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去る者追わずの第0日

「お帰りになられるんですか――さん。しかしどうしてまたそんな急に」


「用件が済んだからです小嶋先生。納得されようとされまいと私どもの気持ちは変わりません」

「1日目ですよ――さん。ご令嬢があなたと当院の門を潜ったのはほんの半日前です。それを急と言わずしてなんと申し上げましょうか」

小嶋先生と呼ばれた男は小さく頷き、一拍おいて彼の話し相手かその娘が心変わりの兆候を見せないか待った。

頭上で終業の鐘が鳴り、その余韻が去っても彼が求めるものは見つからなかった。

背後の鉄扉が仕方なく開き、白く輝く院内に桜の季節の日差しが混じった。


娘を気遣う父親がその場を離れようと歩調を速めた。

「大丈夫だ。あれだけ一生懸命頑張ったお前だもの。もう1年頑張って今度は普通の学校に行こう」

「あんな……あんな薄気味悪いところでなく、普通のところだ。父さんがついている」

小さく頷く娘の肩を抱きかかえた拍子に父親の手から白いパンフレットがこぼれ落ちた。


《明るい校風の当院で光り輝く青春を! ―― 三巴学院》


その宣伝文句に嘘や誇張はなかった。

だが先ほどまで父親とその娘がいた院内に限って言えば、そのキャッチコピーはあまりに誇張が無さすぎた。

床も、壁も、黒板も、全てが光り輝く三巴学院。

そこにはシミひとつ、そして影一つ無かったのである。


第0日 了


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