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戦果はどれだけ?

「そんな……信じられません……」

「俺達も信じられなかったがな。まさか力押しだけしかしてこないとは思わなかった」

「……そういう意味で言ったのではないのですが」


 実はそれぞれが進軍を止めた後、魔王城に戻る前に周辺の索敵をしていた。

 だが、伏兵一人見つからず、困惑してるところに各自で顔合わせと事情説明となった訳だ。


 犠牲を減らすために斥候を使い、侵入するための経路確保などを行うだろうと踏んでいた五人は、予想が外れてやる気を無くして戻ってきた。


 今考えれば、一万もの兵を用意して、残りわずかな魔族に奇襲を掛けたのだ。損害など大して出るはずがないと図に乗っていたとしても、まぁおかしくはないかも。

 などなど追加説明が加えられるも、リディアとシャラは納得していない様子が窺える。


「それなら、見に行ってみたらどうですかぁ?」

 との提案により二人は魔族の兵士を連れ立って、まずは一番近い、空から降ってきたという敵兵のところへ向かう。

 ちなみに五人はさっさと部屋に戻っていった。


 半信半疑ながらも、まずは空から敵が墜ちてきたという付近に到着すると、遠目にも竜が倒れているのが見えた。

「本当だったのじゃ! 竜を倒すなんて凄いのじゃ! わーい!」

 召喚者の戦果に興奮し、走り出して近くに寄ったリディアは、


「み゛ゃぁぁぁぁぁぁ!」


 悲鳴を上げながらUターンした。


 未だ戦いに参加した事はなくとも、今までも死体を見る事はあったが、それらは形を保っていた。

 しかし今回はバラバラに分解し、通常は身体の内側にあるはずのものやらなんやらが、全てブチ撒けられた状態になっている。さすがに女児にはキツかったらしい。


 軽くトラウマを発症しかけたが、なんとか王の意地で耐え抜き、シャラに死体を検分してもらう。

「……どうだったのじゃ?」

「どうやったら、あんな風にバラバラになるのか……それこそドラゴンに踏まれたのかと思うくらいの有り様です。」


 実際にはドラゴンもやられているので、そんな事はありえないのだが。

 全員が死亡しているのを確認し、次の場所に向かう一向。


「ひにゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 そこでも悲鳴を上げる事になった。


 なにせ、敵兵の身体がドロドロに溶けているという異常事態。

 しかも、まだ蠢いている者もいる。つまり生きているのだ。

 そこに野生の鳥や獣が寄ってきて、溶けた部分を食い荒らす度、か細い悲鳴や懇願、怨嗟の声が耳を打つ。


「……まともに動ける人間はいないようですね。魔法を使っても、こんな事出来ませんよ」

「次に行くのじゃ……」

 力無くリディアが宣言する。


 馬を走らせ、次々と戦場となった場所を見回るが、その度に悲鳴が上がる。

 外傷は見当たらないのに白目を剥き、呻くだけの兵士達や、至る所で地面が抉れ、人間の残骸とでも表現されそうな物が、あちらこちらに散らばっていたり、身体の一部が炭化して死んでいるのを見てしまったせいだ。


「おおぉぉ……気分が悪いのじゃぁ……」

「あの方達は一体、何者なんでしょうか?」

 魔王の補佐に付く者として、数十人程度なら同じように倒す自信はあるものの、何百、何千という数が、倒れ伏す状況に戦慄するシャラ。


 地面が一直線に溶け、ほのかすかに見える小山の頂上が抉れ、戦場独特の血生臭さとは一変、焦げ臭さが辺りを漂う光景に、とんでもない爆弾を抱え込んだのかもという不安が頭をよぎる。


「ここまで被害が大きいと事後処理が大変ですね、いろいろと。……はぁ」

 当面の危機は去った事はありがたいものの、相手にしづらい召喚者達と敵兵の惨状を頭に浮かべ、もう一度だけため息を漏らした。

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