petal 6
※作品はアルファポリス様、ツギクル様、note様にも掲載しています
そんな、爛れた青春に浸っていたら、妊娠したみたい、ぐすっ!
目の前に並べられた赤紫の線が浮き上がった十六本の妊娠判定薬に目を落とす、十六本か、八の倍、ヤバイ…… 笑えない。
落ち込んでいるとアキラが言ってくる。
「なあヒトミぃ、もういいじゃんか」
「そうだよね、もう尿だって枯れ切った感じだからね……」
「いや、そうじゃなくてさ、なあ、結婚しないか? ヒトミは嫌か?」
ビックリだ! プロポーズだよ?
まだ卒業まで三か月位ある高校生同士なのに……
生活力だって無いし、お互いの家族が何て言うか……
そう考えれば今ここで軽はずみに返事をしちゃダメだ、だから努めて冷静に答えた。
「嫌じゃないよ、勿論許されればそれで良いけど…… 許されなかったらどうするの? 駆け落ちとか? それとも堕胎出来ないタイミングまで隠し通してシレっと産んじゃう?」
悪そうな顔をして同意を求めてみたが、意外にもアキラは首を振って否定し、言葉を続けた。
「いいや、ちゃんとヒトミの両親にもウチの父母にも話して許して貰おう! 別にやましい訳じゃないんだからさ!」
アキラだ、いつもクールなくせに変な所で熱くなるんだから、でも、アキラが熱くなる時って大事な場面って決まってるんだよね。
交際を申し込む前にキスして来た時みたいな……
「分かったよ、そうしよっかアキラ!」
それからはアキラのお父さんとお母さん、ウチの両親の順に、二人揃って懐妊の報告と結婚したい事を伝えたのである。
結果は意外にも、全員大喜び、パパとママなんか感涙を流しつつのスタンディングオーベーション、アキラ両親も嬉しそうにしてお祝いのお寿司をウーバーした位であった。
クソガ、ヒカルは興奮気味にお寿司を掴んで踊り出しながら、
「奇跡だー! ミラクルっ! ガチ、ミラクルゥッ!」
とか何とか叫んでいたし、両家の顔合わせ会席の時なんか、両親陣四人は揃って、
「運命の相手だよね」
「うん、運命だね」
「まさかこんな奇跡があるなんて…… 運命だわ」
「神様っているんだな…… 良かった良かった、運命の出会いに乾杯っ! 」
「「「乾杯っ! 」」」
と、大喜びで酔い潰れるまで飲んでいた。
良かった、まさかここまで歓迎され捲るとは思わなかったけど、兎に角良かった。
高校卒業から程なくして極々近しい人たちだけを集めての披露宴、お腹も目立ち始めて来ていたし、コロナ禍でもあるしなるべく簡素に行われた。
なんだかトモエとモブ男が大泣きしてくれていたのと、委員長がアキラのお父さんにサインを求めて何枚も色紙を渡していた事が強烈な印象として残った宴だったよ。
モブ男と委員長、それに共に世間の偏見と闘い続けて来た、トモエ、友江剛君の三人は、数少ない『運命の人』風味を醸し出してくれた存在だから呼んだんだけど、失敗だったのかな?
いやいやいや、彼等がいなかったらそもそもアキラを意識すらしていなかったかもしれないのである、十分な功労者であろうから、頬一杯にご馳走を詰め込む下品さにも目を瞑らなければいけない、いやもっと積極的に言おう、それが限界なのか、死ぬ気で詰めろ! そんな言葉を送るべきであろう。
数か月後、アキラと共に人の親になった。
当然だが立ち合い出産。
アキラと繋いだ手の温もりに勇気を振り絞られ、長男を抱いた感動は忘れられない、アキラも感動の涙をドバドバ流し捲っていた。
それから一年。
私たちに二人目の命が授けられたのである。
これで、某政治家が言う所の『生産性』云々の言い掛かりもクリアできた、まあ、そんなのどうでも良かったけどさ!
夫婦仲も概ね良好。
ウチに住んでいるアキラもパパやママとうまくやってくれていた。
お爺ちゃんとなった私のパパのお仕事、男装カフェでの人気も上々らしいが、もう暫くしたら産休に入って貰わなければならないだろう、残念だ。
今日はナイト・ナイトといった企画パーティらしく、装備する鎧や剣の確認にも余念は無いようだ、良かった。
私はママと子供と一緒にお留守番。
私の姓を名乗ってくれた、人見アキラが無事帰って来てくれるのを美味しい料理と、安らぎの場所である自宅を奇麗に整えて待つだけである。
私、人見源三郎はつくづく思う、運命の人に拘る事なく、アキラと結婚して本当に良かった、と……
子供の頃に自分の性に疑問を抱き、女の子の様に振舞い続けた日々、同時に遠く離れた町で生来の女性としての生き方に抗って男子の様に過ごしてきたアキラ……
どんな男性より男らしいアキラと、どんな女性よりも女性らしくありたいと願う僕、惹かれ合わない訳は無かったよね。
あれれ?
若しかして、二人を結び付けてくれたあの頃の『食パンダッシュ』は運命の人を引き寄せてくれていたのだろうか? 判らないけど……
今優しさに包まれて幸せの絶頂にいる僕には全く関係無い話だと思えた。
最近アキラは得意のIT知識を生かして、LGBT専用ソフト、『コンプレックス・マッチング』という名のアプリの開発に、日中の殆どを費やしている。
僕たちみたいな性的マイノリティが運命の相手を探し出す為の一助になれば、その思いだけで採算度外視での配布を目指している。
安定期に入る迄は気を付けて欲しいんだけど…… 仕方ないのかな?
ところで、僕が胸に抱いた乳飲み子と、数か月後に生まれる新たな命に、パパ、ママ、どちらをどう呼ばせるかは、まだ決まってはいないのである。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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