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for a girl  作者: sadaka
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第16話

 アッキーと仲直りして、夏休みが明けて、平穏な二学期はあっという間に一ヶ月が過ぎ去った。十月に入ると、うちの学校は文化祭の準備で慌しくなる。校舎全体を覆うような、独特の熱気。また、この季節が来たんだね。ってことは、アッキーたちと知り合ってから一年も経ったんだ。色々なことがあったせいか、時間が経つのってあっという間だった。入学したのがつい最近のことのようなのに、あと一年半で卒業かぁ。

「またこの時期が来たね」

 同じことを考えてたみたいで、あちこちで文化祭の話題が飛び交ってる廊下を歩きながらアミがそう言った。祭りの後はちょっと物悲しい気分になるけど、やっぱり早く来てほしいよね。うちの文化祭、楽しいから。

「そういえば、アッキーは今年も歌うの?」

 去年は私へのあてつけのために即席バンドまで結成して歌ってた。でもクラッカージャックのメンバーが同じ学校じゃないから、文化祭ではオリジナル曲が歌えないみたいなんだよね。コピーバンドでも楽しかったって言ってたけど、今年はどうだろう。

「頼まれてはいるみたいだけど、アッキーがどうするのかは知らない」

 アミもそんなこと言ってるくらいだから、やっぱり歌う気はないのかな? ステージに立つんだったら、きっと皆には言うはずだもんね。アッキー、目立つの好きそうだから。

「そういえば、マチは? 今年もバイト、やるの?」

 アミに訊かれて、思い出した。そっか、去年みたいにバイト頼まれることもあるかもしれないんだ。急だと予定も立たなくなっちゃうし、前もってハルちゃんに確認しておいた方が良さそうだね。今年もアミと模擬店食べ歩きする予定だし。

 もうちょっと学校で喋っていくというアミと別れて、一人で帰ることにした。まあ、帰るって言ってもハルちゃんのお店に寄り道してからだけど。気持ちのいい秋晴れだから、金木犀の香りを楽しみながらのんびり歩こうかな。暑くも寒くもなくて、この時期は本当に気持ちいいよね。

 あ、下駄箱でアッキー発見。体勢からすると誰かを待ってるみたいだけど、ヒマそうにしてるから声かけちゃえ。

「アッキー」

「おう」

 返事はしてくれたけど不機嫌そう。またロンリータイムなのかな? だったら長居するのも悪いよね。

「じゃ」

「ちょ、待て!」

 手を振りながら素通りしようとしたら、慌てた様子で呼び止められた。あれ? ロンリータイムじゃなかったの?

「素通りするかな、フツウ」

 私にも聞こえるくらい大きなため息をついて、それからまた不機嫌そうな表情に戻る。アッキー、百面相。どうしたんだろう?

「ちょっと来い」

 ぶっきらぼうに言い置いて、アッキーは校舎の外に向かって行った。もしかして、アッキーが待ってたのって私だったのかな? 来いって言ってるから、何か話があるのかも。

 無言で私の前を歩いてたアッキーは人気のない裏庭で足を止めた。この辺り、金木犀が植えられてるからすごい匂い。まるで花束に埋もれてるみたいだね。って、ちょっと詩人っぽいこと考えちゃった。

「お前、この間トモたちと遊んだだろ?」

 金木犀を背に振り返ったアッキーが、真顔で話を切り出した。うん、遊んだよ? でも、それがどうしたんだろう?

「何でオレを誘わねーんだよ」

 そういえば、あの時はアッキーもアミもいなかったなぁ。でもそれは、アッキーに声をかけなかったからじゃない。

「誘ったじゃん。レイナが」

 レイナが電話して呼び出そうとしたけど、アッキーは忙しいって言って断ったのだ。それで何で、私が怒られるんだろう? 私は首を傾げたけど、アッキーの不機嫌はまだ直らない。

「オレが言ってんのは、何でお前が誘わないんだってこと! お前がいるって知らなかったし」

 後半はゴニョゴニョ呟いてたから、何て言ったのか聞き取れなかった。でもアッキーが何で怒ってるのかは何となく分かった。だけど、そんなこと言われても。

「だって、私が誘ったら来ないんでしょ?」

「は?」

「もう誘うなって言ってたじゃん」

「オレが? いつ?」

「前に家まで送ってくれた時。次誘ったら容赦しないとか言ってたから」

「あ、あれは! そーゆー意味じゃねーだろっ!」

 アッキー、顔を真っ赤にするくらい怒ってる。もしかして私、意味を取り間違えた? でも、だったらあれはどういう意味?

「……もう、いい」

 またしてもアッキーにため息つかれちゃった。最近ため息多いなぁ、アッキー。

「とにかく、あれは誘うなっていう意味じゃねーから。遊びには誘えよな」

 諦めたような表情をして、アッキーが私を諭すように言う。そんなこと言うくらいだからアッキー、拗ねてたのかな? 子供みたいでカワイイなぁ。

「じゃあ、今誘っていい?」

「今?」

「うん。アクア行きたい。パフェ食べたい」

「……食い気優先かよ」

 何故か遠い目をしながら、それでもアッキーは頷いてくれた。なんだ、誘っても良かったんだ。だったらアッキーと一緒に行きたい場所、いっぱいあるよ。カラオケとか、ショッピングとか遊園地……は、やめておこうかな。

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