バレンタインの怪文書
<資料1>
【タカシがログインしました:2月13日21:11】
タカシ:誰もいねーw
タカシ:暇ーw
タカシ:……誰か来いやーw
【ユキがログインしました:2月13日22:09】
タカシ:お前かwwww
ユキ:せっかくインしてあげたのに。落ちるわ
タカシ:ちょww すまんww わるかったwww
ユキ:草うざいw
タカシ:おーい。なんか面白い事ねーの?
ユキ:ないよー。何にもー。
タカシ:チョコくらい作ったらどうなんだよ。お前は。
ユキ:どうでもいいよー。どうせ義理だし。あ。隆史にもあげるからね。義理チョコ
タカシ:楽しみに待ってますわww
ユキ:あー。誰か来ないかなぁ……?
タカシ:俺が相手してやってんじゃん?
ユキ:はいはい。ありがとね。隆史だけだよ。あたしの心を癒やしてくれるのは
タカシ:なんかくっそ適当だなww
ユキ:それにしても進行遅すぎw
タカシ:お前とはしょっちゅう顔合わせてんだ。チャットでそんな話さんわなw
ユキ:言えてるww
【『ユウヤ』がログインしました:2月13日23:04】
タカシ:うぃー
ユキ:ばんちゃっちゃ♪ キタコレ!
ユウヤ:ちゃー
ユウヤ:なんだ? 2人か?
タカシ:みんな忙しいんよ。どいつもこいつも仕事だーってINせんの。
ユキ:さみしくなったよね。このチャットも
ユウヤ:俺もさっきまで仕事してたんよw
タカシ:うへー。大変だねー。おまわりさんは。
ユキ:暇なんはあたしらくらいかw
ユウヤ:いっその事、お前ら付き合っちまえ。お前ら2人とも地元だろ?
ユキ:嫌だ。こんな奴
ユウヤ:ひっでーwww
タカシ:ゆきちゃんや。流石に傷付くぞ?
ユキ:祐也ならいいよー。郷に帰っておいで?
ユウヤ:おーおー。有り難いこっちゃ。
ユキ:うわ。冷たい。
【『明智警視』がログインしました:2月13日23:11】
ユキ:お! 相棒も到着かぁ! 久しぶり!
タカシ:誰だw 明智警視ってww
ユウヤ:お前は一々HN変えてんじゃねぇww
明智警視:ネタが切れそうで困ってる
ユキ:www
タカシ:さぁ。2人揃ったし、始めようか
ユウヤ:今回のヤマはマジでやばい。聞くな
明智警視:いいんじゃね。別に。大方オカルトなんだしさ
ユキ:なになに!? めっちゃ興味あるんだけど!!
タカシ:詳しく
明智警視:俺も今日、初めて聞いたんだけどなー。
ユウヤ:実際に死人が出てる。やめとけ
タカシ:んな事言うなって! 毎回楽しみにしてんだぞ!? 警視庁捜査一課が漏らす情報の数々!
ユキ:2人とも警視庁だもんねー。すごいよー。口は軽いけどww
明智警視:ここでストレス発散してるだけよー。どっかに捌け口ねぇとやってらんねー。
タカシ:それで暴露早う!
ユウヤ:絶対に誰にも言うなよ?
タカシ:言った事ないだろ? 言ってたら今頃お前ら帰郷してるわw
明智警視:違いねぇw 懲戒怖えww それじゃ始めるぞー。
ユキ:(゜A゜;)ゴクリ
タカシ:緊張感感じねーww
明智警視:……………………。
ユウヤ:おい!
明智警視:え!? 俺!?
ユキ:ww
タカシ:wwwww
明智警視:お前に任せる。俺は現場派だ。頭脳派はお前
ユウヤ:なんかむかつくなw
明智警視:(なんか呪われそうだからなんて口が裂けても言えない)
タカシ:心の声がだた漏れしてるぞww
ユキ:そんなヤツなの? オカルトとか言ってたけど
明智警視:オカルトもいいとこよー。上がそのオカルト信じて緘口令敷いてたんだー。俺らもバレンタイン前日の今日になって初めて知ったんだぞ。捜査も何もあったもんじゃないww
ユウヤ:『バレンタインの怪文書』って呼ばれてる。
タカシ:おっと……。聞こうか……
明智警視:明日は大方全員駆り出されて超厳戒体制なんだとー。今んところ、都内にしか被害者出てねー。
ユウヤ:2月14日の夜。郵便受けに手紙が投函される。一番古いもので確認が取れているものは5年前らしい。5年間で死者は12名。全員が男性。死因はいずれも『原因不明』だそうだ。
ユキ:……は?
