勇者召喚の巫女(その後の妹)
リクエストあった巫女の妹側のざまぁ?
因みに、リクエストは何でも受けている訳では無く、それらしい話を思い着けたものだけ書く事にしています。
勇者様が魔物の腹に消えて、私は暫く呆然として居ました。
この程度のモンスターに勇者様が殺されるなんて、有り得ない。
それなのに、何故?
何故?!
強い衝撃を受け、私は地面を転がったようだ。
叫びたいほど痛いし、動けない。
このままじゃ、死ぬ。
死ぬ?!
嫌! どうして、私が!
どうして、勇者様が!?
有り得ない! 有り得ない有り得な……!
あれ? 痛くない?
どうして?
傷が治った訳じゃないみたいなのに。
死に行く私への神様の慈悲かな?
でも、何故?
私は、勇者召喚を行う巫女の一族なのに。
私が死んだら、もう、勇者を召喚出来ないのに。
そもそも、魔王を倒す為に召喚された勇者様が何故、死ぬの?
神様は、どうして、守ってくれなかったの?
これまで、途中で命を落とした勇者は居ない。
それなのに、何故?
今回に限って、何故?!
私の時だけ、何でなの!?
不意に、脳裏に姉さんの姿が浮かんだ。
戦う力も無いのに、勇者様に同行すると言い出した姉さん。
小さい頃から、母さんに聞かされた歴代の勇者と巫女の物語の影響だろう。
何時も、巫女は勇者と共に旅をした。
だから、身の程知らずにもそんな事を言ったのだ。
ブスのくせに!
勇者様が迷惑しているのが、解らないの?!
足手纏いのくせに!
勇者様は、姉さんを守る為に居るんじゃない!
勇者様が優しいからって、勘違いしないで!
私の姉じゃなかったら、相手にして貰えやしないのよ!
何度、怒鳴ってやろうと思ったか。
王都を離れるにつれ、魔物はどんどん強くなって、それなのに、姉さんは何時までも戦えないまま。
だから、勇者様達に「置いて行きましょう」と言ったの。
優しい勇者様は、私の姉だからと躊躇ったようだけれど、最終的には同意してくれた。
私達は、姉さんを置いて先へ進んだ。「村が近くにあるから大丈夫でしょう」と言い捨てて。
それから、暫くして、勇者様と言葉が通じなくなった。
私達は、魔王の手の者が魔法か何かでそうしたのだと気付いて、辺りを探した。
そして……。
獣の息遣いが、間近で聞こえる。
何か食べているみたい。
ああ、そうか。
食べられているのは、私か。
何でかなあ?
勇者様が、魔王を倒して、世界が平和になって。
私達は、皆に称えられて。
祝福されて、勇者様と結婚する筈だったのに……。
『勇者様は、巫女を守って戦ったの。だから、魔王を倒せたのよ』
母さんの言葉を思い出す。
何度も聞かせてくれた勇者様と巫女のお話の最後は、必ずこの言葉で締め括られた。
母さん。
そう。母さん。
どうして、私じゃ無かったの?
きっと、姉さんが巫女だからこうなった!
何も出来ない……巫女に相応しく無い姉さんが召喚したから、神様を怒らせたんだ!
私が巫女だったら、良かったのに。
巫女になりたかったのに。
ねえ、母さん。
母さんの所為よ。
私を巫女に選ばなかったから。
だから、姉さん……。私、悪く無いよ………ね?
勇者視点は書きませんので、最後に勇者様から一言。
勇者「結婚するなんて、言っていない……」