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転生したけどやっぱり死にたい…  作者: rab
旅の始まり
7/59

服屋、巨漢、猫耳

長くなりました。

途中で切ろうかとも思ったのですが、個人的に切りたくなかった部分だったのでそのまま続けました。

門を抜けるとすぐ、円形の広場に出た。広場には馬車が何台も止まり、積荷を降ろす人がいたり逆に荷物を積む人がいる。聞いた話によるとこの円形の広場から街のそれぞれの通りに出られるようなので、俺は馬車の間を通り抜けながら一つの道を目指す。


客らしき人と荷物のやり取りをする行商人達の動きはとても忙しない。途中何度もぶつかりそうになり、その度に冷や汗をかいた。気を付けないと俺の人生が危ない。少しでも外套が捲れたらその時点で終わりだ。前世で言う警察のような役割を担う組織とかあるのかな…そんな組織に連れていかれたら死ぬことも出来ずに監禁されるかもしれない。


左手にニワトリを持っているのが良くない。外套を抑える手が右手だけじゃいずれ限界が来る…やっぱりニワトリはどこかに置いていこうかな。そう心の中で思った途端、ふと左手に違和感を感じた…何だ?なんだか皮膚にニワトリのもふもふした材質がへばりつくような…


いや、へばりついている。ニワトリを手放そうとしたら手の平にくっ付いた。おい、何してくれてるんだ。本当に捨てるぞ。


外套の中で必死に左手を振るが、以前離れる様子が無い。どうなってるんだこれ。俺が捨てようとしたからだろうか…もしかしなくても、ニワトリには意思があるのかもしれない。何だかそんな気がしてきた。捨てようとしたから怒ってるのか?怒ってそうだ。


自然にニワトリの怒りが収まるのを待つしか無い…何故なら本当に意思があるとしても、コミュニケーションの取りようが無いからだ。右手は塞がっているので撫でることも出来ない。


「はぁ…」


仕方ないのでこのまま歩くことにした。


何とか広場を抜けて一つの道に出ると、そこは商店街だった。道の両側には様々な店が並んでおり、店によっては店員が呼び込みを掛けたりしている。大分人通りが多いな…しかし目的の服屋があるのはこの商店街の奥なので進むしかない。


商店街の様子を伺いながら、誰かに当たらないように慎重に道を歩く。店先の商品の中には見た事の無い果実や野菜が並んでおり、主婦らしき人と店主がその前で話し合っていたり、更には魔道具のようなものを売っている店まである。魔道具なんて、昔シレン村に来た鑑定士という人が持っていた鑑定台くらいしか知らないので、少し興味が引かれる。


だが、今はそれどころじゃない。俺は足早に商店街の奥へと向かう。しばらく歩いて人通りの落ち着いた所まで来ると、ようやく門番さんに教えて貰った名前が看板に書かれた店を見つけた。




「『白兎(ホワイトラビット)』。ここかな」


店の白い壁面にはガラスのショーウィンドウが埋め込まれ、その中には青いマントや洒落た帽子を被せられたマネキンが二体置かれていた。店先に置かれた看板には、全体的に丸く可愛らしい文字で『衣類専門店』と書かれている他、服の素材となる様々な動物や魔物、植物の名前が書かれていた。木製のドアにはプレートが掛かっており、同じ筆跡で『営業中!』と書かれていた。


このお店、俺が入っていいんだろうか。ここまで来ておいてなんだが、着られるなら何でも良いと思ってる奴が来るような店では無さそうだ。ましてや外套の下は全裸だしな…服屋は服屋でも、古着屋とか教えて貰うべきだったかな。


どうしようか…いや、ここ以外に服屋を教えて貰わなかったし、また商店街をこの状態で通り抜けることもしたくないので、今更引くことは出来ない。入るしかない…店員さんには申し訳無いが失礼させて貰おう。


「お邪魔します…」


木製のドアを開けると、カランカランと音が鳴る。ドアの裏側には鐘が掛けてあったようだ。中を軽く見回すが店員さんは居らず、ただ飾られた服が天井から吊るされたランプに照らされている。俺はそのまま中に入った。


店内を見回す。外装が白で統一されていたのに対して棚やカウンターはブラウンが多く使われていて、全体的に落ち着いた雰囲気を感じる。壁際に規則正しく並んだ棚には、綺麗に折りたたまれた服が所狭しと置かれていた。


