出会い
自己紹介こそ済んだものの、結局はこれからどうするかというのが決まらない。
ただ、いつまでもこうしてる訳にもいかず、菖蒲が移動を提案しようとした時、馬が一頭だけで向かってくるのが見えた。
「あれは何でしょうかぁ?」
その馬は確実に五人の方へ向かって来て、その姿はどんどんと大きくなっていく。遂に数歩かからない距離まで迫り、止まった背には二人の人影。
片方が先に降り、もう片方が抱きかかえて降ろされる。
瑞希より少し小さいくらいの身長で、前頭部の両側に小さな角を生やし、黒いマントに黒いビキニ、黒いブーツを履いた子供だった。
「お主等、何者じゃ!」
威厳を出そうと、必死に無い胸を張っているが、威厳も胸も出ていない。
「えっとぉ……この子はぁ?」
菖蒲の言葉とともに、全員が保護者と思われる凛とした女性に目が行く。
こちらはなめした皮に厚めの鉄板を誂えた軽鎧、金属のブーツを履いている。白い肌に鮮やかな緑色の髪と長く尖った耳は普通の人間にない特徴だ。
その女性から出た言葉はこうだ。
「この方は国の女王である、リディア・ルルリア様です」
「……この、のじゃロリが?」
控えめに言っても、コスプレした小学生にしか見えないが、どうにも冗談を言ってるような雰囲気ではない。
「のじゃロリ?」
「語尾にのじゃのじゃ付ける女児の事」
「女王らしい口調であろう?」
どうやら女児は意識的に喋っているらしい。女王っぽさは欠片もないが。
「そんな事より、お主等は何者で、どこから来たのじゃ?」
リディアはとにもかくにも話題を元に戻そうと必死であるが、五人も事情がよくわからずにいるため誰ともなく、ここにいる理由を説明した。
「ならばお主等は召喚者じゃというのか?」
「えっと……その召喚者っていうのが詳しくは知らないけど、多分そうだと思う」
驚いた様子のリディアと側近だろうか? その女性に対してフォローを入れると悩んだような困ったような空気が流れた。
だが、結局は事実として受け入れてくれたのだろうか、詳しい話をするために城へと案内される運びになる。
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「異世界から召喚した人間だから召喚者。まんまだな」
「妾が言い始めた訳ではないのじゃ」
夜も深まった頃。異常に大きい城の中、さらにその中の一室で、召喚された五人と連れてきた二人が話をしていた。
そこは魔王城。
魔族の王が住む場所だと説明され、今いる世界についても同様に説明を受けた。
この世界――アルディアでは、かつて人間と魔族が争っている最中だという。
だが、先代魔王が倒されて戦況が大きく動き、人間の有利に働いている最中らしい。
その原因は最近になって人間の国で作成された魔法、異世界召喚にある。異世界から召喚された者は、特殊なスキルや高い能力を持ち、有用な戦力となるため、人間の国で大量に喚びだしているそうだ。
つまり巻き込まれ事故だ。という理由に、喚び出された五人は溜息を吐いた。