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転生したけどやっぱり死にたい…  作者: rab
王都周辺
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予兆

「次の方、どうぞ」


長い冒険者の列に並んで待つこと半時間、漸く受付嬢さんの顔が見えた。


「こんにちは、これとこれ…あとこの依頼書の達成報告でお願いします」

「皆さんでしたか。相変わらずお早いですね」


早速、幾つかの依頼書と共に討伐証となる魔物の部位を提出する。


「はい、確かに全て受け取りました。確認後、改めてこちらからお伺いしますのでギルド内でお待ちください」

「どうもです」


手早く用事を終えた俺達は、ロビー内のテーブル席に移動した。


「やっぱり、王都の討伐依頼って何だか手応えが無い気がするのよね」


長椅子の真ん中に浅めに腰掛けたルシアがそう零す。


「逆に銀や金級の依頼が多かったら、それはそれで大変そうだよ」

「とは言え、ギルドの言う『決壊』が近いにしてはヤケに平和すぎるとは思うがな……銀とか金級のダンジョンだって王都近くに無い訳じゃねえし、少なからず影響はありそうなもんだが」

「……依頼書も、無い」

「それよ!金は兎も角、銀級の依頼すら無いってどうなってるのかな?」


金級の依頼は、銀級の俺達では元々受けることが出来ない。だから特に気にはならなかったのだが、銀級の依頼も見掛けることすら珍しいというのは少し気にかかっていた。


「それは、間引きが行われているからですね」


と、考えていたところで、偶然にも知り合っていた冒険者に声がかけられた。


「フランさん!」

「こんにちは、皆さん。お元気そうで何よりです……ルシアさんも、相変わらずで」


挨拶を済ませると、フランさんは流れるように自然な動きでルシアの頭に手を伸ばし、撫でようとする───が、それを見切っていたルシアは煩わしそうに杖で手を軽く受け流した。ルシアの薄桃色の髪はフランさんの手をするりと躱す。


「あら……恥ずかしがらなくてもいいのですよ?」

「良くないし!子供扱いしないでよ!」

「あらあら…」


拒否されたというのに、何とも楽しそうなフランさん。その後もルシアに躙り寄って抱きしめようとしたり、頭を撫でようとするを繰り返す。


「もー!いい加減にしないとファウストさん呼んじゃうよ!」

「え……そ、それはちょっと困ります!勘弁してください…」


ルシアからファウストさんの名前を出された途端、急にフランさんの顔が曇り、動きが止まった。ルシアは対抗策として、ファウストさんを使うことを覚えたようだ…なんだか、フランさんと勝手に名前を使われたファウストさんの双方ともに申し訳ない。が、取り敢えず話を進めることにする。


「フランさん、間引きが行われている、っていうのは?」

「あ、ええ」


ハッと気が付いたフランさんは、調子を取り戻して詳細を説明してくれる。


「金級のダンジョンに関する依頼は、現在は掲示板には貼り出してません。というのも、そのような高難度の依頼は迅速に、且つ確実に成功させる必要がありますので、ギルド職員の実力派若しくは金級冒険者に直接依頼しているのですよ」

「直接!?なんだかズルい!」

「そうか?相応の扱いの範疇だろ」

「って言うけど、銀級の依頼だって見ないじゃん!」

「銀級……も、同じくギルド職員が対応しているものばかりですね。今掲示板に貼られている依頼書は、漏れて流れたものが大半です」


成程、だから銀級の依頼ですら滅多に見なかったのか。ルシアは出来れば銀級の依頼を受けたいようだが…無いものは仕方ない。

それに銅級の依頼だって決して馬鹿には出来ず、第一安定してこなすことが出来る。そして銅級と言えども報酬は決して悪くなく、既に王都に着く前に所持していた額の数倍近くリアが手元にある…言わば稼ぎになる。そして恐らくこの状況は、『決壊』が収まるまで続くだろう。