うわぁ、如何にも服屋って感じだな。気の所為か空気も少し違う気がする。これが質のいい繊維の香りってやつだろうか…繊維の香りって何だろう…


ふと目に入ったのは、店の中央に置かれている一つの横長のテーブルだ。他の棚には控えめな色の服が多いのに対して派手な色の服が並べられている。何故かここだけピンクとか赤が多いな…それに他の棚と比べて少し畳まれ方が乱雑な気がする。




「あら、お客さんかしらぁ?」


店内を色々と見て回っていると、店の奥の扉から籠った声がした。店員さんだろうか。姿は見えないが、何故だかその声には何か違和感を感じた。


「あ、はい。服を買いに来まして」

「ちょっと待っててねぇ?すぐに準備しちゃうから…もう、何処にいったのかしら…」


何だろう、この違和感。声が籠っていてよく分からないが、この店の店員さんである事は間違いない。あの店先の可愛らしい文字と、落ち着いた店内の雰囲気、この店を切り盛りする店員さんはどんな人だろうか。…考えると何故か更に違和感が強くなった。


「あっ…あったわ!ああ良かった。これが無いと人前に出られないのよねぇ」


ダメだ。店員さんが何かを話す度に違和感が強くなる。何だろう、何が引っかかっているのだろうか。考えていると、奥の扉が開いた。


「お待たせ!ようこそ『白兎』へ…あらぁ?これまた可愛いお客さんね!食べちゃいたいくらい…」




…あっ。


奥の扉から出てきたソレを見て、俺はようやく違和感の正体に気づいた。


扉から出てきたのは、ピンクの服にピンクのコサージュを胸に付け、更にピンクの髭を生やした巨漢だった。




「すみません、間違えました」


俺はいつの間にか店の外に出ていた。


いや、ビビって出てきた訳では無い。少し驚いただけなのだ。道理で口調に比べて声色が低いと思ったんだ。違和感の正体はそれだ。まさかこの店の店員さんがそういうタイプの人だとは…情報量が多すぎて一旦整理する時間が欲しい…一時間くらい。本当に何が起こったのか理解出来てない。


あれ、この店先の看板の丸文字って誰が書いたんだろう。店員さんだよな、でも店員さんはさっきのアレで、あれ…?


ダメだ分からなくなってきた…よし、一旦出直そう。服は着たかったが、それ以上に脳の負担が大きすぎた。一度、門番さんの所まで戻って他の服屋を教えて貰────


「………………」

「え?」


気が付くと、いつの間にか目の前に誰かが立っていた。え、今度は何…?


「………………」


立っていたのは少女だった。身長は俺より少し低く、俺の妹のアビーよりは高い。腕に金属の篭手を着けており、胸は鉄のプレートに守られ、下はハーフパンツの動きやすそうな格好をしている。冒険者だろうか。しかし一番目を引いたのは、その頭。肩まで伸びる綺麗な銀色の髪は全体的にもふもふと広がっていて、そして何より、人間には無いはずの前世で言う猫のような耳が付いていた。この世界、こんな生物もいたの?


銀髪の猫耳少女は無表情で俺を見ている。出来ればこれ以上情報を増やさないで欲しいです。もう脳が持たないので。


「あの、何か用が…?」

「…………あ」


ただ立ったまま何も言わない少女に問いかけると、少女は何かに気がついたように、少しだけその緋色の目を見開いた。そして次の瞬間、俺の後ろから爆音が響いた。


「───ちょっとッ!!人の顔を見るなり出ていくってどういう事なのよッ!!」


うわぁ、ヤバイ。もう何もかもお終いだ。後ろを振り向く間でもなく、先程のピンクの巨漢だと分かる。


「あの、店を間違えたようで───」

「この店に入った時点でアナタはもうお客さんなのよッ!!こっちに来なさいッ!!」


そう叫ぶとピンクの巨漢は俺の頭を掴みあげ、店内に引き摺りこんだ。おい、これお客さんの扱いじゃないだろ!


「痛だだだだ!」


巨漢のゴツイ指が頭にめちゃくちゃ食いこんでいる。痛い、死ぬ、頭蓋骨が砕ける!