タカシ:5年で12人? 単独犯じゃねーの? 2月14日以外にも死んでんの?
ユウヤ:死んでる。その手紙を受け取ってその謎を解明してしまったら、悪霊が殺しに来るんだ……って上がビクビクしてやがるw
タカシ:謎……? なんだそれ? 何の呪いの手紙?
明智警視:だからオカルトって言ってんだろ?
ユキ:手紙の内容は?
ユウヤ:知りたい? 知って解明したら悪霊が殺しにくるかも知れんよ?
タカシ:そんなに解明し易いものなん? 少なくとも12名が解明してんだろ?
ユウヤ:解明した内容を知ってるのは俺らもだw たぶん、怪文書を受け取らにゃ大丈夫ww
明智警視:解明ってレベルじゃねーよww 簡単すぎるw 子どもの発想w
ユウヤ:……だからヤバイんだよ。
明智警視:……だな。手紙を受け取った12人の男が実際に死んでんだからなぁ……。
ユキ:知りたい!
タカシ:おいおい……。マジか……。ユキちゃん『好奇心は猫をも殺す』って言葉を知らないん?
ユウヤ:おー。手紙の写真があるぞー。全文入力したるわ。ただ、解明はしにくいようにしとくぞー。この件に触れたくなけりゃ今の内に落ちとけ?
明智警視:マジで? 晒すの? まぁいいけどw 俺らの恐怖心を少しでも味わえw 俺ら内容も謎も知っちまったから内心ビビってんだww
タカシ:わかったよ。付き合うさー
ユキ:よっしゃ! 隆史偉い! 惚れ直した!
明智警視:謎を謎のままコメントしろよー
タカシ:反応が無い。入力中のようだ。
ユキ:わくわく
ユキ:まだー?
ユキ:はやくー!
タカシ:ユキうるせぇwww
ユウヤ:
『バレンタインですね。レコードを聞きながら淋しく過ごしています。んな事言うなって? ただこの気持ちを知って欲しいだけなの。いつもいつも私は貧乏くじ。んな訳ないって? 歯痒い想いをどうお考えですか? 嫌われたくないって気持ちが分かりませんか? ラストオーダーです。命を大切にしましょう。世界を敵に回しても私の想いは変わらない。のうのうと私を振った貴方は生きている。理解出来ないかな? あんな死に方したくないでしょ? 充分だよ。好き。便利な言葉だね。手紙を送ります。こうするしか道はないから。ロックフェス行ったんですか? 知らないよ!! 似通ってるね。いたずらなんかじゃない。苦しみなさい。熱意は受け取りました。だからお願い。気付いて下さい』
タカシ:レコードってww
ユキ:(読んでる)
タカシ:俺も
明智警視:マジで全文上げやがった。適当に読むだけにしとけよー
ユウヤ:疲れた……。
ユキ:なんか……怖い文章……。
タカシ:支離滅裂だな。何が言いたいんだ?
明智警視:何でも良かったんじゃないかな?
ユウヤ:ヒントになる。それ以上はやめとけ……
ユキ:気付いて下さいって?
明智警視:それ以上は言わんとく
タカシ:うわー。気持ちわりぃ……。やっぱ落ちるんだったわ……
ユウヤ:……なんだ?
ユキ:どしたの?
ユウヤ:なんか、玄関で音がした。見てくる。
タカシ:ちょい! マジでそう言うのやめろ!!
明智警視:今、振り向かない方がいいぞ
ユキ:…………。
タカシ:てめー。殺す。戻ってきたら殺す。憶えとけ
明智警視:www
ユキ:笑えない
タカシ:やばい。しっこ。ユキ、付いてきて?
明智警視:くそわろすww
ユキ:和んだwww 1人で行けw
タカシ:行ってくるわ。ちょーこえぇぇ……
ユキ:あんたのとこなんて悪霊もお断りだってw
明智警視:いってらw
ユキ:ところで小五郎さん?
明智警視:はい。小五郎ですがwww
ユキ:いつ帰ってくんの? あんた去年帰らなかったよね?
明智警視:それ、今言う? 話逸してる? 怖いの? ビビっちゃったん?
