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petal 4

※作品はアルファポリス様、ツギクル様、note様にも掲載しています

 ふふん、次の手順は分かっているんだからね! 犬だね、犬! 言わせてあげるわよ弟君! こ、こいつ俺とアキラにしか懐かない筈なのに! アンタ一体ぃ! だよね? とくとみよ!


「ワンチャン可愛いねぇ! よしよし♪ んふふんふふふ、か、可愛いぃぃっ! っ! ガバジジィィィイタタタタァ!」


「おい大丈夫かよ? 手、血だらけだぞ…… 慣れてない犬の頭から行っちゃダメに決まってんじゃん…… 顎から行けよ顎から……」


 くっ! そうだったのか…… む、無念…… パパが以前、


「おい、犬飼わないかぁ?」


と言って来た時に頷いていさえすればこんな痛みも感じなかったモノを……

 しかし、多少、いいや多大な痛みが、いやいや重篤な後遺症が残りそうな痛みが何だと言うのであろう。

 運命の人と出会い恋を成就する痛みはこんな物では無い! 筈だっ!


 にしてもそろそろ離して欲しい、骨まで達するダメージなんだけど、この子ちゃんと餌とかあげてるんだよね?

 肉ガジガジやってる気がするし、い、いやあぁ~! た、助けて……


「なんだ、やっぱりアキラの友達かぁ、おい、ボス離していいよ! しょうがない、手当てしてやるから付いて来いよ! ほら、早くしろよ!」


「うん、ありがと」


 クソガキめが! 噛む前に止めろよ! どこの後進国なんだここはっ!

 そんな言葉を無理やりに飲み込んで辛抱し、ボスと名付けられたらしい犬っころを軽く蹴とばしてガキの後について五十嵐邸の玄関を潜る。


 なるほど…… これは、まあ、凄いじゃないの。


 外見でも豪邸、金持ちらしかったがそんなもんじゃないな……

 大理石の床は随分先まで敷き詰められているし、天井から提げられたシャンデリアはまだ午前中だと言うのに、なんと言うか、ああ、眩しいっ! 眩い輝きを放ち捲っていた。


 これは、違う。

 運命の人がこんな所に住んでていい訳無い、そう確信出来てしまった、こうなったら可及的速やかに骨が見えてしまっている片手の治療を施して貰いさっさとお暇(おいとま)するとしよう。


 そう思った時、広々とした玄関から続くニッチの脇から、寝装(しんそう)に身を包んだ中年の女性が、クソガキ、いいやアキラの弟に声を掛けたのである。


「ヒカル? お客様なの?」


「ん? ああ、母さん! アキラの友達なんだってさ! ボスに噛まれちゃった、てか喰われちゃったから手当てしてやろうと思ってさ!」


 このバカガキ、ヒカルと言うらしい、んまあ、アキラの弟だしね、順当なネーミングだろう、そう納得した時、アキラのお母さんが咳き込んだのである!


 まさか、コヴィット? そう思う前に安心の言葉が……


「ごめんなさいね、アキラのお友達が訪ねてくれたと言うのに…… あたしがちゃんとしていればもっと、歓迎してあげられたのだけど…… 実はこの町の病院…… ケホケッホ! ああ、ごめんなさい、どこまでお話ししたかしら?」


 ああ、そういう……

 

 お金は有りそうだが、アキラの母親はこの町の病院でなくては治療不可能な病に侵されているとか何とか、そ~言う! そうかそうか、そりゃ運命の人のパターン、所謂(いわゆる)ヒネリ物、そっち関連だったのかぁ!

 良いじゃないのよぉ! ならば良し! 受け入れてあげるわぁ!


「お母様はお身体がお悪いんですね? どうか、構わずにお休みくださいませぇ!」


 どう? 変則パターンにも対応できるヒトミの即応力は?

 どう、どう! なんて返すのかしらぁ?


「いや、身体は健康なのよ、只、昨日から準夜勤、深夜勤、日勤が連続しちゃってね、ちょっと寝ぼけてるのよ、ああ、アタシ、この町の公立病院の院長なのよ、ゴメンね、満足に、出迎えてあげられなくてぇ」


 へ? 院長センセ? ん、んん? なんかメッチャリア充な環境じゃん?

 これは運命の人では無いよね? あーあ、ハズレか~!


 んじゃ、ケガの治療(割と重症)だけして貰ってさっさと退散するしかないねぇ~、そう思い取り敢えず返事をする。


「いえいえ、お疲れでしょう? どうぞ、お休みくださいませぇ! 手当てして貰ったら直ぐに帰りますからぁ、んで二度と来ないと思いますのでぇ~寝ててくださいねぇ!」


「あら、嬉しいわ、にしてもアナタみたいな若い人にしては随分気配りが出来るのね? 驚いたわ…… ぜひ、ウチのアキラと仲良くして欲しいわぁ!」


「てへへ、はーい! 了解でーすぅ!」


 お母さんは部屋に戻せたし、治療はお手伝いさんらしき娘さんによって丁重に施された、ああ、付属の看護学生的な人なのかな、流石の手際の筈だ、この間にクソガキは飽きてしまったらしく庭で羽虫とかを追い掛け続けているようだ、馬鹿だな、お前の未来は生物部だろうな、残念だね。


 とは言え、まあ、馬鹿はお互い様だよね……

 痛い思いをした結果、得られたのは『運命の人』じゃなかった、その事実だけを持って家へと帰るこの身も他人から見れば随分馬鹿に見えるんだろうし。


 まあ、帰ろう、今日は随分と疲れた感じだ…… 手は重症だし……


「んじゃ、お邪魔しましたぁ~!」


「ただいま、あれ! ヒトミ? な、何で家に!」

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。



Copyright(C)2019-KEY-STU

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