「この先も暫くは、銅級ばかりになりそうだね」

「……ん」

「もー!これならアストハープの方が手応えのありそうな依頼が多そうだわ!」


ふと、ルシアの言葉で思い出した。そうか、だからアストハープ周辺のダンジョンが進化した時、王都から多くの冒険者がやって来ていたのか。報酬だけでなく手応えやスリルを求めている。冒険者らしい仕草だ。


「ギルドとしては助かっているのですよ。例え銅級の依頼であっても、依頼主にとっては死活問題であることが多いですし…期限まで残ってしまった場合に対応しなきゃならないのはギルドですから」


フランさんの言う通り、時折依頼書の目的地付近に着くと、その近くの村の村民に出会う事がある。話に聞けば、やはり『決壊』の影響で溢れ出した魔物が村にも少なからず被害を出しているようだった。とは言え、大半はダンジョンの外における討伐依頼であった為、この先数日間の依頼ではルシアはいつも文句を垂れていた。そんな中でも、ルシアの魔物討伐数はいつも一番だったのだが。




そして決起会当日、俺達はいつも通り冒険者ギルドを訪れた。時刻は夕方、既に日は半分ほど沈んでおり、北に見える山々も段々と闇を纏い始めていた。


「……今更だけど、決起会って何するんだろうね?」

「さあな。大方、意志の統率か……情報共有あたりじゃあないか?任意の参加とは言え、『災禍』なんて正体不明を相手取るんだからな」


言われてみればしっくり来る。冒険者間で流れている『災禍』の話はどれもこれも噂程度でしか無い。その点、対策隊を発足させるくらいなのだから冒険者ギルドは幾らかの情報は持っていそうだ。


「……ご飯」

「ふふ、ミオはそればっかりね!」

「……美味しいものは大事」


ミオはいつも通りお腹を鳴らしている…というか、数日前からずっと飯の話しかしない。ミオにとっては『災禍』よりもそっちが本体なんだろうな。


入り口からギルドに入り、受付へと向かうといつもの受付嬢さんが迎えてくれた。


「エル・ストラグルの皆さん、お待ちしていました」

「どうも、今日は宜しくお願いします」

「こんにちは……ねえ、今日はなんか人が少なくない?」


ルシアが挨拶混じりにそう聞く。


「確かに、ヤケに静かだな…」


言われてみれば、という感じだ。見渡すとギルド内は閑散として、テーブル席に二、三の冒険者パーティが屯しているだけだ。この時間であれば何時も、依頼帰りの冒険者や飲み食いをする冒険者で賑やかになるのだけど……今日に限って人が余りにも少ない。何かあったのだろうか?と、受付嬢さんを見る。


