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転生したけどやっぱり死にたい…  作者: rab
旅の始まり
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第一の出会い

休日が終わって悲しいです。。

目を開けると、視界が少しボヤけていた。

寝惚けている訳では無い。


「…駄目だったか」


腕にぷにぷにとした何かが絡みつく感触がする。俺は何とかその粘性体を掻き分けて腕を顔の前まで持ってくると、更に目の前を掻き分けた。すると視界の歪みは消え、綺麗な青空と白い雲が見えた。


腕と顔以外は未だに何かに絡みつかれている。しかし、身体に絡む粘性体は決して知らないものでは無い。むしろ自分からこの状況を作り出した。


「やっぱりスライムじゃ足りないよな…」


そう、俺は全身をスライムに包まれていた。




何故スライムが身体を包んでいたかと言うとそれは簡単で、俺が自分でスライムに身体を包ませたのだ。そうすればもしかしたら溶けて死ねるのでは、と思った。全身がスライムに包まれていれば、寝ている間にジワジワと肉体は溶けて二度と目覚めることはないかもしれない。そう考え、寝る前にスライムを五十匹程集めて、全身に被って眠ったのだった。


…あと、単純に柔らかくて寝心地が良かった。


結局、目論見は失敗してしまった訳だが。毛の先がスライムに食われる片っ端から、再生していくような感覚がある。皮膚に関しては【頑健EX】のお陰か、溶けて破れる様子すら無い。まだ小さい頃に手の平に乗せた時なんか、ものの数十秒で皮膚を破られてそのまま血を吸われた。それが今はただひたすらに柔らかくて気持ちいい。スライムでは力不足なのだ。


仕方ない、スライムで死ぬのは諦めよう。だけどこの眠り方は中々良かったな。夜になると活性化するボーンウルフにも襲われた形跡が無い。今後も野宿の時はこうしようか。


俺は横になっていた身体を起こすと、全身を包むスライムを剥がした。ボタボタとスライムが地面に落ちていく。と、半分程剥がしたところで飛んでもないことに気が付く。




「え………………」




俺は全裸だった。身体に何も身につけず、靴すら履いていない状態だ。生まれたままの姿だ。何でだ。


いや、分かった、スライムだ。俺の身体は一切溶けなかったが、身に付けていた衣服だけは全部食われてしまったのだ。しまったな…スライムめ、なんて事をしてくれるんだ。


ボーッと考えている場合じゃない。どうしようこれ。街へ行こうにも、服が無ければ一歩踏み入れた時点で速攻で捕まってしまうだろう。村から出る時はすぐに死ぬつもりだったので、荷物なんて無いし勿論替えの服だって無い。




取り敢えず残りのスライムを全て剥がした。どうしようかな、葉っぱで大事な所だけ隠せばいけるか…?と、近くの茂みで手頃な大きさの葉を探していると、後ろから足音がした。


「ん?」


振り向くと、少女がいた。

茶髪のショートの髪で目も茶色。皮の鎧を身に付けていて、リュックみたいな物を背負っている。腰には小さな袋と短剣を差していて左手には盾を持ち、右手には剣が握られている。どうやら驚いて固まってしまっているようだ。




「…………………………」

「…………………………」


少女と目が合ったまま無言の時間が続く。

やばい。不審者だと思われる。

まんま不審者なんだけど。

なんとかしなくては。


十秒位経った頃、少女が口を開いた。


「き………………………」

「き?」


き…?きって何だろうか。『きてください、この服を』?どの服だろう。そう都合の良い解釈をしていると少女は更に口を開き、




「きゃあああああああああああああっ!!変態!!!!」

「!?」


変態!?

誰が変態だ!いや俺か!


全裸で見つめていたらそりゃあ変態だと思われるだろう。少女は俺のいる方向とは反対側に走り出した。やばい、人を呼ばれる。場合によってはギルドに通報される。


「ちょっと待って!」


俺も全裸のまま走り出す。折角良いタイミングで人に会えたのだ。どうにか誤解を解いて服を分けて貰いたい、その為になんとか少女と話をしたかった。どうやら俺の方が速いようで、少女の姿が少し近づく。


「お願いします!話を聞いてください!!」


「わ、『わたしをみてください』!?いやああああああああ!!露出狂の変態いいいい!!!!」

「なんで!?」


よりにもよって今、その聞き間違い方は無いだろ!




