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petal 2

※作品はアルファポリス様、ツギクル様、note様にも掲載しています

 担任の後ろに付いて教室に入って来たのは予想通り朝のなんちゃって運命の人であった。

 担任が黒板に名前を書いている。


 ほう、五十嵐(イガラシ)アキラというのか、そうかそうか。


 改めて姿を確認する。

 背が高いな、百八十弱はあるか? 二十センチ以上大きかったのか、気付かなかったよ。

 細身だけど骨格は確りしている感じだな、短い髪はブリーチだろうか、金色に染色されていて切れ長で少したれ気味のクールな目に良く似合っていた。

 

 担任に挨拶を促された転校生、五十嵐アキラは短く言う。


「五十嵐アキラ、よろしく」


 むむっ、このぶっきらぼうさは…… あれれ? パターンに乗って来てるじゃん! ()しかして、運命の人、なのかな?


「それじゃ、あそこの空いている席についてね、隣の人、教科書が来るまで見せてあげてね」


 隣の人、了解です、マイティーチャー。


 若しかしたら運命の人かもしれない五十嵐アキラは近づいて来て着席する前に言った。


「あれ、さっきの? はは、なんか縁があるね、よろしく」


 うん? なんか爽やかだぞ、普通、運命の人はもっとギスギスしている物じゃないのか…… やっぱり違ったのか?


「うん、よろしくね」


「この子はヒトミだよ、んでウチがトモエ、よろしくね、えっと五十嵐――――」


「アキラ、苗字まだ慣れてないんだ、アキラで良いよ」


 おっ、何やら影がある感じの発言なんじゃないのぉ? やっぱり運命の人だったのかな?

 むっ、机を合わせて来たな、そっか、教科書問題が未解決とか言っていたよね、んにしても屈託無さ過ぎじゃないかな?


「教科書見せてね、ヒトミ」


「あ、うん、勿論」


 何で爽やかにするんだろうね? 『イラネ、寝るから』とか言えない病の人なんだろうか?

 その後も爽やかに授業を受け続け、こりゃ違うな、そう思った時目に見える変化が訪れた。


「アキラ、お昼は? お弁当無いんだったら学食か購買案内しよっか?」


トモエが親切に言ったがアキラは首を振って答えた。


「あー大丈夫、あんまりお腹空いてないからさ、ありがとう」


 ふむ、そういう体質なのかな? ダイエットとかかもね、今時の若い子はスキンケアとかボディメイクに余念が無いからねぇ。


 そう思いママ謹製のキャラ弁を頬張っていたら特大の燃料が投下される、(もたら)したのはクラスの中で一番モブ特性が強い男子、鈴木浩君である。


「おーい、転校生の奴、昼めし食わないで水道水がぶ飲みしてたぜぇ! アイツ貧乏なんじゃないかぁ!」


 来たっ! 特大の奴だコレ! 貧しいのか? 貧乏なのだろうか?

 因みにウチはパパの努力の結果、結構裕福である、パターンに乗った、確実に……

 格差を乗り越えて、的な?


 ありがとうモブ鈴木、お前の最大の見せ場は今終わった、後はモブらしく世間の片隅をカサカサ歩み続けてくれていいからね!

 今後二度と視界に入らなくても良いんだよ? 鈴木……なんだっけ?

 既に忘れちゃったぁ、テヘペロ♪


 女子たちの非難の目も男子たちのハッキリとした制止の声も気にせずに鈴木モブ男はへらへらしていた、最低な奴だな、報せは最高だが。


 五限のちょっと前に戻って来たアキラに対して、分かり易く黙り込むクラスメイト達、これは……    

 運命の人風味が一気に高まって来るのであった。

 

 周囲の視線が変わってもアキラ自身の態度は一切の変化も無く、六限の授業中にそれは起きたのである。

 朝、出掛けにママが言っていた気象現象、降雨、雨が降り出したのであった。

 内心でガッツポ─ズを取りながら思ったものである。


――――来たよ来た来た、雨キタコレッ! ってことは帰り道、寄るしかないね? あの場所で! 目撃するべきでしょー!


 しとしと所か、結構ザンザン降りの雨の中、例の場所に向かう。

 案の定、『放課後、校内を案内しよっかぁ?』という言葉に『あ、ごめん、今日はちょっと…… 明日頼むね』と答えてアキラは帰って行ってしまった。


 それから十五分、そろそろ良いだろう、そう判断して例の場所、登校時にアキラと会った公園に辿り着いてみると、今まさに目撃すべき光景が展開されていたのであった。


「ちゃんと食べたか、お弁当、美味しかったかい? でも雨が降って来るとはな…… 可哀そうにこんなに震えて…… なあ、お前、家に来るかい? いいだろ? さあ、行こう」


 アキラは自分の前でずぶ濡れになった段ボールの中から、子犬を抱き上げると細っそりとした自分の胸に包み、傘もささずに走り去って行くのであった。


 感動に震える体を止める事が出来なかった……

 完璧だ、完璧に運命の人であった……


 途中、何やら怪しいパターン外の素振も散見されたが、これが運命の人でない訳が無い! 今であればそう確信できた……

 全身を過去に経験した事の無い感動が走り続けていた…… 明日から普通に登校できる! その気持ちも感動を一際盛り上げていた。


 いつに無く笑顔満面で帰宅をすると、ハテナ顔を浮かべたママに対して、明日からはトーストはいらないと伝え、普通に朝ご飯を食べる事も併せて告げたのであった。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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