ユキ:ん。さすがに怖いよ……
明智警視:やべ。ちょっとキュンときたw
タカシ:おかえり
明智警視:ただいまだろwww
ユキ:おかえり
タカシ:ただいまw
ユキ:ユウヤ遅くない?
タカシ:おいおい……。もうやめろって……。
明智警視:ROM。ちょい電話来た
ユキ:おーい! 祐也ぁー?
明智警視:その祐也と電話中……。
タカシ:どしたん?
明智警視:やばい。俺、祐也んとこ行ってくる。手紙が来たって。マジパニック。それじゃ落ち。
ユキ:……は?
タカシ:ちょい待て!? どーいうこった!?
ユキ:嘘だよね。
タカシ:2人で俺らをドッキリにハメようとしてんだろ。ははは。
タカシ:気付いたら日付変わってんのな……。バレンタインデー……
タカシ:ユキ?
タカシ:何か言えって!!
ユキ:2人とも電話繋がらない……
タカシ:ユキ。あの文章、見んなよ。マジでやばい気がする……
ユウヤ:そんな事言わないで……
ユキ:祐也!!
タカシ:お前! ビビらせんなよー
ユウヤ:じっくり見て?
ユキ:ちょっと! 洒落になってない!
タカシ:いい加減にしろよ!
ユウヤ:洒落でこんな事しないよ
ユキ:なんなの!?
タカシ:お前誰だ!?
ユキ:隆史! あんた何言ってんの!?
タカシ:だってそうだろ?!
ユキ:やねてってばb
ユウヤ:落ち着いて読んで?
ユウヤ:お
ユウヤ:ね
ユウヤ:が
タカシ:殺す! お前殺す!!
ユウヤ:い
ユウヤ:き
ユウヤ:づ
ユウヤ:い
ユウヤ:て
ユキ:もうやめて。ごめんなさい。
ユウヤ:バレンタインですね。
ユウヤ:レコードを聞きながら淋しく過ごしています。
ユウヤ:んな事言うなって?
ユウヤ:ただこの気持ちを知って欲しいだけなの。
ユウヤ:いつもいつも私は貧乏くじ。
ユウヤ:んな訳ないって?
ユウヤ:はがゆい想いをどうお考えですか?
ユウヤ:きらわれたくないって気持ちが分かりませんか?
ユウヤ:ラストオーダーです。
ユウヤ:いのちを大切にしましょう。
ユウヤ:世界を敵に回しても私の想いは変わらない。
ユウヤ:のうのうと私を振った貴方は生きている。
ユウヤ:りかい出来ないかな?
ユウヤ:あんな死に方したくないでしょ?
ユウヤ:充分だよ。
ユウヤ:すき。
ユウヤ:べんりな言葉だね。
ユウヤ:てがみを送ります。
ユウヤ:こうするしか道はないから。
ユウヤ:ロックフェス行ったんですか?
ユウヤ:しらないよ!!
ユウヤ:にかよってるね。
ユウヤ:いたずらなんかじゃない。
ユウヤ:くるしみなさい。
ユウヤ:ねついは受け取りました。
タカシ:だ
タカシ:か
タカシ:ら
タカシ:お
タカシ:願
タカシ:い
タカシ:。
タカシ:気
タカシ:付
タカシ:い
タカシ:て
タカシ:下
タカシ:さ
タカシ:い
タカシ:ありがとう。待ってて。すぐそこに行くから。
ユキ:まだ。まだ足りない。
関係者各位
<資料1>が同一チャット内四名連続不審死事件の死亡者宅のPCに残されていたチャットログである。この連続不審死により、2名が殉職。更には初の女性被害者を出した。
<資料2>は不審死Aの自宅に残された封筒の写真である。開封はされていない。
<資料1>から判るように、バレンタインの怪文書は進化、拡大を見せている。
この件により、本日18時以降に予定していた特別厳戒体制は中止する事とする。
口外は論外である。自身の命を守れ。この件については文字に興すな。いかなる文書での遣り取りも危険であると判断する。
怪文書が届いたらすぐに破棄するよう、一般市民には周知するのみとする。
以後、バレンタインの怪文書についての捜査資料は全て、封印する事とし、捜査を終了とする。
以上
執筆サークル『丹尾色クイナ』のバレンタイン短編、書簡体企画。クイナでの作品名『四通の文書』で書いた作品をシングルカットさせて頂きました。
私、作品数が少ないので……。。
書簡体企画の作品なので地の文はありません。
縦書き部分はクスッと出来る文章に留めておきました。