「きゃあっ!?」


しばらく追いかけっこをしていると、少女が石に躓き転んだ。俺は走る速度を落とし、やがて歩きながら少女へ近づく。少女はこちらに身体を向け、尻もちを付いた格好になっている。


疲れた、息切れが凄い。この少女、めちゃくちゃ走るんだもの。俺にはスキルの補正もある筈なのだが、少女はそれを上回るスタミナを持っていた。だが、限界まで走った事で分かった事もある。死ぬことは無くても体力は一応消費するんだな…


まだ息は整えられていないが、これ以上少女を怖がらせることの無いように、出来るだけ笑顔で話しかける。


「はぁ…はぁ………あの…へへ、はぁ……ふ、服を…はぁ……服をくれませんか…?…はぁ……」

「ひいいいいいいいいいい!?!?!?」


少女が凄い勢いで後退った。

何でだよ。めちゃくちゃ笑顔だったのに。


…そう言えば俺は演技がめちゃくちゃ下手だったな…よくアリスに怒鳴られていたし、そのせいか。よし、小細工は無しだ。誠実にお願いしたら聞いてくれるはずだ。まずは息を整える。




「あの、服をください」


少女の目を真っ直ぐに見て、単刀直入に伝える。


「ふ、服を渡せば見逃してくれるんですか…?」


見逃す?…盗賊か追い剥ぎか何かだと思われたんだろうか。まあ大声を出しながら転ぶまで追いかけ、挙句の果てには服を要求するのだから、俺はもう盗賊なのかもしれない。


「うん、一着分けてくれるだけでいいんです。それだけです。何も危害は加えません」

「…わ、分かりました…それで見逃してくれるんだったら…」


そう言うと少女は立ち上がり、持っていた剣と盾を地面に置き、更に背中に背負っていたリュックを下ろした。良かった、これで何とかなるぞ…そう思って少女の様子を見ていると、何故か身につけている鎧を外し始めた。


「…え?何やってるの?」

「…よ、鎧を外さないと脱げないんです。す、すぐに脱ぐので見逃してください…!」

「は!?」

「ひいっ!?す、すぐ脱ぎますからっ!」


ちょっと待った、想定外の答えが帰ってきたので思わず『は!?』って声が出てしまった。もしかしてその一着しか無いのか!?


「待って!?それ以上脱がないで!?」

「ひいいっ!ち、近づかないでください!」


ドゴッ!


「ぐほっ!?!?」


つ、強い。

慌てて脱ぐのを止めようと近づいたら腹を殴られ、衝撃で何歩か後ろに下がってしまった。俺には【頑健EX】がある筈なのに、それを貫通するこの威力。何故こんなパワーを持っているのに、俺みたいな変態に屈しているんだ…いや、変態じゃないが。


少女は手際よく鎧を外し終わると、上半身に身に付けていたシャツをスっと脱いだ。シャツの下からは白い肌が覗き、そしてシンプルな下着に包まれた豊かな胸が現れた。うわぁ…着痩せするタイプなのか、大分デカかった。いや見てる場合じゃない。


「それ以上は駄目だ!お願い聞いて!」


俺は叫ぶ。が、少女は顔を真っ赤にしながら下半身に身に付けていた短パンを脱ぐ。何で!?真っ赤になる程恥ずかしいなら脱がなくて良いんだって!


何とか止めようと思い、もう一度少女に近づく。


「っ!?いやぁっ!!」


ドゴッ!ドゴッ!


「ごはぁ…っ!」


腹に良いのが二発入った。めちゃくちゃ痛い。俺は思わず膝を着いてしまった。


少女の方を見ると、短パンを脱ぎ終わっていた。上の方とセットなのか、同じ色のシンプルな下着が見える。そして、一瞬目を瞑り全身を震わすと、覚悟を決めたような顔で上の下着を外しにかかった。


「だ、駄目だ…それ以上は…」


俺は必死で手を伸ばす。しかし…


「……っ!」


上の下着を脱ぎ終わると、少女は右腕でその豊かな双丘を隠した。しかし大きすぎて全然隠れて無いし、一瞬見えてしまった。ああ、くそ、ご馳走様。


少女は泣きそうだ。真っ赤な顔しており、目元には涙が溜まっている。そしてまた目をギュッと瞑ると、左腕で下半身の下着の紐に手を掛けた。俺は腹の痛みを堪えて走り出す。


「…おい!もういいって!そこまでで───ぐふっ!」


三度腹を殴られた。どうして…そこまで頑なに脱ごうとするんだ…絶対君の方が強いって…


俺は少女から何歩か離れた所で、腹を抑えて蹲った。同じところばっかり殴られたので、痛みが中々治まらない。


そして俺の努力の甲斐も無く、少女は下着を足から外すと全裸になってしまった。

顔を真っ赤にして俯き、右下当たりを見ている。身体は恥ずかしそうに左手で下を隠し、右腕で上を隠していた。


ああ、どうしてこんなことに…

俺はただ、服を分けて欲しかっただけなのに…


そこには外された鎧や剣と盾、リュックと脱ぎ散らかされた服、そして全裸で立つ少女と全裸で蹲る男がただ無言で存在していた。

なんだこれ。




「おーい、リタ!何か悲鳴が聞こえたけど大丈夫………って」


そんな空間に、少女の知り合いらしき誰かがやって来た。短く纏めた赤い髪に赤い目を持つ少女だ。良かった。これを何とかしてくれ。痛みが治まらない腹を抑えながら、俺は少女に望みを託す。




「…………何これ。…………どういう状況よ?」




俺が聞きたいよ。


また前作の話なんですが、「冒険」のキーワードを設定したまま忘れていました。当初は前作のもっと早いタイミングで話を進めようと思っていたので、そうなってます。完全に詐欺でした。

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