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29 夜会の招待状

 王家主催の夜会が二人の王子の誕生会の一カ月前に開催されることになった。例年なら、誕生会のようなイベントから離れた日程が選ばれるのだが、何か事情があるらしい。


 父であるスタンレー子爵とは別に、エディスに名指しで招待状が送られてきた。王城の侍女であるエディスは夜会には欠席するのが常だが、どうすればいいかカーティスに相談すると、

「王子の婚約者を見繕いたいんだそうだ」

と言われた。

 つまり、ジェレミーの新しい婚約者を決めたいのだろう。

 ふと昔行われた出来試合の誕生会を思い出した。

「どうせ今回ももうお相手は決まってるんですよね? だったら欠席でもいいですよね」

 既に欠席する気満々だったエディスに、カーティスは

「参加必須。拒否権はない」

と告げた。相変わらずの王家の有無を言わせないやり方に思わず顔をしかめ、正直な口が

「めんどくさ」

とつぶやいていた。自分の婚約者探しもやめたし、この手の話からしばらく遠のきたいと思っていたところなのに。

「王家からの招集を面倒がるな」

 そう言いつつも、カーティスも難しい顔をしていた。


「…ドレスを贈ろう。夜会など、久しぶりだろう」

 久しぶりどころか、パーティに客として出席するのはあのお子ちゃまを集めた誕生会以来だ。

 エディスは王城の庭で時間を潰した懐かしいパーティを思い出した。

 あの時は母のドレスを直して参加した。家に戻れば母のドレスがまだ何着か残っているだろう。宝石も全てを売り払ってはいないはず。どうせ子爵家の令嬢など誰も眼中にはないのだから、その他大勢の壁の花一輪、適当に装って、適当に抜け出せばいい。

「お気遣い無用ですよ。一応稼いでますし、家に帰れば母のドレスだって…」

「俺が贈りたいんだ」

 いつになく強情モードに入っているカーティスに、エディスは溜め息をついた。まさかわかっていないはずはないのだが。

「…あのですね。女性にドレスを贈るってことは、それなりに意味があるんですよ? 婚約者であるアマンダ様にこそ贈るべきで、例え慰労であっても私のような侍女には」

「慰労じゃない。…慰労でもいい」

 矛盾した言葉に、どっち? と突っ込みを入れたくなったが、今はどちらでも大差はない。

「…謹んでお断りします。殿下がどういうつもりでも、侍女と男女の関係があると誤解を生みかねない行為は避けるべきです」

「誰にどう思われようと構わない」

 はっきりそう言われて、これ以上反対するとよくない方向に話が行きそうに思え、エディスは警戒して口を閉じた。


 黙りこくったエディスに、カーティスは少し強い口調で言った。

「ドレスは用意する。夜会には参加しろ。家に戻って準備するならそれでもいい。城にいるなら準備できるよう手配する」

「…命令ですか?」

「要望だが、逆らうなら命令する」

 結局逆らえないなら命令でしかないではないか。反抗心は募ったが、どのみち王命だ。

「…わかりました」

 そう答えると、いつもの仕事に戻った。


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