14 レポート盗難事件の結末
アマンダとのお茶会は、王子相手が三十分足らずなのに対して、乙女のお茶会は一時間を超えることもあり、早々に立ち去るカーティスが少し気の毒に思えてきたが、本人はそれで満足しているようだった。
その日、アマンダからトップニュースとして聞かされたのは、あのエイミーが自主退学した、という情報だった。
「歴史の特別講義のレポートで盗作が発覚したらしいの。エイミー様が提出した分と内容が全く同じレポートが先生のもとに届いて、事情を聴いたら他の人のレポートを写したことを認めたそうよ。他の授業でも同じようなことをしていたみたい。自主退学で済んだのは先生方の温情だと思うわ」
レポートの盗作と聞いて、もしかして、とエディスは思った。
自分の盗まれたレポート。誰かが拾って先生に届けた…?
いや、名前も書いていないレポートだ。むしろエイミーの犯行を知る者があえてオリジナルを先生に送り付け、盗作の疑いありと密告したと考える方が自然だ。
後から書き直したレポートより出来が良かったと自負しているだけに悔しかったが、不正撲滅のお役に立てたならいいか、と思うことにした。
エイミーと噂になった者たちは、退学までには至らなかったものの、皆厳重注意を受けた。エイミーに鼻を伸ばしていたジェレミーの側近サミュエルは騎士団に配置替えとなり、別の者が側近に着くことになった。
カーティスはおとがめなしだった。王子だからか、学校側にそういう関係ではないと把握されていたか。
エイミーのことは、やはり本気ではなかったのだろうか。
カーティスに直接聞くのが憚られ、デリックに聞くと、
「当然だ」
と強い口調で答えた。睨む目が少し怒っているように見えた。
「殿下はずっとあの女を怪しんで、あえてやりたいようにさせて観察してたんだ」
なるほど。カーティスらしいが、王子自らやることか?、とエディスは疑問に思った。
「おまえのレポートを取り返しに行かされた時は大変だったんだぞ。見つかった時には丸めて捨てられていて、結局誰が盗んだのか決め手がなくてな。絶対叱られると思ったんだが、何故か殿下は喜んでいて…。リンデンベルガー教授の元に届けさせたのは殿下だ」
喜んでいたと聞いて、黒殿下の黒い微笑みが思い浮かんだ。こうなることがわかっていたのだろう。
「ただ、あの人の場合、エイミーにいちゃつかせてたのが婚約破棄目的だったってのも否定できないんだよなぁ…」
それを聞いて、確かにあり得る、と思ったエディスは、事件が解決し、エイミーがいなくなってよかった、と改めて感じた。渾身のレポートには、こんな活用法もあったのだ。
「ご活用いただけて、何より」
後日、エディスはリンデンベルガー教授からはがきを受け取った。
学業への関心を失うことなく、
ささやかでも興味を持ち続ければ
見えてくるものがあります。
レポートはS、もう一方はS+でした。
異国の遺跡の絵葉書は、素敵な成績証明書になった。




