第四話 聖女と登録と決闘と
T-Gの顔が青くなる、ゲームだというのにわかってしまうのはこのゲームが高性能が故か。
扉の前に立っているメアリーさんはとても可愛らしい。
金髪のロングヘアーに、色白の肌。整った顔つき。
ゲームだから、大体美形だが、メアリーさんとそしてT-Gは特にずば抜けていると思う。
T-Gは赤色のショートヘアーに青色の目をしており、カッコいい。
アイドルや、俳優でも通るだろう。
「や、やあメアリー、元気かい?こんなところで何をしているんだ?」
「こんにちは、T-G。元気ですよ。あなたこそここで何をしているのですか?」
「い、いやーね、私の親友のドラ君がこのゲームを始めるというのでね、少し教えてあげようと思って。」
「ほんとですか?私にはあの竜を倒しに行くためにエリア1に向かったように感じましたが。」
「はは、そんなわけないだろう。」
「ではあなたと彼についている、その手のひらの紋章は何ですか?私の【看破】では”沙羅双樹の罪印”と書いてありますが。」
「おっと、彼を喫茶店で待っていたら”沙羅双樹”が飛び立ったと聞いてね、居てもたってもいられなかったのだよ。」
「結局戦ってるじゃないですか!!!」
「「うおっ」」
メアリーさんが急に叫ぶので、俺もT-Gもびっくりしてしまった。
「あら失礼。このおバカさんがバカなことを言ったので。」
「バカって、バカはないだろ…」
「あら、何度もあの竜と戦うなと釘を刺していたのに戦ったのはどこのおバカさんかな?」
「ぐっ」
流石に可哀想になってきたので、止めに入る。
「あの、そこまでにしてあげて下さい。」
「あなたがドラさんですね、申し遅れました、メアリーと申します。お恥ずかしいのですが、【聖女】という二つ名で通っています。」
「あ、どうもこちらこそ申し遅れました。T-Gの友人のドラと申します。」
「ご丁寧にありがとうございます。」
「んで、自己紹介も終わったので話を戻しますが、こいつは俺をあの竜から助けてくれたんすよ。だからそんなに責めないでやってください。」
「そうでしたか、良いご友人を持ちましたね、T-G。ドラさんの誠意に免じてここまでにしましょう。」
「ありがとードラ!マジで助かった!」
「いいよ、んでこっからどうする?」
「やっぱりレベル上げだろうな。」
「今お前レベルなに?」
「50。」
「やっば。前線組ってすごいんだな。」
「メアリーも同じぐらいあるぜ。」
「はい、45ぐらいですね。」
「凄いな。どこか良い狩場ってあるの?」
「あー、エリア2にいい狩場があるぜ。」
「ええ、”兵どもの夢のあと”ですね。基本的に出て来る敵はアンデットなんですが、対策をすれば簡単に倒せますし経験値も多いですよ。」
「まずはエリア2に向かった方がいいのか。」
「そうだな、だがその前に冒険者ギルドに行こう。」
「冒険者ギルドなんてあるのか?」
「ええ、ありますよ。基本的な仕組みはよくあるのと一緒です。」
「へー、クエストをこなしてランクを上げる感じか。」
「そうですね、その他にも馬を借りれたりと登録しておいて損はありませんよ。」
「なるほど、よし!じゃあ冒険者ギルドへ行こう、いろいろ教えてくれよ?」
「「ああ(ええ)、もちろん!」」
という事で冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドは盾の絵柄が描かれた看板が掛けてあり、外壁は石レンガだった。
中に入ると、少しざわついた。
正面にはカウンターがあり、右側には酒場があり少しガラの悪いおっさんたちやプレイヤー達が酒を飲んでいる。
「まじかよ、【マジェスティ】に【聖女】だぜ…」
「こんな最初の町に一体何の用で…?てかあの初心者装備を付けている奴誰だ?」
「さあな、てか【勇者】と【グラディエイター】いないじゃん。」
「ほんとだ、じゃああの初心者の付き添いか?」
「みたいだな。ここに”聖女護衛妖精騎士団”の野郎どもがいなくて助かったぜ。」
「ほんとになw」
と言った世間話が耳に入れながらカウンターへと向かう。」
「ようこそ!冒険者ギルドへ、どのような御用でしょうか?」
「ギルドに登録したいのですが。」
「登録ですね!こちらにお名前と職業をお書きください。」
そう言って紙を取り出し、メニューが開かれる。
メニューに必要な項目を書き、閉じると受付嬢が、
「名前はドラ様、職業は大剣使いですね、承諾しました。少々お待ちください。」
と言い、奥へと下がった。
「これでいいのか?」
「ああ、後は”あれ”だけだな…」
「そうですね、”あれ”が起きなかったらいいのですが…」
ん?あれとはなんだ?
