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petal 1(挿絵あり)

挿絵(By みてみん)


※作品はアルファポリス様、ツギクル様、note様にも掲載しています

 朝は苦手な方じゃない、と言うかむしろ強い。

 大体六時にはパッチリ目が覚めてしまう。

 とっくに登校の準備は整い、玄関で時計を見つめているとママが話し掛けて来た。


「ねえ今日午後から雨だそうよ、傘持った?」


 通学カバンからピンクの折り畳み傘を取り出して見せながら答える。


「バッチリだよ、ありがとねママ、さて、あと一分か……」


 呆れた声で言うママ。


「それまだ続ける気なのね…… 古くない?」


 同じ質問をされた、もう何度目だろう、仕方ないもう一回説明してあげよう。


「あのねママ…… これは運命の出会いを引き寄せる為のジンクス、『食パンダッシュ』なんだよ? 素敵な相手に巡り合うまで、ううん曲がり角で激突するまで続けるに決まってるじゃん、分かったぁ?」


「はあ、好きにしなさい、でも遅刻はダメよ、遅刻は」


 高校入学から一日も欠かしたことが無い毎朝の儀式である。

 無論、遅刻なんてドジを踏むつもりは毛頭ないので、言葉では無く力強いサムズアップで返す事としよう。


 さて、そろそろ時間だ、下駄箱の上に準備して置いた食パンを掴む。

 咥える直前に大きく叫ぶ、開始の合図になっているセリフが行ってきますの代わりだ。


「いっけなーい! 遅刻遅刻ぅ!」


 勢いよく玄関を飛び出して猛ダッシュ、一年以上走り続けた登校コースは路面の僅かな特徴も熟知済み、心なしかタイム的にも良い感じに上がって来ている。

 順調に学校へ近づいて行くが力を弱めるなんてダメだ、運命の出会いは本気の走りの先にある、きっとそうなのだから。


 とは言え、今朝もいつもと同じか……

 もう既に行程の半分を過ぎたと言うのに何も起きない……

 曲がり角も後一つを残すのみだった。


 まあ、()()はしないで済みそうだ、()()は……

 そう落胆した瞬間、不意に脇の公園の出口から背の高い人影が――――


 ドスンっ!


――――来た! 唐突に来た! 運命の相手だ! よし慎重に…… ちゃんと、尻もちをついて相手に悪態をつくんだ! って、え?


 尻もちをついて食パンを落とす場面の筈なのだが何故かしっかりと抱き留められてしまっていた、お陰で練習して来た秘技『両目バッテン』も使えない…… 運命の相手じゃ、無い、のか?

 いやいやいや、運命の相手だって今まで経験した事なんてないシチュエ─ションだろう、多少のミスはあるか? あるよ、だって運命の相手なんだから。

 軽く繰り返される、そこら辺の出会いとは違うのだ、未経験者が圧倒的多数に違いない、だって運命の相手なんだから。


 仕方が無い、多少想定とは違うがここは妥協する事としてストーリーを進めてあげよう。

 今度こそちゃんと答えなさいよ、だって運命の相手なんだから。


「ちょ、ちょっとぉ! 気を付けなさいよぉ!」


「あ、ああ、ごめん、気を付けるよ、ケガは…… 大丈夫そうだね、驚かせちゃって本当にゴメンね、それじゃ」


 は? なに言ってんのこいつ? 謝っちゃたらダメじゃん! 素直かよ!

 そこは、『何言ってんだ! ぶつかって来たのはそっちだろ!』的な返しじゃないの? 何? 素人さんなの? どんなマンガ読んで来たのよ?

 てか、どんどん歩いて行っちゃったし……


 はっ! そうか! これは運命の相手じゃなかったって事だね、きっと!

 曲がり角じゃなかったし…… 公園から出て来たし……

 よしっ! なら仕方が無い、ノーカンだねこりゃぁ。


 キーンコーンカーンコーン


「よ、予鈴! やっばっ! ガチで遅刻するぅ~!」




 間に合わなかった、教室に到着した時にはすっかり本鈴が鳴り終わってしまっていた。

 だと言うのに担任はまだ来ていないようだ、なぜ?

 息を整えながら席に着くと前に座っていたトモエが振り向いて話し掛けて来た。


「ヒトミが遅刻なんて珍しいじゃん! でもついてたよね、今日転校生が来るんだって、それで先生遅れてるみたいだよ」


「へーそうなんだ」


 なるほど、そりゃ、確かについてたな、朝は運命の人ニアミス気味だったが、ってかこの流れって、まさか……

 (ちな)みに隣は空席だ、いやいやいや、ノーカンだから、ノーカン、の筈だけど……

 廊下から担任の声がした、珍しく不機嫌そうな声だ。


「転校初日から遅刻とか、今後は許しませんからね!」


 トモエが再び振り返って言う。


「あらら、なんかアウトローっぽい感じの転校生じゃない! どんな人かな、楽しみだねぇ?」


 相変わらず軽いなトモエは……


 トモエとは小学校からの親友で中学では同じ部活に精を出してきた盟友でもある。

 小学校の時テレビで見たラクロスをやろうと誓い合った仲だ。

 残念ながら入学した中学にラクロス部が無かったので、一番近そうな部活に入るしかなかったが。

 三年間の青春を捧げたのは生物部、放課後は虫取り網を手に一緒に汗を流し笑いあったモノだ、懐かしい。


 ニマニマこちらを見ているトモエに言った。


「ほら、先生入って来たよ、前向きなよ前!」


「はいはい」

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)


初恋愛小説に挑戦してみました‼

この作品は全6話構成のお話しになりますのでお付き合いいただけましたら嬉しく思います。


拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。



Copyright(C)2019-KEY-STU

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