「間違えて入っちゃっただけなんですって!離してください!」

「久々に可愛い子が来たっていうのに、みすみす逃がす訳無いでしょ…横になりなさい!ほらっ!」

「ぐあっ!」


テーブルの上に投げられた。


背中から思いっきり叩きつけられた衝撃で、置いてあった服の幾つかを床に落としてしまう。更に悪い事に、外套が捲れた。ヤバイ。


「あらぁ…まさか下に何も着ていないなんて大胆っ!準備だけはしてきたってコトね!お姉さん嬉しい!」


準備などしてない。お姉さん?誰が?

頭が痛くなってきた。巨漢に掴まれた衝撃も残っているが、それ以上に脳が痛い。一体何が起きているんだ。ここは何処なんだ。本当にさっきと同じ店か?魔物が居るぞ、噂に聞くダンジョンじゃないのか。


俺が身を起こすよりも早く、自称お姉さんの巨漢は俺の身体に覆いかぶさり、その巨体でテーブルに押しこまれる。うわ、この状態、なんだかめちゃくちゃ嫌だ。


「な、何するんですか!やめてください!」

「いいからほら、暴れるんじゃないの!」


裸のまま両腕を押さえつけられ、何も身動きが出来なくなる。左手に持っていたはずのニワトリはいつの間にか手元から居なくなっていた。その姿勢のまま周りを見渡すと、ニワトリは店の入口近くのカウンターに乗り、そこから此方を見ている。いつの間に…仮にも俺の固有スキルなんだから、動けるなら助けて欲しい。


そしてよく見ると先程の猫耳少女もドアの影から此方を覗いていた。


「あの、見てないで助けて!」

「………………」

「ふふ、ダメよ…あの娘も私のお客さんなんだから」


猫耳少女はその場から少しも動かなかった。ただこの状況を観察している。

マジかよ…自力で脱出するしか無いのか。だが、この状況を脱せるような力なんて俺には無い。固有スキル【剛力EX】を使えばなんとか出来そうな気はするが、発動の仕方が分からなかった。つまり、このピンクの巨漢から逃れる方法は無い。詰んでる。


「あら、諦めたの?じゃあ、遠慮なくやっちゃおうかしら!」


先程よりも少し赤みがかった巨漢の巨大な顔が近づいてくる。

ああ、ダメだ。何故こんなことに…門番さんの言う通りこの店に来るべきじゃ無かった。いやそもそも、スライムに包まれて寝ようという発想が良くなかった。思えば、あの軽率な行動のせいで飛んでもない苦労をしている。過去に戻れるなら自分をぶん殴ってやりたい。


「さあ、目を閉じて………?」


ああ地獄だ。死んだら地獄に行くつもりだったけど、既にここは地獄だ。クロエ…俺はこれから汚れてしまうけど許して欲しい…もし見守ってくれているなら、奇跡的にあの世で会えても何も聞かないでくれ。


そう願うと、自ら意識を落としに掛かった。




────────────────────────




「これ…うーん、これかしら…」


唸る声と衣擦れの音だけが聞こえる。

今、俺はテーブルの前で椅子に座っていた。テーブルを挟んで真正面にはピンクの魔物…は失礼だな、先程の迫り方が余りにも異常だったからそう見えただけで、実際はただ筋肉とピンク色多めの巨大な男性だ。ピンクの巨漢さんは今、テーブルに様々な材質の服やズボンを広げている。


危うく大事なものが奪われるかと思ったのだが、どうやら俺の思い違いだったようだ。あの後、巨漢さんはメジャーのようなものを取り出し、俺の全身を採寸し始めた。そしてある程度測り終わると椅子を店の奥から持ち出し、座るように促されたのだ。


猫耳少女もこちらから見てテーブルの右に、同じように座っている。俺のニワトリを小手を外した両手で掴み、ふわふわと揉んでいる。気をつけた方が良いよ。そのニワトリ、手に引っ付くから。


「これ…いや、これね!アナタお待たせ!ようやく決まったわよ!」

「え?」

「もう!少しくらい見てなさいよ、アナタの服なのよ?…ほら、この組み合わせどうかしら!」


巨漢さんのはにかんだ顔が此方を向く。やっぱり怖…巨漢さんから目を逸らすようにテーブルを見ると、様々な服を周りに退かした中心に、シャツから上着、長めのズボンと靴の一式が揃えられていた。全体的に暗めな色で統一されていて大分お洒落…だと思う。この世界に生まれてから、服なんて気にすることが無かったのでよく分からない。


