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人間軍vs朱鷺宮 梓 その1

 北から攻めてる軍の前に立ちふさがるのは巫女。

「なあ、あれって朱鷺宮さんじゃね?」


 その容姿を遠くから眺め、ザワつく召喚者達。

 人気者であった梓も異世界に飛ばされていたのか? なんで、自分達を邪魔してるんだ?


 そう混乱し、隊長が進軍の号令を出しても動かない連中に、一般兵もどうするべきかわからなくなっていた時、一人の呟きで流れが変わった。


「え、敵っていうんなら……捕まえたら何しても……?」

 その呟きはどんどん広がっていく。


 人気者であるが故、恋い焦がれる者や憧れる者は大勢いたが、戦争中の異世界……無秩序が跋扈(ばっこ)している状況に、脳の処理が追いつかず、本能で動こうとしていた。


 無論、召喚された国の王が、意図的にそうなるよう誘導していったのだが、平和に過ごす人間は拒絶できなかった。

 それを知っている隊長も声高に叫ぶ。


「魔王の首をとったヤツには、あの女を好きなだけ貸し出してやる!」

 前の方にいた召喚者達、全員にその声は響く。


 異様な熱気と爆音の喚声が上がり、完全に掌で転がしてると証明した隊長は、梓を無傷で捉えるよう命令を下す。

 それと同時に、何人もが突撃していく様は押し寄せる波のようだった。


 軍の中には女子生徒もいるが、絶対数が少ないために、反論したら自分がどういう目に遭うか想像して、人身御供に差し出したのだ。


 梓は迫り来る人の波に慌てず、半身で腕を前後に構える。

 だが、手には何も持っていないため、気でも狂ったのだろうと気にせず特攻した連中が、急に倒れて苦しみ、叫び声を上げ始める。


 この場でそれを理解しているのは、梓のみ。

 つがえていたのだ、弓を。

 その和弓は、気を練り上げて作り出したもので、物体として存在するわけではない。


 物理的な防御は意味をなさず、射られた矢は想う通りに分裂し、魂を撃ち貫かれた結果が、今の人間軍の有様となっている。



□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



 朱鷺宮家は代々、現実世界とあの世を結ぶ霊道の守護者であった。


 しかし六年前、梓が十歳の頃に(いにしえ)の鬼、酒呑童子の復活とそれに伴う百鬼夜行の再来。


 ただ人を驚かせ、苦しませ、陵辱し、殺し、嬲るだけの存在により、霊だけではなく生身の肉体を持つ人間も人知れず現世から消し去られるという異変が起こっていた。


 その酒呑童子率いる百鬼夜行と戦う和魂(にぎみたま)の一員として、梓は戦いに身を投じていたのだ。

 神童と崇められた才能は、歴代の天才と呼ばれる者達を軽く一蹴できるほどであり、退治した敵の数を数えきれる事は出来ないと周囲に言わしめる程。


 彼女こそ、最終決戦の際に九人の仲間と共に酒呑童子を打ち倒し、現世と霊界に平和をもたらした英雄である。

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