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杖様仏様、お願いします

次に目を覚ました時には、見慣れた天井が目に入った。

それと同時に「ルイ様!!」と言うリリーの声も聞こえた。


リリーの声に色んな人が慌ただしく駆け回る音も聞こえ、暫くすると医者らしき人物がやって来て、軽く問診と触診をして問題がないことを確認し部屋を出て行った。


どうやら私は三日間意識不明だったらしい。


あの空間にいたのは数分のはずだったのに、まるで浦島太郎の様だった。


そして、私の寝ているベッドの横には大切に杖が立て掛けられていた。


「……この杖に認められるって、何すればいいのよ……」


何をすればいいのか分からず、目の前にある杖を突きながらボヤいた。


「そもそも、この杖、本当にそんな力あんの?見た感じ河原に落ちてる木の棒じゃん。しかも、長年使われて来て小汚いし……もしかして、棒は飾りで本当に力があるのは石なんじゃないの~?」


「悔しかったら私を認めてみなさいよ」なんて、杖を罵っていると、風もないのに杖が小刻みに震え出した。


そして、頭の中に声が聞こえた。


『お主!!()が黙っていればペラペラと言いたいこと言いおって!!!そんなんだから儂に認められんのじゃ!!』


その声に連動して、杖が地団駄を踏むように上下に動いていた。

どうやら、頭に直接話をかけてきたのは目の前の杖らしい。


罵られたのが気に入らなかった様で杖様はお怒りのご様子。

しかも、話し方からして結構歳いっているとみえる。


「へぇ~、杖にも自我ってのがあるんだ。話せるなら早く話しかけてきてよ。これなら交渉ができるじゃん」

『……ふん。お主の願いは儂が認めることじゃろ?今のお主じゃ到底無理じゃ。諦めよ』

「そんな硬いこと言わないでよ~、このままじゃ私城ここから追い出されちゃうよ~。私か弱い女の子だよ?」


杖に向かって上目遣いで、目を潤ませながらお願いしてみた。

──が、お怒りモード中の杖には全く無意味だった。


『どの口が言っておる。お主は聖女には程遠いわ。まずはその口の利き方と身なりをどうにかせい。話はそれからじゃ。……まあ、お主に教養を求めても仕方なかろうがな。ほっほっほっほっ!!!』


杖からのディスり返し。

確かに、先に罵ったのは私の方だけど、こうまで言われちゃこっちだって黙っちゃない。


下を向いたままガシッと杖を取ると、力いっぱい握りしめた。


『痛たたたっっっ!!!!』


どうやら杖にも力は伝わるようで痛がり始めたので、私はニヤッと笑みを浮かべながら杖に向き合った。


「ただの棒きれの癖に言いたいこと言ってくれちゃって……年寄りは大事にしろって良く言われたけど所詮喋る棒だし、大事にする必要ないよね?」

『お主!!儂にこの様な扱いをしていいと思っておるのか!?』

「は?どうせ認められないんなら、こんな棒私には必要ないし」


ギリッと更に力を込め、冷ややかな目で言い切ると、杖が何となく青ざめているのが分かった。


「あぁ~、今日は風もよく吹いていい感じに乾燥してるし……これなら一瞬で灰になりそうね?」


私が窓の外を見つつ横目で呟くと、何をされるのか察した杖が慌てだした。


『ちょっ!!お主!!よもや儂を火にかけると言うんではなかろな!?儂は歴代聖女を見守ってきた杖ぞ!?』

「それは歴代の話でしょ?今は当代の話してんの。これだから年寄りは……」


溜息を吐きながら「よいしょ」と杖を手に部屋を出ようとする私を更に慌てた杖が止め始めた。


『お主本気か!?』

「私は常に本気ですが?」


何を今更と言わんとばかりに鼻で笑ってやると、遂に杖の方が白旗をあげたようで、ペコペコしながら必死に謝り始めた。


『すまん!!いえ、すみません!!ちょっと悪ふざけが過ぎたみたいじゃ。杖ジョークじゃ!!杖ジョーク!!最近の若者はジョークもわかんのかのぉ~』

「ほぉ?ジョークにしてはおふざけが過ぎてるんじゃなくて?」

『寂しかったんじゃよ~、久々に来た聖女は儂の好み……ゴホッ!!……儂の思っていたのと違ったもんだからの?』


……今、このジジイ好みって言いかけたろ?

必死に取り繕って可愛く言っても無理だぞ?

何?認められるのは爺さんの好みの問題ってか?

それこそ人権の差別でしょ。

ただの棒の癖に選り好みしやがって……


「うん。これは私の手で処分しよう」そう結論付けドアノブに手をかけたが、この杖、中々諦めが悪い。


『ちょーーーと待て!!!お主は何か勘違いしておる!!人にも好みがある様に杖にも好みがあるのじゃ!!今までの聖女が儂の好みで、今回の聖女が好みじゃなかったから、やる気が出なかったとかそう言う事じゃない!!』


必死に弁解をしようとしているのは分かる。

しかし、それはすでに弁解ではなく確証だ。


「すみませんね、こんな見てくれで?なんせ杖に好かれようと思ったことは生まれてからこの方一度もなかったんでね」

『いや、そういう事を言っているんじゃないぞ?ほら、杖だって可愛い子に持ってもらいた──……あっ……』


その瞬間、殺意のこもった目を杖に向けながら、ギリッと杖を握りしめ大きく振りかぶり窓の外目掛けて力一杯投げた。


「こんのーーーーエロジジイ!!!!いっぺん死んでこーーーーい!!!!」

『あぎゃーーーーーーーー!!!!』


悲鳴と共に窓の外へ消えっていった。


私は大きく溜息を吐きながらベッドに寝転がり、今後の事を考えた。

いくらなんでも代々受け継がれる杖を無くしたなんて言えばタダでは済まないと思う。

それこそ、あの王子がここぞとばかりに乗り出して私を城から追いやるかもしれない。


けど、後悔はしていない。

私が今消しとかなければ、あの杖は今後同じ事を繰り返す。

そう。これは人助けなんだ。

やりきった感で満足していると、私の耳元で聞きたくない声が聞こえた。


『──やれやれ、とんだ目にあったわ』

「……………………………なんでいんの?」


ベッドの横には先程投げた杖が、目覚めた時のように立てかけられていた。



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