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第三話 ・チョロインですよメルルさん!


 




 現在、私は人生初めてのパーティーと言うものを体験しております。




 お父様の始まりの挨拶が終わるやいなや、来るわ来るわゲストの皆様方。このお誕生日会は私の顔見せ的な意味が強いと言うのは理解できるが、もう少しなんとかならないものかと思う。




 挨拶と自己紹介の流れ作業。私は前世での回転寿司屋でのアルバイトを思い出しながら、業務的にされど愛嬌は忘れずに数をこなす。私の営業スマイルがどの程度のレベルかは知らないが、皆終始笑顔で、私の元へとやってきては去っていく。




 いやまぁ、祝いの席で、ホスト側に悪態をつく者が居る訳ないんだけどね。しかし、別に悪態をついてくる訳ではないが、何事にも例外はいるよね、それも結構な頻度で。




「は、初めまして、僕はクリス・エバールと言います。よろしくお願いします。え、あ、おっ誕生日おめでとうございます!」




 こんな感じの例外が。歳の頃は、私と同じぐらいであろうか? 緊張しちゃって、可愛らしい。私にショタっ子を愛でる趣味はないが可愛らしいとは思う。同い年ぐらいであると言えど、私の精神が年相応ではないことは確かだ。




 単純計算で四十台、主人格が私であるため、それよりかはずっと若いだろうが、それでも目の前でガチガチに緊張しているショタよりかは確実に年長さんだ。ここは一つ、お姉さんとしてフランクな対応で緊張を解してあげようか。




「ふふ、ご丁寧にどうも。こちらこそよろしくね、ジェントルマン」




 そう言って私が右手を差し出すと、まるで子犬が、覚えたてのお手をするかのような覚束ない仕草で、私の手を握り返してきた。ヤダ、可愛いじゃないか(聖母の微笑み)。




 新たな性癖に目覚めたら彼は、責任を取ってくれるだろうか? いや、まぁ、冗談だけどね。




 真っ赤に顔を染めるショタを見送りながら、私は業務を再開する。断っておくが、回転寿司は好みのネタばかりが流れて来るけではない。『今回は茄子のぬか漬けか……』などと、益もないことを考えながらとにかく数をこなして行くと、私の顔見せは恙無しく終了した。




 さぁ、待に待った立食タイムの始まりだ。気配遮断を発動した私は、誰にも気取られる事もなく、神速のナイフ捌きを持って七面鳥(?)の丸焼き的な何かを屠って行く。




 駆逐してやる! 主菜を全て駆逐してやるぞ! どこぞの調査兵団新兵の如き意気込みで、七面鳥をヒット&ウェイで削ぎ落として行く、奴の弱点はうなじの辺だ。適度に引き締まった筋肉繊維を噛み締める度に、肉汁が滴り落ち、数種のスパイスの辛味にガーリックの香りが食欲を加速させる。




「ねぇ、君」




 そのまま、うなじから、もも肉に攻撃を移行する。




 手首のスナップを効かせネイフを振るうと、カリッカッリに焼けた奴の表皮を破り肉を削ぎ落とす。空中に翻った肉片をフォークで穿つと、なんの抵抗もなく深々と突き刺さる。


 間髪入れず咀嚼してやれば香ばしく焼けた皮が、パリッと破け、芳醇な肉汁が溢れ出す。




 なんということだ、この仄かな甘味はリンゴか? 先程はわからなかったが、おそらくは下味にリンゴを用いているのであろう甘味は、味にまろやかさと深みを与え芸術的でいて絶妙なバランスで成り立っている。アーサー王よ、ついに見つけたぞ! ここがアヴァロンだったのだ!




「ククク、シェフめ中々やりよるわ」


「ホント、美味しいよね」


「ーーファ? 何奴っ!?」


「え?」




 なんだと!? 言っておくが、私の気配遮断を応用したミスデレクションは完璧である筈なのだ。村の子供達に仕掛けた悪戯(性的な意味ではない、断じて違う)によりそれは実証済み!




