表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/87

大使

「そういう訳です」

「えっとぉ……いいんですか、正直に言っちゃって? 私達は人間ですし、今のが事実なら、そちらの味方になる場合、リスクが大きいって考えるのが普通だと思いますけどぉ」


 菖蒲の考えももっともで、この状況で魔族側に付いたら、通常は死ぬと考えるべきだし、運よく生き残っても、この世界で生き辛くなる。

 なにせ人間が支配してる世界で、元とはいえ反逆者になる訳だから、まともな生活は送れなくなるだろう。


「もしも私どもと闘って頂けるのであれば、相応の」

 シャラが言い終わる前に、部屋の扉が乱暴に開かれた。


「おぉ、いたいた。この私を待たせるなぞ失礼であろうが」

「おやめください、大使殿!」

 そこにいたのは、いかにも聖職者といった服装に憎たらしい顔の男と、トカゲが二匹。


「おや? この国では大使に危害を加えるのか。さぁ~すが魔族、卑劣なものだな!」

「……下がってよいぞ」

「しかし!」

「構わぬ」

 リディアの言葉に一礼し、部屋を後にするトカゲ。


「失礼をした、大使殿。」

「まったくだ」

「しかし、刻限は夜。そちらとの会議は明日であったはずだが?」

「なに、ちょっとした用件でね。こちらに召喚者がいるはずだから、引き渡してもらいに来たんだよ」

 男は五人に目を向け、やたらと芝居がかった動きをしだす。


「おお、貴方達ですか! 我等の手違いで、このような汚らしい魔族に捕まってしまうとは、お詫びのしようもございません! さあ、さっさとこんなところを後にして人間のいる国へ参りましょう!」

 そこに集まるのは同意の意志ではなく、冷めた視線であった。


「大使殿。連絡のない深夜の訪問、さらに客人への説明無き態度。いくらなんでも無礼であろう」

 リディアに(いさ)められると、鼻をフンッ! と鳴らして、不機嫌さを隠そうともしない。いかにも小物感がする男だ。


 だが、窘められた事は無視し、懐から水晶の欠片を取り出して、前に差し出した。

「この水晶が貴方達の運命を導いてくれます! さあ、我等と一緒……に……? ……あ?」

 急に様子がおかしくなる男に対し、リディアとシャラが顔を見合わせる。そこに男の呟きというにはデカい声。


「全員、特殊スキル無し……で、能力も普通……? なんだ、ハズレか。あ~、どうされますか? 一緒に来ますか?」

 あからさまに落胆して、やる気もなくなった男に五人が返答する。


「俺は止めておく」

「僕も」

「やだね」

「遠慮させて頂きます」

「お断りしますぅ」


 全員が断ると思ってなかったのか、少しだけ驚きの表情を見せたが、すぐにつまらなそうな顔へと変化させて、適当な挨拶だけ済ませて出て行った。


 その際、小声で"捕虜にした方が楽しめるしな"という旨の発言をしたのを五人は聞き逃さなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