表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/42

32 王妃の占い2

 庭園の隅にある東屋の影に隠れ、カーティスはただ会が終わるのを待っていた。

 そのそばに近づいてきたのは、パーティに退屈し、人気のない場所で時間を潰している気楽な令嬢。しかし着ているのは古びたドレスを直したものだ。それでも呼ばれればこうした会に出向き、王家と縁をつなぐ機会を狙っている。家令はいても親がいない会場では、子供たちはいつも以上に本来の姿を見せていた。この令嬢もまたすぐに本性を現すだろう。


 ふと目と目が合い、すり寄って来るかと思えば、そこに人などいないそぶりを見せた。

 隠れていることを悟り、見逃してくれるのか。

「おまえも王子を見に来たのか」

 どんな反応をするのか、見極めてやろうと思った。恐らく下位貴族の令嬢、それも大して裕福でもない、今まで目通りしたこともない家の者だろう。

 しかし、その口から出てきたのは、王家への関心の薄さ。明らかにこのパーティに興味なく、周囲にいる者たちを「たかる」と表現し、この婚約決定を「出来試合」と見抜いていた。

 ケーキを見て村人へのパンを思い、王子に周りに感謝しろという。そして、


「お誕生日、おめでとうございます、殿下。…と言っても、先週でしたっけね、殿下のお誕生日は。日程を弟に合わせたからって、拗ねてちゃだめですよ」


 自分の誕生日を知っていた。逃げていた一番の理由を「拗ねている」と言われて、しっくりきた。

 そうだ、自分は拗ねていたのだ。

 ついでの誕生日など誰も関心がないことに。会場からいなくなっても誕生会が成り立つほどに、周囲から認められていない自分に。自分の価値は第一王子、先に生まれたということ以外何もないことに。


  次の誕生のパーティであなたが逃げる道を選んだなら、

  種は遠く飛ばされ、

  あなたの大地に根付くことはないでしょう


 母の占いの言葉が、今聞いたかのように甦ってきた。

 この子が自分の運命の種だ。そう思った。


 決して裕福ではない子爵家の令嬢。スタンレー領が水害から多くの借金を抱えていることは有名だった。下手すれば好色爺に目を付けられ、借金の肩代わりに無理な婚姻を結ばされるかもしれない。


 ここを出て会場に行けば、自分には婚約者があてがわれてしまう。母が占いで決め、弟のついでに選ばれた婚約者が。しかし、


 そばに根付かせることが、できるだろうか。


 カーティスは覚悟を決め、運命の種の手を引いて、パーティの会場へ向かった。


 ずっとカーティスを探していた侍従達が安堵の表情を見せ、リディアはカーティスに挨拶をして去って行った令嬢を見て、何か確信を持った目で笑っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