「ええ。『決壊』が既に始まっておりまして……本日の早朝に緊急依頼を出し、可能な限りのギルド職員と冒険者さん達にその対処へと向かって頂いたのです」

「マジかよ……俺達も決起会に参加している場合じゃないんじゃねえか?」

「いえ、今の所は現地に向かった人員で抑え込めています。ですので、今回『対災禍隊(ストロフモート)』に参加される方はなるべく決起会に出向いて欲しいとのお達しです」

「すとろ…?」

「あ……失礼しました。『対災禍隊(ストロフモート)』は『災禍』への対策隊の名称です。決起会の開催にあたり、この度正式に決定しました」


名前が決まったのか。また聞き慣れない言葉だな。


「ノエル、俺達は決起会に参加する方向でいいんだな?」

「そうだね。心配だけど、そういう事なら決起会の方を優先しよっか」


ギルドが問題無いと言うのだから、俺達がどうこう出しゃばる必要は無いだろう。ここは大人しく決起会に参加しておこう。


「ありがとうございます。それと、決起会の前にお願いがあるのですが……皆さん、鑑定の方を行って頂きたく」

「え、鑑定ですか?」


鑑定と言えば各々のスキルや能力値を数値化するものだ。しかし何故にこのタイミングなのだろうか。


「はい。本日対策隊に参加される方の最新の情報をギルド側で把握しておきたいとのことでして……出来ればギルド備えの鑑定台で行って頂けないかと」


そう言う事であれば特に断る理由は無いだろう。


「でしたら、是非」

「恐れ入ります。早速、鑑定室にご案内いたしますね」


そう言うと、受付嬢さんはカウンター横の扉を開け、ギルドの奥へと案内してくれる。


「鑑定か……成長してるものかな?前に鑑定してからまだ半年も経ってないけど」

「ダンジョンに入ったりして経験は積んでるんだ。少しは期待して良いんじゃねえか?」

「そうよ、あたし達、まだまだ成長期なんだから伸び代も大きいに決まってるじゃん!」


ルシアがそう言うと、ロルフが難しい顔をしてルシアの頭を軽く叩く。そして何かに気が付き、少し同情を含んだ目でルシアを見やった。


「……そうだな、成長期だな」

「あ!ロルフあんた、一体何を察したのよ!ふざけんな!」

「いや…悪かった。もう言わねえよ。本当に」

「謝らないでよ!ホントに成長してないみたいになるじゃん!……や、謝るなら上から叩いたことを謝りなさいよ!縮んだらどうしてくれるの!?」

「縮むか!」


何時ものやり取りを始めた二人は置いておき、今までの道のりを軽く思い返す。成長しているとすれば…アストハープでのダンジョン攻略を通じて幾らかの戦闘経験が得られたくらいだろうか。うーん…?


と、考えながら歩みを進めていた所、左手を触られている事に気が付く。見ると、ミオが指で押したり叩いたりしていた。一体何をしているんだ。


「どうしたの?」

「……縮むかも」


手を縮めてどうするつもりなんだ…前にアストハープで鑑定をした時も、何かよく分からない事を言っていた気がする。


……俺の手に何かあるのだろうか?実際のところ、シレン村を出てからというもの自分の身体の事は自分ですらよく分かっていない。何気無く魔法を使用しただけで固有スキルが増えるのはその筆頭で、本当にどうなっているのやら。


そうこう考えている内に鑑定室の扉の前へと着き、俺達は鑑定室へと通された。受付嬢さんは軽く鑑定台の説明をして、ギルドのロビーへと戻って行った。


「細長くない?」


鑑定台を見たルシアが言うように、アストハープの冒険者ギルドに置かれていた鑑定台に比べ、横に数倍長い。色は同様で黒色だ。


「幾つかの鑑定台が横並びに繋げられているようだな。見たところ、七、八人は同時に鑑定出来るんじゃないか?」

「ふーん……王都の魔道具は進んでるわね!じゃあせーの、で皆一斉に鑑定しちゃおうよ!」

「そうだね。出来るならそうしようか」


言うや否や、ルシアがいち早く鑑定台の上に手の平を翳す。すると、ルシアの前に青い画面が現れる。


「あ、ほら!出てきたわ!あんた達も早く!」

「はいはい」


続いてロルフが横に立ち、鑑定台に手を翳す。俺とミオもそれに続いた。鑑定台の上には見覚えのある青い画面が現れ、そこには各々、以下のように書かれていた。




ノエル…

Lv.31

生命:98/98

魔素:294/295

持久力:48

筋力:45

耐久力:66

魔力:590


固有スキル:【不明】


ミオ…

Lv.33

生命:215/215

魔素:173/174

持久力:265

筋力:290

耐久力:240

魔力:240


固有スキル:【白猫】


ロルフ…

Lv.30

生命:241/241

魔素:124/125

持久力:171

筋力:342

耐久力:171

魔力:53


固有スキル: 【魔将】【剛力】


ルシア…

Lv.30

生命:151/151

魔素:361/362

持久力:119

筋力:53

耐久力:119

魔力:348


固有スキル:【魔女】【魔晄炉】




前回の鑑定から比べて、皆平均して10ほどレベルが上がっている。外見だけでは分からないが、これを見る限りは今までの冒険が経験として計上されているようだ。しかし、相変わらず、俺の固有スキルは正常に表示されないままだな…


