23 アマンダとコリンヌ
エディスに押され、大通りまで出たアマンダは、近くの商店に助けを求めた。
ほどなく自分の護衛が現れ、街の警備団も駆け付けたが、自分をかばったエディスと思われる女性の姿はなく、どこに連れ去られたのかもわからなかった。
そうしているうちにコリンヌが侍女を連れて現れた。
「アマンダ様、ご無事でしたのね。迷子になられたかと…」
コリンヌはずっと探していたようなそぶりで心配そうに声をかけてきたが、すぐにアマンダの護衛がコリンヌを捕らえ、逃げる侍女も警備団が捕らえた。
「な、何をするの、私は」
「事情は侯爵家で伺います」
それを見ていたアマンダは友人であってもかばうことなく、コリンヌが助けを求めても護衛を止めなかった。それよりもいなくなったエディスの方が心配で、動揺を隠せなかった。
「ど、どうしましょう、私の代わりに…、あれはエディスよ。きっとそう。どこかへ連れて行かれたんだわ…」
「お嬢様、この件は騎士団も動いています。すぐに見つかるでしょう」
護衛に言われ、アマンダはうなずき、冷静であろうとしたが、震えを止めることはできなかった。
コリンヌと侍女は侯爵邸へ運ばれ、この事件は侯爵家を通じてすぐに騎士団に伝えられた。
学校でコリンヌは上位貴族と積極的に接触し、仲良くなったアマンダに狙いをつけた。
アマンダはコリンヌが訳ありであることを父から聞いており、不穏な動きがあれば知らせるよう言われていた。
普段なら怪しい者からは距離を置くのだが、先方から近づいてきたこともあり、父や王子の役に立てるかもしれない、その思いがアマンダを大胆にした。
初めは取り繕っていた友情がやがて本物になり、気が付けばコリンヌの情報はほとんど得られないにもかかわらず、共に過ごす時間が増えていった。友達と街で過ごす楽しさに、護衛や侍女の目から逃れる方法だけが上達していき、やがて護衛なしでいることに慣れ、すっかり油断するようになっていた。
旅の話をしていて「是非一緒にプレナム王国に行きましょう」と言われて気軽に「そうね」と返事をしたこともあった。他国になどそう簡単に行けるものではなく、ただの社交辞令くらいにしか思っていなかったアマンダは、より具体的な話を聞かされても真剣には考えておらず、父に報告することもなかった。
アマンダはコリンヌを友達としか思えず、コリンヌを出し抜くことも、自分が利用されようとしていることに気づくこともできなかった。
あの時、どうしてエディスがそばにいたのかはわからないが、助けられたのは確かだ。護衛に守られる身でありながら、愚かにも自分から離れたのだ。ゲームのように楽しんで、かくれんぼのように、上手にできたでしょう、と笑ってまた会えると信じて…。
エディスがいなければ、連れ去られていたのは自分だ。
アマンダは自分の甘さを後悔し、ひたすらエディスの無事を祈った。




