選ばれし魔法使い
「はぁ。誰にも会いませんように」
折角映画館に来たというのに、慢性的に沈んだ私の気分は晴れない。今は学校帰り。街を歩けば誰かが使っている人気シリーズのリュックを背負って手にはランチバッグ。典型的な量産型女子高校生って自覚はあるのだけれど、周りと違うことに不安を覚えるから仕方ない。大人の格好いい女性ってものに憧れはあるけれど、とても目指せない。このまま行けば私は量産型のままありきたりのOLになるだろう。
高校に行くのは義務ではないけれど、実際は行かないと生きていくのが大変で実質義務教育。最近では大学にも行かないといけないらしい。普通であるのも大変だ。今の私は志がろくにないまま1人相撲をしているような気分だ。
高校受験の時、
「高良、高校でやりたいこと探すのも良いと思うぞ。」
と中学の教師は言っていたが、現実の高校は理系文系決まっている前提どころか志望学部学科まで決まってるまでが前提だ。そして、考える時間を与えるまいと、文武両道と部活動を強制し、課題を山積みにしてくる。
相談室で進路について相談受け付けますって言ってもそれは入る大学についてであり、何かに興味があることが前提のようなものだ。特に何にも興味がないけれど、何か興味を持つきっかけそのものを探している私はどうしたら良いのだろう。
親もどこの大学が良いとか悪いとか目先の受験のことばかり意見を押し付けてくる。何となく親に勧められた大学を志望大学にしているけれど私は大学に入って何をしたいのだろう。看板貰って終わりというのは何だか虚しい。でも実際そうなりそうなのだ。
なんて頭の中では友達との中身の無い下らない会話ばかりしている片隅で考えている。そもそも頭の片隅で何かを考える余裕のある程度の会話しかしない相手とは果たして友達なのかすら怪しい。
その証拠に週一でしか活動の無い茶道部って共通点でつるんでいる友達とは学校には内緒でバイトをしていると嘘をついて、干渉されすぎないようにある程度距離を取っている。
こんなことで良いはずがないのに、結局このままズルズル来てしまった。本当は恋愛だってしてみたいし、気になっている男の子だっている。
まぁ、ぐずぐず考え事してても仕方ない。今日は映画を楽しもう。
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キャラメルポップコーンLサイズにメロンソーダLサイズ。カロリーは高いけど至福だ。劇場の中にはまだ人がまばらだ。子供はあまりいなくて、平日だからか1人で来ている人が多い。年齢層は児童書の映画化なのに少々高めなのが不思議だ。
スクリーンに映るのは"選ばれし魔法使い"。児童書なのに超長編で、世界中で大ヒットしたイギリスの女性作家の作品を映画化したものだ。原作は小学生の頃からのファンで何度も読み返した。
魔法が題材の実写映画だとコスプレ大会のような空気感でなんだか興醒めしてしまうような作品も多いが、この映画は莫大な制作費がかけられているだけあって、まるで本当に魔法が存在すると錯覚してしまうような出来だ。今回は最終章の前編だが物語のクライマックスにつながる盛り上がりで興奮した。
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「ふう。」
単なる映画終わりの余韻のせいかもしれないが、なんだかもやもや考えていたのが馬鹿馬鹿しくなってきた。今度はあいつを連れてこよう。デートとは思われたくないから、単に映画見るのに1人だと寂しいからってことにしようかな。




