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第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞

推し得てアゲる名探偵の助手

作者: 黒銘菓

 探偵助手の朝は早い。未だ日はその全貌を明らかにしていない頃には始まる。

 深夜の内に届いた依頼を依頼の場所や逼迫度合で加味して効率的に解決出来る様にリスト化する。

 そしてそれを予めほぼ解決しておく。

 刑事事件ならば警察のデータにアクセス(不正に)。それ以外はSNSや依頼書の情報を基に情報収集、時には明け方に車やバイクを飛ばして実地検分を済ませておく。

 それでも足りない時は部下を動員して(己の財閥の力で)全容を把握する。

 その後、探偵が起きる迄に朝食を用意して階下に降りて来るのを待つ。


 この後、朝食の後、私が助手を務める探偵にして世界最高峰の名探偵、間暮当流(まぐれあたる)その人が私のリスト化した依頼を、快刀乱麻を断つが如く解決する。

 具体的には解った真実を○○が気付く様にしれっと視界の端に見えるようにしておくとか、予め朝食の雑談に二時間ドラマ宜しく伏線とヒントを張り巡らせておいて、探偵がそれに気付いて大胆不敵なショーと共に華麗に真実に辿り着く。


 鷭皇丞(ばんのうたすく)

 私は万能と言えた。

 習った事は理解分析してあっという間に一流へ昇華させて研鑽を続けてきたプロを凌駕出来る。

 思い付いた事柄を実行すればあっという間に世界中に影響を与える大成功。先見の明が有ると持て囃され、『時代の寵児だ』・『未来を現在にする男』・『圧倒的天奪の才』と呼ばれてきた。

 飽き飽きした。

 何事も出来てしまうが故に面白くもなんともない。努力のしようが無い。苦労出来ない。悩み、苦悩し、答えに行きつくという事が無いから何かに対して情熱を持てない。

 だからこそ、あの日見た光景は鮮烈だった。

 友達から貰ったけれど喧嘩をして小さな川に投げ捨てた大事なおもちゃ。

 それを探して欲しいという依頼を『宝の石(道端の石)』一つで引き受けた名探偵に衝撃を受けた。

 「なんであんな場所探してるんだ?」

 探偵は川のヘドロの中を探していた。

 状況を把握した私からすれば、数日前に行われた川の掃除の際にゴミとして回収されているのは目に見えている。

 無意味だ。

 しかし、そこに居たのは子どもの依頼を馬鹿正直に受ける探偵の姿。

 「……あの、もしかしたら!」

 私が声を掛けて一時間後、捨てられたおもちゃは掃除をしたおじさんが回収していた事が発覚。無事、子どもの手に戻った。


 無駄だらけ。要領悪い。足掻くだけの迷探偵。

 だからこそ、私は助手として彼を名探偵へと押し上げる。






 「成程、これが推し活というものか!」

 本日推しに使った金額:1億22万597円。

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