「あれって?」
「ああ、それはな、」
とT-Gが教えてくれようとしたその時、ギルドの扉が音を立てて開かれる。
扉の先にいたのは騎士の格好をしたプレイヤーだった。
「ここに、ドラというプレイヤーはいるか!」
と言われたので
「俺がドラですけど。」
と手を挙げながら言うと、
「貴様!聖女様から離れろ!」
と近づいてき、俺を押し飛ばした。
「ぐっ」
後ろに合ったカウンターにぶつかる。
そのまま胸倉を掴んでき、そのまま、
「貴様、なぜ聖女様と行動を共にしている!」
「えぇ、何故って縁があったからですけど…」
「ふざけるな!」
「理不尽過ぎるだろ…」
呆然としていたT-Gがはっとして止めにかかってきてくれた。
「おい、止めろ!俺の友人になにをするこのストーカー野郎!」
「放せ!このコバンザメが!聖女様に許可なく近づいた罰をこの初心者にくらわせてやるのだ!」
「あぁ?何だとこのくそ野郎が!いい加減親友から手を放せ!」
「貴様の親友だと?ならなおさらだ!この世界のルールってやつをコイツに教えてやる!」
「貴様ぁ!」
「やめなさい!」
喧嘩になりかけていたその時、メアリーさんの鶴の一声が入る。
「あなた達、喧嘩はよくありませんよ。」
「ですが、聖女様!この者に制裁を加えなくては…」
「いいかげんになさい!あなた達聖女護衛妖精騎士団とかなんだか知りませんが、迷惑なのです!やめて下さい!」
「なん…ですと…」
メアリーさんが本音をぶつけると、騎士の格好をした男は俺から手を放し、膝から崩れ落ちる。
「はぁ、お前らほんとどこでも出るよな、この前はエリア3のダンジョンであったしよぉ。」
「こいつ一体何なんだ?」
俺は疑問をぶつける。
「ああ、こいつは聖女護衛妖精騎士団って言うクランメンバーのエリックってやつだ。」
「なにそれ?」
「聖女様を守るとか何とかでストーカーしてくる迷惑集団だ。」
「えぇ、なにそれBAN案件じゃん。」
「そうなんだが、こいつらなんだかんだ有能でな、クランリーダーは”妖精の花園”つって妖精と契約ができるマップを見つけたんだ。」
「へー」
「他にも妖精系ジョブの発見や、謎解き系のダンジョンで活躍を見せている立派な攻略班だ。」
「そうなのか…有能だけどヤバい奴らなんだな。」
「そうなんだよなー」
そんな話をしていると、エリックが悔しそうな顔をした後、納得したような表情を見せ、こう言ってきた。
「わかりましたよ!聖女様、言わされているのですよね!私にはわかります!」
「「「は?」」」
なに言ってんだコイツ。
「おい!貴様、決闘だ!決闘をしろ!」
はぁ?
「俺が受けるメリットあるか?」
「妖精騎士団の俺に勝てたって言う拍が付くぞ。」
と言ってきたが、T-Gが
「お前末端メンバーだろ?そんなのに勝っても意味ないだろ。おい、ドラさっさとカード受けとって早くむかうぞ。」
と、言い返してくれたが、俺はその言葉を無視し、
「その喧嘩買ったぜ!」
「「えぇ!?」」
「ふん、逃げるかと思ったが、少しは度胸があるじゃないか。では、闘技場に向かおうではないか。」
と、エリックが言ったのでついていこうとしたが、T-Gとメアリーさんが
「はぁ?何言ってんだお前?やめとけ。」
「そうですよ、こんなゴミと戦っても意味ないですよ。」
と、心配してくれたので、俺は受けた理由を正直に話す。
「売られた喧嘩は買わないともったいないし、対人戦の練習もしたいしな。」
と言うとT-Gは
「はぁ、しゃーね―な。戦って来い!」
と言ってくれたので、
「行ってくる。」
と返し、再びエリックについてゆく。
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景気よく送り出したが、大丈夫かなーアイツ。と心配しているとメアリーが
「え?彼は初心者ですよ?あのようなおごり高ぶったゴミとは言え、中堅レベルの三次職ですよ?勝てるのですか?」
とごもっともな心配をしていたので、俺は正直に心内を話す。
「さあな。」
「さあなって、それでもあなた彼の親友ですか!彼の事心配ではないのですか!」
「そりゃぁ心配さ。」
「なら!」
「だが、ああなったアイツは梃子でも動かねぇ。今の俺たちにできることはただアイツが勝つことを信じるだけさ。」
こう返すと、メアリーは葛藤するようなしぐさを見せ、その後納得したような顔を見せこう言ってきた。、
「わかりました、あなたがそういうのならそうなんでしょう。」
「お、珍しく物分かりがいいじゃねえか。」
「彼の親友のアナタが言うのです、出会ったばっかの私は口を出せません。」
「わかってんじゃねぇか。んじゃ闘技場に行くぞ。」
俺は始めて一時間半の親友の勝利を願い、闘技場へと向かう。
ドウモ=ドクシャサン
今回解説するのは”二つ名”についてです。
これは有名プレイヤーを分かりやすくするためにとあるプレイヤーが始めた行動です。
T-Gはマジェスティ、メアリーは聖女など、攻略勢には大体つけられています。
ドラ君にもつけられるかもしれませんね…
後、次の投稿は土曜日の12時です。