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Nomal Theater  作者: 紫
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銀河戦争

 今日10年と少々勤めた会社を辞めた。この就活が厳しいご時世に幸せなことに次勤める会社も決まっている。転職ってやつだ。転職前に2週間ほど休暇を作った。大学卒業して会社に入ってもサービス残業、サービス早朝出勤の連続でまともに今まで休みが取れなかったから、久しぶりに自由を満喫したいと思ったのだ。


  1年ほど前に久しぶりに同窓会の幹事をすることになったという大学時代の友達から電話がきて近況を報告し合った。


「塩川元気にやってる?」

「まぁな。庄司は仕事どうなんだ。」

「忙しいよ。新しいプロジェクトの責任者を任されてさ。結構規模の大きいプロジェクトだから大阪と東京行ったり来たりだよ。」

「そうなのか。体壊さないように気をつけてな。奥さんのことも放ったらかしたら駄目だぞ。」

「大丈夫だって。あ、そうそう。去年うち娘が生まれたんだ。可愛いぞ。塩川彼女いるか?結婚はした方が楽しいぞ。」

「余計なお世話だ。」

「うちの娘は嫁にやらん!」

「分かっとるわ!ぼけ!」


  自分は専ら聞き手だった。友達は生き生きと仕事や自分の子供の話をしていて、俺はただ義務感で仕事をしているだけという環境を思うと惨めだった。同窓会だって仕事で行けそうもない。このまま俺はこの会社で働き続け、いつ来るかもわからないリストラ、運が良ければ定年を待ち、退職後はボロボロの体で死ぬのを待つのかと思うと悲しくなった。


  少しでも良い環境で働きたい、もし出来るならば結婚もしたい、子供だって欲しい。そう思い転職を決意すると気持ちが前向きになった。

  まだ32歳。今なら間に合う。そう思い就活を始めてみると、元々の環境が地獄だったからか、這い上がりたいと執念を持って取り組んだ結果なのか、覚悟していたよりは早く仕事を見つけることが出来た。


  新生活を始めるにあたって、今まで出来なかったことをしようと学生時代に見た"銀河戦争"のDVDを借りてみると学生時代の思い出が蘇るとともに、"銀河戦争"熱が再燃した。


 *


  "銀河戦争"の最新作はせっかくだから映画館で見ようと来てみたのだが、公開したばかりでしかも月曜割もあるというのに思ったより人がいないものだ。お陰で程よくスクリーンから離れたところにある中央の席に座れた。左右は空いていて快適だ。


  ふと周りを見てみると、この劇場には老夫婦、男子大学生と思われる二人組、丸刈り坊主でエナメルが通路にはみ出た高校の部活仲間と思われる集団がいる。

  皆誰かと映画見に来てるものだな。映画一緒に気軽に見に来れるような仲の人間が1人もいない寂しさを不意に感じる。


「前失礼します。」

「あ、はいどうぞ。」


  俺は前に投げ出すようにしていた脚を引っ込める。急に話しかけられて驚いた。しかも美人だ。歳は俺と同じくらいだろうか。彼女は俺の席から1つ席を空けて左の席に座った。隣でなくて残念なような、ほっとしたような。いや、今日は空いてるのだから隣にわざわざ席を取るのはあり得ないか。


  真ん中の席だから前に人が通ることはないと思っていたが、俺の左側の通路の入り口付近の席に有閑マダム達の団体が座っている。なるほど、通りづらい。


 *


  今回の"銀河戦争"は前回に引き続きシリーズ3人目の主人公が主人公を務めている。登場人物が全員ロボットで、ピコピコ言ってるだけのキャラクターもいるというのに何となく全員の言ってることが分かるから不思議だ。

  相変わらず世界が作り込んであって視覚的な情報量に圧倒される。懐かしのあのキャラがいい歳になっていて自分の年齢をふと感じてしまうが、それもまた良い。


  それにしても映画って良いものだ。特に圧倒的なスケールで壮大なテーマ曲が映画館に響き渡る瞬間が胸にグッと来る。スピーカーが良いのかかなり大音量であるはずなのに耳障りではなく心地が良い。

  映画館は暗いはずなのに、昼だったり明るく照明に照らされていたりする。自分は主人公と共に大地、この場合は宇宙だが、を駆け抜けている。そんな感覚になるのは映画館ならではだ。

  自宅で見ると真っ暗にすることはできても画面小さいし、音も大きくしたら近所迷惑になってしまう。DVDで見たら十分ってことはやっぱり無いよなと今日改めて実感した。


  これから出来たら定期的に映画を見に来よう。そんなことを思いつつ、ポップコーンで軽くお腹も膨れたし軽くラーメンでも食べて帰るか、うまい店ここら辺にあったっけと、電源を入れた携帯で検索しつつ俺は映画館を後にした。


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