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Nomal Theater  作者: 紫
4/7

小人の少女

 日曜で明日仕事だというのに今日も休めない。無念だ。


「パパ、ポップコーンとジュース買って!花音、キャラメルが良い!」

「はいはい、琴音は何が良いのかな。」

「ことちゃんはねー、ことちゃんはねーえー、バターのが良い!」

「そっかぁ、ジュースはどうする?」

「花音ファンタ!」

「ことちゃんはオレンジジューシュ。」

「じゃ、一緒に並ぼうね。2人とも手を繋いでくれるかな?」

「分かった!」

「うん!」

「よしよし良い子。」


 ふう。夫婦共働きの我が家は、こうして週末俺が娘達を外に連れ出している間に溜まった家事を妻の夏希が片付けるというのが最近多いパターンだ。


「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか。」

「キャラメルポップコーンとバター醤油ポップコーンのハーフでカップはLサイズ、ファンタグレープとコカコーラとオレンジジュースそれぞれLサイズでお願いします。」

「ただ今"小人の少女"公開記念で、ストローに主人公のアンナマスコットがついたカップにそれぞれ追加200円で変えることが出来ますがいかがなさいますか。」

「ファンタグレープとオレンジジュースだけお願いします。」


 混み合ったスナック販売コーナーの向こう側ではアルバイトの若い女の子と男の子が忙しくしている。忙しくって辛いはずなのに彼らは弾ける笑顔で仕事をしている。若いって良いななんてこの歳で思うことになるとは。


 *


 劇場は満員だった。アニメ映画なのだが、アニメ映画の世界的巨匠も所属する人気スタジオが制作しているとだけあって老若男女問わず人が居る。オタクっぽい男性集団から、保護者が真後ろの席に並んで座っている幼稚園児くらいのちびっこカップルまで様々だ。


 "小人の少女"は小人の女の子が人間の男の子と恋をする話だ。絵はだいぶ可愛らしいが構図から某大ヒット巨人漫画を思い出してしまった。一旦そう思ってしまうと止まらない。いつ彼女は食べられてしまうかなんて情緒のないことを思い浮かべたりした。


 序盤はどうしようもないことばかり思い浮かんでは消えていき映画に中々集中出来なかったが、真面目に見ていくうちに主人公に入り込んでいく。

 思えば映画を見たのはいつぶりだろう。結婚前に夏希と恐竜遊園地を観に行ったのぶりかもしれない。結婚してすぐ子供ができて、仕事に追われるうちに映画などとは無縁になってしまった。


 琴音が3歳になってようやく大人しく映画が観られそうだということで今回連れてきてみた。俺よりも子供と一緒にいる時間の長い夏希も俺と最後に観に行ったきり映画なんて見ていなかったのではないだろうか。


 映画を観ている時は子供と一緒にいたとしても映画の世界に引き込まれて日常を忘れ自由になった気分になる。こんな貴重な時間は週末家に1人でいたとしても味わうことは出来ないだろう。

 最近の夏希との話題は子供とかお互いの仕事に関する話ばかりだった。たまには俺の実家に子供を預けて二人で出かけてみるのも良いかもしれない。帰ったらすぐ誘おうか、いや自分の予定を確認したらだな。


「パパ、明るくなったよ。まだ帰らないの?」

「パパ映画観ながら寝ちゃったんじゃないのー?」

「そんなことはないよ、帰ろうか。楽しかったね。」




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