風車
ひだまり童話館「くるくるな話」参加作品です。
僕もいつかは……
僕は小学校三年生。遊ぶのは大好き! タイヤを跳び箱みたいに飛ぶのも、ジャングルジムも、うんていも好きだ。
でも、ただ1つできないものがある。それは鉄棒。
体操の選手が鉄棒を回っているのを、僕はテレビで食い入るように見つめる。
あんなふうに回れたら気持ちいいだろうな。
僕たちの小学校で体育の授業ももちろんある。鉄棒も。順番に逆上がり。僕も逆上がりくらいはできる。
でも僕がやりたいのは、「風車」。
足を鉄棒でまたいでくるくる回る。だから、「風車」。
休み時間になると、みんな校庭に出て遊び始める。
「功太! 来いよ!」
呼ばれた先には友達と鉄棒。
どうしよう。
「功太ー!」
よし! やってやる!
「今日は風車だ!」
「え、お前できんの?」
僕が言うと、友達はびっくりしている。
「できるよ!」
僕は鉄棒にまたがった。
くるん、どさっ
「できねーじゃん」
僕はくやしかった。次はできるようになりたい。
それから僕の特訓は始まった。放課後、みんなが帰ったあとに、風車の練習をした。
「ダメだ……」
僕は泣きそうになった。
「諦めるの?」
いきなり頭の上から降ってきた声。
僕が顔をあげると、夕日を背にしたお兄さんが立っていた。
「あきらめるわけじゃないよ。今日は終わりってだけ」
僕は強がりを言った。
「教えてあげようか」
お兄さんは僕に言った。
「できるの?」
「出来るよ」
「さあ、鉄棒を握ってまたがって」
僕はお兄さんに言われるままに鉄棒にまたがった。
「押すよ。そのまま手を離さないで」
お兄さんは僕を押した。僕はびっくりしたけど、鉄棒を離さなかった。するとお兄さんが下から僕をくるんと押し上げてくれた。
「出来るじゃん」
僕は一回回れた!
「お兄さん、もう一度!」
「いいよ」
おなじように僕はくるんと回った。その勢いで二回回った。
「やった!」
「良かったね。じゃあね」
「お兄さん、ありがとう!」
そのつぎの日の休み時間。
「鉄棒やろう!」
僕は自分からみんなを誘った。
「功太、風車できねーじゃん」
「できるよ!」
僕はお兄さんに教わった勢いでくるんと回った。
「功太! すげー」
やった! 僕にもできた!
僕はじゅうじつかんっていうの? それにつつまれて家に帰った。そしてテレビをつけると、体操の大会をやっていた。
「あ!」
僕に風車をおしえてくれたお兄さんがテレビ画面に映しだされた。お兄さんは鉄棒をくるくると回って着地した。
「すごい!」
あのお兄さん、体操の選手だったんだ。
また会えるかな。
僕はテレビに向かって言った。
「ありがとう!」