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・俺氏の転生()


 人生のターニングポイントってのは、いつも突然にやって来る。




 こちらとらなんの準備も気構えもしてないのにも関わらず、突然やってきては、選択を迫って来る。




 マルチ商法の勧誘みたいなものだ。




 対応を間違えた日には目も当てられないような負債を抱え込まされる羽目になり。それだけならまだしも、選択の余地すらもなく、理不尽極まりない展開まで用意されている上に、人生にはクーリングオフもないという不親切ぶりである。




 トラック然り、転生然り、アルビノ幼女然り、今なら断言できるね。神様ってやつは最高のクソ野郎だ。










ーーblackout










 けたたましいエンジン音と甲高いブレーキ音が、これは現実だと主張する中、俺は意外にも冷静であった。




 生まれ落ちて三十数年、人生に見切りを付けるには十分な時間を生きてきた。


 自慢じゃないが、俺は常に後ろを向いて人生を歩んできたのだ。


 俺の人生、それすなわち後悔の繰り返しである。


 今この時もそう、目の前に大型トラックが、俺を轢き殺さんと差し迫ってきているにもかかわらず、俺は信号機をちゃんと確認していただろうか?


 俺のことだから、無意識のうちに赤信号を渡っていたんじゃないか? 


 こんなことなら信号ぐらいちゃんと確認しておくできだったな……。


 走馬灯と呼ばれるものだろうか?


 俺の今までの後悔してきた場面が、ダイジェストの如く頭を過ぎる。




「……ああ、あの時こうしていれば」




 グシャリっと音をたて、俺はきっと見事なミンチ肉になったことだろう。














 ーーそこは、白一色に塗りつぶされた空間であった。




 その白さたるやア○エールが黄ばんで見える程に白く、俺の黒く澱んだ心すらも白く中和してくれるのではないかと期待をせざるを得ないほど……




 あれ? おかしいな、俺は立派なミンチにジョブチェンジしたはずだったんだが、なんで生きてるんだ?




「いや、君はもう死んでるよ。嘘だと思うなら写真ぐらいなら、用意できるけど?」




 なんかいた! 見た目は中学生ぐらいの少年がいた! しかも、ナチュラルに心の声を読んできた!  


 誰だよお前、あと写真はいらないからな、俺にスプラッタ映像を楽しむ趣味は無い。




「それは、残念だ。近年稀にみる立派なミンチ肉っだったのに」




 そんなんはどおでもいいんだ! お前は一体誰なんだよ。




「ノリ悪いな~女の子にモテないだろ? あっそういや、童貞だったよね、その上無職とか、プーックスクスクス」




 な、なんだよお前、やめてくれよ。俺の人生でもトップクラスの後悔をえぐらないでくれ。




「うん、なんかごめん……。じゃあ気を取り直して、僕の正体から教えてあげようか。僕って実は神様なんだよね」




 うん、なんかそんな気がしてた。だってナチュラルに心の声を読んできたし。で、もしかしてこれって例のアレか? 


 神様の手違いがどうちゃらこうちゃらで、お詫びに異世界に転生させてやるから許してくれっていうアレですか神様!? 謹んでお許しいたしますよ神様!?




「まあ、落ち着きなよ。残念ながら少し違うんだよね。それに、そのパターンの場合轢かれそうな子供を助けてとかのほうがテンプレってやつじゃないかな? そもそも僕、手違いなんて起こしてないし。ーーだから僕があげるのはチャンスだけ、もう一度人生をやり直せるチャンスをね」




 俺としても、テンプレが羨ましいよ、幼女のためなら喜んで命を捧げられるのに……。ところでチャンスとは?




「そう、チャンスだ。実は僕は今、大変困ってるんだよね。とある世界で十六年後に魔王が現れることになってて、勇者が魔王を倒すことになってるんだけど、まず勝てない。ぶっちゃけ絶対に勝てない、そこで君だ」




 つまり、私めに勇者を助け、魔王を倒す任につけとおしゃられるのですね。そうなんですよね!?




「そうそう、そんな感じ。君の仕事は滅びる定めにある世界の運命を変えること。それには、第一条件として勇者を無事に魔王戦にまで辿り着かせること、何しろ魔王は勇者にしか倒すことができないからね。そして、当然ながら魔王を倒すこと、以上で君の仕事は完了だ。理解も早いし君になら安心して仕事を任せられそうに思うんだけど、どうする?」




 勿論ですとも! その手の妄想なら数千回はしてきましたとも、イメージトレーニングは完璧でございます。して、神様……この私めが勇者を助け、見事魔王を打倒した暁には…………。




「勿論、君の好きなように生きればいい、君が何をしようと、僕は一切関与しないと誓うよ」




 ヒャッハー!! 本当ですね? 今更、撤回だなんてありませんよね!? 異世界に幼女奴隷ハーレム帝国とか建国しちゃいますけど、ようござんすね!? ようござんすね!?




「う、うん、自分に素直なのはいいことだと思うよ」




 あっ、ところで肝心なことを聞きそびれていました。勿論チート能力的なものはくださるんですよね?




「勿論さ、ないと糞ほどの役にもたたないだろうしね!」




 もしかして、俺のことお嫌いですか?




「そんなことはないよ、僕が言うのもなんだけど、ちょっと鬱陶しいなっと思っただけだよ」




 そ、そうですか。して、肝心なチートとは?




「大丈夫、君にピッタリな素敵な能力さ! 何しろ君が自分で考えた技の数々を使えるんだからねッ☆」




 ちょ、おま、それはいわゆる黒歴史ってやつじゃないですかぁー!




「ハハハ、次は後悔のない人生を送りなよ。君のこれから歩む道に幸多からんことを願う」










 イヤー! 無視しないでぇぇー! 俺の心の闇を掘り返さないでぇぇぇー!




 ぇぇぇー!




 ぇぇー!




 ぇ……。


















 こうして、俺の二度目の人生は幕を上げる筈であった…………。















神様「僕と契約して、チート転生者になってよ!」

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