦闘を狙う彼女だが、恐ら弾数半分といったところでウォーテラーが前方にブーストを吹かした。
「ッッ!」
迂闊に近寄られればショットガンの餌食。咄嗟に回避を試みるもそれをブラフにしてリロードを行うストーム。
[歌う余裕も無いようだが。さぁ、どうでる!]
これぞ名前持ち。各々得意不得意はあれど、その圧倒的な力で戦況を変えてしまう、まさに一騎当千。
先程までとは全く違う戦闘に苦戦しつつも、突破口を探す。
「…」
機体内に表示されているダメージが段々と大きくなっていく。ジリ貧だ。
『機体損傷率三十パーセント』
小さくない被弾が蓄積されていく。
『ブースト燃料残り十パーセント』
意を決したのか、リコルは再び螺旋状に回転しながら距離を詰めた。
[恨むなよ!これも戦場の掟だ!]
―――当たる。そう確信しショットガンを放った。
つもりだった
リコルはその時、既にウォーテラーの背後にいた。
両腕は既に斬られており、撃つことは出来ず、負けたということをストームは理解した。
[…降参だ。まさかブースターを手動で使いこなすとはな。あんな動きをされては当てられない。また、お前に負けてしまったな。]
「いい動きだった。本当にギリギリ。あの頃より遥かに、近距離戦の精度が上がっていて危なかった。」
勝者はリコル。最初に斬った三人は即死、その他は重軽症。
彼女とストームは無傷で勝負を終えることとなった。