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人間軍vs字無 巡 その3

 こうして無慈悲なゲームは始まってしまったが、頼りにされた召喚者達は、実戦経験など無く、泣き叫ぶ者がほとんど。

 そんな中、隊長が指揮をし直す。


「怯むな! 魔法で攻撃しろ!」

 その言葉が聞こえる範囲にいて、正気になった魔法を使える兵士が化け物を、焼き尽くし、凍らせ、潰し、切り刻んで攻撃していく。


 それが他の兵士にも伝わり、反撃の狼煙を上げ始めた――ように見えたが……


「ギャアアアアア! あづっ! あづいいい!」

 魔法を使っていた兵士が燃えだした。


「考えが甘いって」

 無詠唱で発動した巡の魔法は、反撃していた魔法使いの数を減らしていく。



□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



「あんた、私を守ってくれるんでしょ!? だったら代わりに死んでよ!」

「ふざけんな! んなもん、ヤるために言っただけに決まってんだろうが!」


 化け物に背を向けて逃げる二人、常盤学園の生徒は、人恋しさから召喚されてすぐに恋人になっただけの関係。

 お互いが本当に好きあっている訳ではない弊害が、命を懸けた場面で如実に現れる。


 罵りあいながら、何とか逃げ切っていた二人の先に、地面から生えてくる化け物。女子生徒が横に逸れて避けようとした時にそれは起こった。


 男子生徒に引っ張られ、あまつさえ突き飛ばされたのだ。

 スローモーションになっていく景色の中、化け物よりも醜悪な顔を見て、後悔の念に襲われたが、その顔が信じられないほどの驚きに変化していった。


 原因はわからない。

 ただ、頭の上を飛び越えて、男子生徒に襲い掛かる化け物の姿だけをハッキリ認識できた。


 男子生徒は後ろに避けようとするが間に合わず、腰に抱きつかれると粘度を持った液体状に変化し、グチャリという音を立てて地面にへばり付いた。


「ゲームしゅぅぅぅぅうりょぉぉぉぉぉ! ……です♪」

 ピエロの宣言とともに煙となって消えていく化け物達。


「いでぇぇぇぇ! お前、お前が死んでれば! 責任取って助けろよ、クソ女ぁ!」 

 女子生徒の前には、下半身が溶けた痛みに泣き叫ぶゴミ(・・)が一つ。


 誰かを傷付ける怖さを知らなかった女子生徒は、自分が殺される恐怖を知り、言葉を発する事なく、召喚された国への道ではない場所へ、よろよろと歩き始める。

 後には、ゴミが発する言葉が空しく響いていた。


「もぉう! アナタ、まだ生きてるんですかぁ? さっさと殺されちゃってくださいよ!」

「お断りだね」

 巡はピエロと軽く言葉を交わしながら、退却命令によって遠くへ去って行く集団を眺めている。


 あの程度なら、他も問題ないはず。

 何せ、全員がどうやってか自分の”読心”スキルをガードするくらいの実力者だからな。

 そう思い、魔王城へと戻るのだった。

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