「うーんと、お洒落…です」

「そうでしょ!流石アタシ、センスあるわぁ!この色、この材質…アナタの可愛い顔に絶対似合うと思うのよね。早速着てみてちょうだい!」

「俺が着ても良いんですか?」

「当たり前じゃない。そのために選んだのよ?」


薄々気づいてはいたがこれがこの店、というかこの巨漢さんの商売の仕方なのだろう。俺の身体を採寸したのは、俺に売る服を巨漢さんが見つける為だったのだ。


椅子を立ち上がり、テーブルの上からズボンを取って外套の下で履く。下が隠れたなら良いかな…俺はようやく外套を脱いだ。そしてベージュのポーチをテーブルに置き、代わりにテーブルからシャツを取って被り、更にその上から上着を羽織り、裸足のまま靴を履く。


ああ、ようやく人に戻れた…

この全身に繊維を纏う感覚、久しぶりだ…


しかし何だか、上も下も肌に触れる感覚がとても滑らかで肌触りが良い。通気性も良いらしく熱や湿気は全く籠らず、常に新鮮な空気を感じる。着ること自体が久しぶりだからだろうか、服が気持ちいい。なんだこれ。


「あらぁ〜〜〜〜!やっぱり似合うじゃない!」

「そうですか?どうも服はよく分からなくて…」

「アタシから見ればバッチリなのよ!ミオちゃんもそう思うわよね?」


ミオチャン?あ、猫耳少女のことか。


「……………ん」

「ほら!」


ほら!って、猫耳少女はこちらを見向きもしなかったぞ。相変わらずニワトリと見つめあっている…絶対適当に返事しただけだ。だが巨漢さんは満足そうな顔で頷くばかりだ…まあ、いいか。ひとしきり頷くと、巨漢は口を開く。


「それで着心地の方はどうかしら?」

「着心地…はとても良いですね。何だかやけに快適な気がします」

「うんうん、そうでしょ。何せ翼竜の皮を使った高級素材なんだから」

「え、翼竜?」


翼竜って、龍が魔物化する前の姿って言われているあの翼竜の事か?翼竜は龍には匹敵しないが充分に危険な動物で、おまけに人里離れた火山や地の底にしか生息しない。だからその素材は高級で余り流通しないって昔聞いたんだけど…お金、大丈夫かな。


「あの俺、そんなに沢山お金持ってないんですけど…」

「お金?…通常料金だけ払ってくれれば良いわよ?素材が翼竜だからって気にしなくていいわ」


通常料金って何だろう。どこかに書いてあるかな…書いてないな。この店については門番さんに聞いた話以上の事は知らない。ましてや俺はこの世界のお金の価値を知らないし、高級だと言われているはずの翼竜の素材をこうも簡単に出せる店の通常料金なんて、本当に通常なのかも怪しい。


ローナさんが貸してくれたお金を頼りにするしか無い。テーブルに置いたポーチを再び手に持つとずっしり重い。一体どれだけ貸してくれたのか分からないが、取り敢えずギリギリでも足りると良いな…




「通常料金も足りないんだったら身体で払ってくれてもいいわよ?」


ローナさん!貴方だけが頼りなんだ!力を貸してくれ!頼む!


全力で祈りながら俺はポーチの蓋を開ける。すると、中には白いメダルのような硬貨がギッチリと詰まっていた。白か…これどうなんだろう。金とか銀とか銅とか、前世であったような色なら何となく価値が分かるんだけど…このメダル、真っ白だ。もしかしてお金じゃないのかもしれない。ええ、どうしよう…身体で支払わなきゃいけない。


「アナタそれ…」


巨漢さんが俺の持つポーチを覗き込み怪訝な顔をしている。あ、これはダメそうか。今度こそ終わった。よし、意識を落とすか。


…なんて考えたが、本当にどうしようか。最初こそ怖かったものの、結果的に巨漢さんは親切な人だった。採寸までして手間暇掛けて貰ったのに、お金が払えませんじゃ申し訳ない。取り敢えず素直に謝ろう、話はそこからだ。


「あの、すみません。実はコレしか持ってないんです」

「…そうなの?ちょっと待っててね」


そう言うと巨漢さんはレジカウンターの裏へ回り込んだ。レジを開け、中から硬貨を取り出す音がする。あれ、意外と大丈夫そうだぞ。反応を見るにこの白いメダルはちゃんとしたお金のようだ。