 此奴、組織の刺客か? 刺客なのか? 目の前で柔かな笑を向けてくる黒髪ストレートロリ、私の目に狂いがなければ、八歳と二ヶ月に四日、十八時間三十六分ぐらいの年齢だ。




 やだ、可愛いじゃないか(暗黒ゲス顔)。どうやら組織は、私の性癖にまで調べがついているらしい。




「ははは、酷いなメルルさん。さっき自己紹介したばかりじゃないか、僕の名前はフェイト。フェイト・フォーランド。改めて、初めましてかな?」




「ごめんね。でも、忘れてたわけじゃないの、ちょっとお料理に集中しちゃて……あは、あははは」


「無理もないよ、本当に美味しいもんね。それに挨拶ばっかりじゃ、パーティーとは言えないよ。せっかくのパーティーなんだから楽しまないと」




 ふぇぇ……。この子、推定年齢八歳でフォローまで完璧だよぉ。その上、清楚系ボクっ娘とか私得すぎるじゃないか、なにこれ滾る!




「うん、ありがとう。フェイトちゃんも一緒に楽しもうか」




 調子に乗って、ちゃん付で呼んじゃったけど大丈夫かな……。




「勿論だよ、ダンスの時には絶対に誘うから、よろしくね」


「うん! 約束だよ。私もフェイトちゃんを探すから!」




 差し出されたフェイトちゃんの右手を強く握り締める。体温低! あ、なんだか冷んやりしてて気持ちいいかも。




「そうだ、いつまで聖都に滞在するつもりなのかな? もし良かったらなんだけどーー」




 ーー宴も酣。豪華な食事を堪能し、今日一日の疲れもあって、睡魔が私の瞼を惑わそうと加作し始めた頃。




 軽快なBGMと共にターンテーブルが運び込まれ、山のようにスピーカーやアンプなどの機材が積み上げられる。MCは勿論私、MMS(ミラクルメルルさん)だ。貴族たちは、柔らかいドレスを脱ぎ捨て、煌びやかな髑髏のブリンブリン(装飾品)でその身を飾り踊り狂う……。




 嘘です。クラッシク調の穏やかなメロディに、ペアを尊重する気品溢れる踊りを上品に踊る。ちなみに私も人並みには踊れます。簡単なステップを踏める程度であるが、別に社交界とかで女性側が、必要以上に上手く踊る必要はないらしいので、特に問題はない。て、セバスが言ってた。




 余談だが、私のブレイクダンスはちょっとしたものだ、また機会があれば是非披露してみたいと思う。






 お父様はダンスが上手かった。が、私とは身長差がありすぎる為に踊ることは叶わなかったので少々残念に思う。


 フェイちゃん(フェイト)はダンスが上手かった。私を終始エスコートするかのような立ち振舞い。普通男女がペアになり男性がリードするものだから、こういう場合どうなるのか? と、心配していたが、どうやら杞憂に終わったらしい。この完璧(パーフェクト)ロリめ。




 ショタはダンスが下手だった。いや、本当はちゃんと踊れるんだろうけど、緊張しすぎて動作がぎこちない。緊張を解してあげられない私の力不足は嘆かわしいけれど、可愛いから別にいいだろう。私の足を踏んづけたのも許す、だから、泣きそうな顔をするのは止めてくれ。




 こうやって、夜が更けていく。やがて、パーティーが終わればお風呂に入って、布団に包まりスヤスヤと眠るだろう。今日はかなりのハードスケジュールだったが、それももうじき終わる。そうすれば当然朝が来て、やがて昼が来る。




 昼が来れば……フェイちゃんと、観光(デート)だ。




 実は私、フェイちゃんから、観光のお誘いをされちゃいました。


 空いてる日取りを聞かれて『明日!』て、即答しちゃうぐらいに興奮しております。




 まさか、私が遊びに誘われるなんて……これはアレだな、


 これはもうお友達だと思って良いよね、ねっ! お父様の了承も得たし、ぬかりはない。ああ、明日が待ち遠しい、お友達とお買い物なんて私の人生では初体験だ。




 最近初めてずくしで、急に大人の階段を駆け上がって行っている気がするな。この調子で私もリア充デビューしちゃいますか。















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