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バナナの代替品


 「お父様、お父様、気を確かにしてください」



 リリーちゃんが気を失ったローレル伯爵を叩き起こす。



 「リリーすまない。私としたことが気が動転してしまった。リリー、本当にバナナが奪われたのか?」



 ローレル伯爵は、バナナが奪われた事は夢であって欲しいと願う。



 「兵士の話を聞く限り本当だとおもいます」


 「そ・・・そうか」



 ローレル伯爵は再び気を失いそうになる。


 

 「しっかりしてくださいお父様」


 「やはり、夢ではなかったのか」


 「お父様、現実をしっかりと見てください。今は気を失っている場合じゃありません」


 「そうだな。しかし、誰がバナナを盗んだのだ?」


 「もしかして、私を誘拐するのを失敗したので、強引に奪いに来たのでしょうか?」


 「その可能性が高そうだな。すぐに、兵を集めてエアートベーレンに攻め込むぞ」



 リリーちゃんは少し違和感を感じた。



 「ちょっと待ってくださいお父様、私は大きな勘違いをしているかもしれません」


 「どういうことだ」


 「バナナを保管していたのはオリハルコン製の貯蔵庫です。どのような武器をもってしても壊すことが出来ない難攻不落の貯蔵庫です」


 「そうだ。しかし、貯蔵庫は破壊されてバナナは奪われた」


 「はい。その通りです。しかし、これはエアートベーレンと同様の犯行です」


 「私の大事なバナナを盗んだ犯人とビートル伯爵のイチゴを盗んだ犯人は同一人物だと言いたいのだな」


 「はい。ビートル伯爵に雇われた盗賊にオリハルコンの貯蔵庫を破壊する力などありません。オリハルコンの貯蔵庫を破壊できる人物こそが犯人です。しかし、そのような人物はこの世界にいるのでしょうか?」


 「ケモ耳族・・・」



 ローレル伯爵は小声で呟いた。



 「お父様、ケモ耳族とはどういうことでしょうか?」


 「ケモ耳族とは古い伝承で言い伝えられる最強種族。ケモ耳族は体長は3m超す巨人とも言われ、ケモ耳族1人は、万の兵に匹敵する力を持つと言われている。ケモ耳族が歩いた後には何も残らないデスロードが形成され、魔獣の大群ですら赤子の手をひねるように簡単に殲滅させる恐ろしい種族だ。しかし、あくまでこれは噂であり、実在しているのかは不明だ。100年前に目撃情報があるが、その証拠は何もないので伝説上の生物だという者も多い」


 「お父様、そのような迷信を信じているのですか!」


 「しかし、ケモ耳族以外は考えられない」


 「お父様!しっかりとしてください。今は夢物語を見るのでなく現実を見てください。私たちが今すぐにしないといけない事があります」


 「だから、犯人を捜すために考えているのだ!」


 「お父様、私たちが今すぐにしなければいけないのは犯人捜しではありません!」

 

 「では、どうすればいいのだ!」


 「バナナの代替品を用意する事です」


 「代替品だと!そんなものが簡単に用意できるわけがないだろう。あのバナナは市場に出回っているバナナとは全くの別のものであることはお前が一番知っていることだろう。1年間時間をかけて育て上げ、1か月後に開かれる誕生祭の日に完璧に近い形で熟成させる至高の逸品だ。それの代替品などどこにあるのというのだ」


 「お父様、そのことでお話があるのです。なので、大至急で家族会議を開きたいを思います」


 「本当に代替品が用意できるのだな」


 「詳しくは家族会議でお話します」


 「わかった。家族会議を開催する」



 なんだかよくわからないけど大変なことが起こっているみたいね。金の腕輪の件も気になるけど、あまり関わらない方が無難よね。ここに長居はするのは危険そうだから、ビスケットを作って明日にはどこか違う町に逃げた方が得策だわ。私は、君子危うきに近寄らずの言葉に従って早々にこの町を逃げる画策を立てる。


 しかし、ここでまた大事件が勃発する。



 「ローレル伯爵様!大事件です」


 「次は何があったのだ!私はバナナの件で忙しいのだ」


 「申し訳ありません。しかし、大事件なのです」


 「わかった。話を聞いてやるが何が起こったのだ」


 「屋敷の通路で女の子が倒れています」


 「そんなことなのか・・・すぐに介抱してやれ」



 ローレル伯爵はあきれ顔で答える。



 「しかし・・・」


 「何か他に用事があるのか」


 「はい。介抱しようとしたのですが、あまりに凶暴なので近寄る事ができないのです」


 「何をバカなことを言っているのだ。か弱い女の子が倒れているのだろ?つまらない言い訳はいいからすぐに介抱して、空いている部屋にでも休ませてやれ」


 「しかし・・・」



 兵士は眉をひそめて困った様子でモジモジしている。



 「ローレル伯爵様、女性の私なら暴れずに大人しく言うことを聞いてくれるかもしれません。なので、私が介抱してきます」



 私はこれはチャンスだと思った。重苦しいこの部屋から逃げるには今しかないと判断した。



 「マカロンさんは大事な客人です。そのようなことをさせるわけにはいきません」


 「いえ、私は困っている人がいれば放っておくことは出来ません。だから、私に任せてください」


 「お父様、マカロンさんは正義感の強いお人です。ここはマカロンさんに任せましょう。それに、マカロンさんは正義の心を貫く素晴らしい人物です。止めても聞いてもらえないでしょう」


 「そうだったな。マカロンさんお願いします。兵士が部屋まで案内してくれますので、その女性と一緒に部屋でゆっくりと休んで下さい」


 「わかりました」



 私は逃げるように部屋を出て、兵士と一緒に通路で倒れている女性の元に駆け付けた。すると、そこには信じられない光景が・・・いや、予想通りの光景が広がっていた!






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