第4話
秋の一大イベントだった文化祭も終わって、学園生活はいつもと変わらないものに戻ってしまった。文化祭前後で変わったことといえば、アクツくんと少し仲良くなったっていうことくらい。前は友達の友達って感じだったけど、今ではフツウの友達くらいの感覚で顔を合わせれば話をするようになった。
アクツくんは何と言うか、お調子者だけどロマンチストで、気安いんだけど気難しいところもある。秋風の気持ちよさに誘われて訪れた放課後の屋上でアクツくんを見た時、改めてそんなことを思ったりした。アクツくんは一人、フェンスに背中を預けてギターを手にしてる。だけど弾く気はないみたいで、指は動いてない。
アクツくんはいつも、友達の誰かしらと一緒にいる。アミもしょっちゅうアクツくん達と一緒にいるから、私も何となくアクツくん達と過ごす時間が増えた。だけどふと、気がつくとアクツくんがいなくなってる時があるんだよね。そんな時は大抵、アミがアクツくんを探しに行く。さっき廊下で会ったときアミが探してたから、今もきっと友達の輪から抜け出してきたんだろう。
きっとアクツくんは、誰にも話しかけられたくなくて人気のない屋上に一人でいるんだろう。そんな風に思ってしまうのは、どうしてだろう。私にも似たようなところがあるからかな。ま、いいや。せっかく屋上に来たんだし、私は私で一人の時間を満喫しよう。
屋上に出た途端にアクツくんと目が合っちゃったけど声をかけずに、彼がいるのとは反対側のフェンスの方に移動する。こうすれば屋上の出入り口が衝立になって、お互いに姿が見えない。私の目の前には暮れ行く街並みが広がってる。ああ、やっぱり、キレイだなぁ。
「……シカト?」
後ろから声がしたから振り返ると、アクツくんが立ってた。逆光で顔がよく見えないけど、声に明るさがない。まあ、目が合ったのに素通りすれば、シカトと言えばシカトなのかな。
「うん。シカト」
「そうハッキリ言うなよ。傷ついただろ」
「え? ご、ごめん。今は話しかけられたくないかなーと思っただけで深い意味はなかったんだけど」
私の解釈を聞いてアクツくんが何を思ったのかは分からなかったけど、彼は無言で歩み寄って来た。そのまま、アクツくんは私の横にどかっと腰を下ろす。それきり話しかけてくるような雰囲気もなかったので、きっとまたロンリータイムに突入しちゃったんだろう。
あーあ、太陽が沈んじゃった。寒くなってきたし、そろそろ帰ろうかな。さすがに帰りくらいは一言かけようと思って、隣にいるはずのアクツくんを振り返る。そしたらアクツくんもこっちを見たみたいだった。
「お前さぁ、今度の日曜ヒマ?」
「うん?」
急に話を切り出されたので返事になってない返事をしちゃった。アクツくんの真意が分からなかったので、しゃがみこんで視線を合わせてから答える。
「ヒマだけど、何で?」
「遊園地、行かねえ?」
もう太陽が沈んじゃってるので、近くにいてもアクツくんの表情は分からない。でもこれは多分、皆でってことでしょう。
「アミたちも行くんでしょ?」
「横田は行く。でも他の女子は抜き」
アミは行くのに、いつも一緒にいるサチやレイナは抜き? それって、何かおかしくない?
「何で?」
「何でも。それより、行くのか行かないのか決めろよ」
「行く、行くよ」
なんか腑に落ちないけど、アミが行くんだったら行ってもいいよね。そんな軽い気持ちで返事をしたら、アクツくんはもう用はないとばかりに立ち上がった。別れのアイサツもなしに去って行ったけど、何だったんだろう。
っていうか、集合場所も時間も聞いてない。まあ、どうせ明日も会うだろうからいいか。さてと、本格的に寒くなってきたので私も帰ろう。