「待たせたわね。お釣り持ってきたから、一緒に確認してね?」


巨漢さんは左の大きな手の平が埋まるほどのメダルを持って来ると、テーブルの上に広げた。全て金や銀、銅のメダルだ。良かった、この白いメダルは金や銀よりも価値が高かったようだ。しかし何だか、お釣りにしては量が多い気がする。


「あのこれ、多すぎませんか?」

「何言ってるのよ、それを今から確認するんでしょ?10万リアから通常料金の1万と1800リアを差し引いて、8万と8200リアね」


リアは恐らくお金の単位だろう…しかし10万って数字はどこから来たんだ。まさか、この白メダル一枚で10万リアってことだろうか。そもそも1リアってどれくらいの価値なんだろう。


目の前で巨漢さんがメダル…お金の整理をしている。種類ごとにまとめられ、塔のように積まれていく…金が八枚、銀が八枚、銅が二枚…だからそれぞれ万、千、百の単位って事か。理解したぞ。


「はい!間違いないわね?」

「問題無いです。ありがとうございます」


多分間違ってないだろう。俺はテーブルの上に積まれたお金を受け取り、ポーチに入れようとする。と、ある事に気が付く。


ポーチにお金が入りそうにない。ローナさんはポーチの限界まで白メダルを詰め込んでいたようで、金の一枚を入れた所で蓋が閉まらなくなった。どうしよう、持ちきれないぞ。それによく考えたら、このポーチの奥底にギルドの紹介状が埋まっている。収納するどころか取り出すことすら出来なさそうだ。


…この店、鞄とかも売ってないかな。俺は巨漢さんに聞いてみることにした。


「あの、店員さん」

「んもう、堅苦しいわね。メリッサって呼んでちょうだい」


ピンクの髭を撫でながら巨漢さんはそう言った。うわぁやめてくれ、情報量を増やさないで。


「…メリッサさん。このお店って鞄も取り扱っていたりしますか?」

「鞄ね。あっちの右奥の棚にあるわよ」

「あ、じゃあ見てきても良いですか?実は鞄も買いたくて」

「分かったわ。じゃあ一旦これも保留しておくわね…先にこっちの女の子の用事も済ませちゃうから、その後また話しかけてちょうだいね」

「分かりました。ありがとうございます」


そう言って立ち上がり、教えて貰った場所に向かった。なるべく収納が多いのが良いな。デザインは余り重視しないけど、選んで貰った服に合う色にしよう。


鞄を幾つか手に取って物色し、一つ気に入ったものを見つけた。黒が基調で外側にポケットが二つあるリュックだ。内側に仕切りがあって物を分けて入れられそうだ。お金とそれ以外で分ければ良い感じに収納出来ると思ったので、取り敢えずこれにした。


リュックを持ってテーブルへと戻ると、メリッサさんと猫耳少女が話している最中だった。


「はいこれ。注文の品よ」

「……………ん」


メリッサさんは手袋のようなものを猫耳少女に渡す。猫耳少女は渡された手袋を手に通し、テーブルに置いてあった篭手を取ると手袋の上から着けた。


「…………ぴったり」

「そう、良かったわ!」


篭手のまま手を開いたり閉じたりして感触を確かめると、猫耳少女は懐から小袋を取り出した。


「…………これ、お金」

「はい………丁度ね!確かに受け取ったわ」


小袋の中身を確かめるとメリッサさんは小袋をテーブルの上に置いた。猫耳少女は再び椅子に座り直し、再びニワトリを揉み始めた。…話は終わったのかな?


「メリッサさん。鞄、決まりました」

「あら、早かったわね。じゃあこっちもお会計の続きしましょうか」

「お願いします」




その後、俺は改めて服一式と鞄の代金を支払った。買ってから気づいたのだが、全部身に付けると黒一色だ。細かく言うと上着は深い紺色でシャツは暗いブラウンなのだが、遠くから見たら黒にしか見えないだろう。ちょっと厨二っぽいな…ここが異世界で助かった。


ともかく、俺はようやく服を着ることが出来た。もう二度とスライムに包まれて寝たりしない。


※追記:矛盾があったので修正しました。。

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