20 優先すべきもの
アマンダが王城に王妃教育に来ていた日、アマンダの侍女に先日の街でのことを話すと、やはり家からの迎えを無視し、侍女も連れずに学校から街へ直行していたようだった。
アマンダが街に行く曜日が特定していたので、エディスは自身の休みと重なった日にアマンダの様子を見てみることにした。
懐かしい学校の制服を取り出し、学校の中に入って二人を探すとすぐに見つかった。隠れながらついて行くと、今日もお忍びらしく、正門ではなく中庭を通って西門から学校を出た。侯爵家の護衛も心得ているようで、正門にも西門にも一人づつ護衛が張り込んでいた。護衛が付いてきているのもわかっているようで、二手に分かれてみたり、男性の入りにくい下着店に入ってみたり、護衛を翻弄して楽しんでいるように見えた。
うまく護衛をまいた二人は、笑いながら街の少し奥まった方に向かっていた。その先に女子学生が好むような店はない。
そうするうちに、コリンヌが突然路地に入り込んだ。
コリンヌがいなくなったのにも気付かず、そのまままっすぐ歩くアマンダの前に、三人の男が現れた。
足を止め、振り返ったアマンダのそばにコリンヌはいない。
「コリンヌ? どこ?」
慌ててコリンヌを探すアマンダは、まだ状況がつかめていない。
これはまずい。
エディスはアマンダの元へ走り寄り、手を引いて大通りを目指して走った。
「え、エディス?」
「走って!」
普段走り慣れていないアマンダは今にも転びそうで、すぐに三人の男が追いつき、アマンダの手を掴もうとした。
エディスは
「通りまで走って! 助けを呼んで!」
と叫ぶと、自分はその場に立ち止まり、三人の行く手を阻んだ。
主人の安全を第一に考える。それが侍女の役割。何度もそう教えられてきた。
カーティスのそばにはいつも側近がいて、カーティス自身も武芸の心得があり、今まで危険を感じるようなことはなかった。自分は武芸など習っていないが、この場で自分の主人の婚約者を守ることにためらいはなかった。
アマンダの元へ走ろうとした男を邪魔したが、そのまま突き飛ばされ、押さえこまれて腕をねじられた。
アマンダはぎりぎり大通りに逃げ込めたようだったが、安心する間もなく、エディスは後ろ手に縛り上げられ、待機していた馬車に無理やり押し込められると、すぐに馬車は動き出した。