えんぴつくん
「あれ?どこいっちゃったんだろう」
女の子はえんぴつ立ての中をのぞき込んで、そう言いました。
その中には本当は小さなえんぴつがたくさん入っているはずなのです。
けれど長いえんぴつはたくさんあるのに小さなえんぴつが一つもないのです。
「おかしいな」
今までずっとえんぴつが小さくなる度にからんからんとえんぴつ立てに放り込んでいたのです。
ついさっきまた小さなえんぴつができたので、またからんと入れようと思ったのです。
けれどからからと音を鳴らして奥までのぞいても、今まで入れた小さなえんぴつは見つかりません。
「うーん、わかんないや」
なぜかはよくわからないけれど、ないのは仕方がありません。
女の子は新しくできた小さなえんぴつをからんと一つえんぴつ立てに入れました。
えんぴつ立てにはたくさんの長いえんぴつと一つだけの小さなえんぴつが入っています。
女の子は小さなえんぴつの代わりに長いえんぴつを一つ取ると筆箱にしまいました。
そして明日の学校の用意をして、ベッドに入って眠るのです。
夜中、小さな物音で女の子は目を覚ましました。
机の上から何か物音が聞こえてきます。
かたかたことことからからと何かが動く音がします。
女の子はそうっと机の上を見てみました。
するとそこには小さなえんぴつ達がたくさん集まっていました。
びっくりした女の子はわあと大きな声をあげました。
「わあ!びっくりした!」
小さなえんぴつ達も声をあげてびっくりします。
からからことこと。
小さなえんぴつ達は音を立ててどこかへ隠れようとしています。
よく見ると何本も集まった小さなえんぴつ達は、女の子が知ってるものでした。
「あれ?みんなわたしのえんぴつだ」
そう女の子が言うとえんぴつ達の動きがぴたりと止まりました。
「うん、そうだよ。ぼく達みんな、きみが使ってたえんぴつさ」
えんぴつ立てから居なくなったえんぴつ達はみんなここに集まっていたのです。
「みんなこんなよるになにしてたの?」
女の子はえんぴつ達に聞きました。
「ぼく達、新しいえんぴつになりに行くんだ。みんなでえいって集まって、新しくって長いえんぴつになるんだ!」
かたかたからから音を鳴らしてえんぴつ達はそう言います。
もう短くなって使われなくなったえんぴつ達はみんなそこで新しいえんぴつに生まれ変わるのです。
「ぼく達、またきみのとこに帰ってくる。だから待っててくれる?」
えんぴつ達は女の子に聞きました。
「うん。まってるよ」
女の子はその答えを聞いた小さなえんぴつ達が笑ったように思いました。
そうしてことことからからとえんぴつ達はどこかへ行ってしまいます。
女の子は少しさみしくなったけどえんぴつ達にばいばいしました。
そしてもう一回ベッドに戻って眠ります。
女の子が朝起きると、机の上には見たことのないまっさらなえんぴつが一本、置いてありました。
昨日の夢はきっと夢ではなかったのです。
女の子はまっさらなえんぴつを削るとえんぴつ立てに入れました。
また小さなえんぴつができた時にはこの長いえんぴつを使うのでしょう。
「また、よろしくね」
女の子は笑って学校に行きました。
それに応えるようにえんぴつ立ての方からはからんと小さな音が聞こえてきました。
おしまい
自分が小学生の時に妹に話してたお話のうちの一つです。ちょうど同じようなできごとがあったのでそれをお話にしたような覚えがあります。さすがにどんな言い方だったかは忘れたので内容だけ同じにして書き直してますが、当時の懐かしさを残したくて全部にふりがなをつけてみました。読みにくかったらごめんなさい。