何が起こっている?
「な、何事じゃあ!?」
リディアが寝室で睡眠を取っていると、少し遠くの方から爆音が聞こえ、閃光が走るという騒がしさに強制的に目を覚めさせられた。
急いで部屋を出る準備をしているところへ、シャラが慌てて飛び込んでくる。
「魔王様、大変です! 人間達が攻めてきました!」
「何じゃとぉ!?」
「ですが、どうにも様子が……」
見張りからの報告をまとめたものを説明していくが、リディアは不可解さに首を傾げる。
曰わく、人間軍の兵士を見かけたと思うと、なぜか掻き消えた。
曰わく、急に進軍を止めた。
曰わく、爆発や光がほとばしった。
曰わく、空から死体が降ってきた。
それから退却していく人間軍を唖然と眺めていたらしいのだが、正気に戻って報告に来たと。
「攻めてくる前に何があったのじゃ?」
「不明です」
「ふむぅ……」
人間軍の謎の行動に謎の現象、不安ばかり残るが、今は攻め込まれなかった事に安堵する。
時刻は薄い陽の光が差す頃合い。
もし奇襲を食らっていれば、戦闘準備が済んでいない上、夜行性の種族もいる魔族側は圧倒的不利な立場に置かれていたのだから。
とにもかくにも人間軍の条約破りについて、早急に会議を開く必要があった。
が、会議室へ向かう途中で変な連中が反対方向からやって来るのを眼にする。
「あやつらは昨日、召喚された者達ではないか」
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「変身ヒーローとか……マジか――ぶふぅ! いや、悪んふっ!」
「笑ってんな。俺だって、なりたくてなった訳じゃない。それに、お前らだって変人の集まりだろ」
「誰が変人よ。斬るわよ?」
「あのぅ……梓さん、キャラ変わってませんかぁ?」
「まぁまぁ。ほら、みんな少し変わってるんだから、一緒っていう事で」
「「「「お前が言うな(あなたが言わないでください)」」」」
つい先ほどまで外が騒がしかったのに、気にした風でもなく連れ立って歩く5人に呆れを感じつつ、走り寄っていく。
「お主ら、こんな朝早くから何をしておるのじゃ!? 今は外の状況が不明じゃから、部屋に戻るのじゃ!」
「よぉ、のじゃロリ」
必死で叫びながら忠告しているにも関わらず、巡の軽口に出迎えられ、これだけ騒がしいのに状況を把握しとらんのか? コイツ頭湧いてるんじゃなかろうか? と、リディアは失礼な事を考えたが、その言葉に続きがあった。
「アイツら倒しといたから。んじゃ寝るわ、おやすみ」
それが合い言葉のように、五人ともが解散して部屋に戻ろうとするのを、リディアは無理やり引き止める。
「アイツら!? アイツらって誰の事なのじゃ!? まさかお主らが人間軍を倒したとでも言うんじゃなかろうな!?」
「落ち着きなさいよ」
早口でまくし立てるリディアを落ち着かせて、全員が説明を始めた。
ただし内容は、四方と空から進軍してきたので潰したとだけしか言われず、二人の混乱は最高潮に達した。