「軒並み上がってるし!このレベルならもう、金級だって目と鼻の先なんじゃない!?」

「流石に気が早いな……金級の昇格試験を受けるにはな、パーティの平均レベルが100以上である必要がある。知ってると思うが、レベルってのは反比例的に上がりにくくなるもんだ」


俺は当然知らなかった。今が平均31で、少なからずアストハープの頃から幾らか上がっているけども……これから伸びが緩やかになっていくと思うと、計算しなくても気の遠くなるような感覚を覚える。最も、俺が金級になれるようなレベルになるまで生きていることは無いだろうけど……というか、そうであって欲しい。


「つまり、まだまだってことか……」

「えーっ!?長すぎるし、そんなの!」

「文句言っても足りないもんは仕方ないだろ。大体、新人もいいところの俺達のような冒険者が、早々に銀級として名乗れていることすらレアケースなんだぞ?」


思えば、ギルド内を行き来する同年代くらいの冒険者は銅級ばかりだった気がする。あちらからどう見えているかは分からないが、ロルフの言う通り、ギルドからすれば少なからず特殊なんだろうな。


「……銀級、このレベルじゃ足りない?」

「いや、レベルだけ見れば少なくとも今は充分通用する。銀級への昇格試験に必要な平均レベルは元々30だからな。だが、実際は俺達の経験と余りにも乖離しすぎている」

「そうか……今思えば、浅瀬の迷宮だって特殊な例だったしなぁ」

「ああ。ここ数日の間、銅級のダンジョンに何度か潜って漸く分かったぜ。これが普通、もとい冒険者の下積みなんだってな」


加えて、俺とミオは古代洞窟のエデウスだって戦闘経験がある。経験の値だけで言えば、あれは莫大なものだったと思う。それこそ、普通の冒険者が何年も掛けて蓄積していくものを、一度の冒険で手に入れてしまった。その不相応な経験と現在の能力値が合わさった結果、青い画面に表示されている数値はやや歪なように見えた。


「でも、普通じゃダメなのよ!とにかく大きな活躍して、あたし達の名声を上げなきゃ!その為にあたしはここにいるんだから!」

「それは俺も同意見だが…俺が言いたいのは、もう少し分を弁えた行動をしなきゃ早死にするって事だ」

「そりゃそうだけど───」


バタン、とルシアの言を遮るようにして、鑑定室の扉が開け放たれた。


「鑑定室を使っていたのは君らか。エル・ストラグル……丁度良い、お前達は僕らと来るんだ」


扉を開けたのは不機嫌そうな顔をしたブロンド髪の冒険者兼ギルド職員、グレンさんだ。俺達の姿を確認すると、片腕を振って着いてこいという身振りをした。


「来るって、何処に……何かあったんですか?」

「緊急事態だ。言っておくが、決起会も中止だ。兎に角、黙って僕に付いてこい」

「えーっ!ちょっと!いきなりそんなこと言われたってワケわかんないわよー!」


と、ルシアが先立って、混乱しながらもグレンさんに着いて行こうとした所に、少し慌てた様子の受付嬢さんが扉の横から現れる。


「すみません、グレンさんの代わりに簡単に説明すると、状況が変わりました。『決壊』に対応する冒険者が足りず……皆さんも向かって頂けませんか」





お久しぶりです。

前回の投稿から早四ヶ月弱、こんなに投稿が遅れる筈じゃ…と焦りながらも、思い付きのメモばかりが手元に増えていってます。。

余りにも間隔が開きすぎ、自分自身も大丈夫かと不安になる事がありますが、上記の通り書き溜めだけはあるので続けられる限り続けたいと思ってます)取り敢えず年内にはもう何話か纏めたい。。)

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