人間軍vs流堂 紅真 その1
「先に忠告しておく! 今の内に降伏か退却をするなら悪いようにはしない!」
紅真が攻めてきた人間軍に向かって言い放つ。
だが、そんな忠告はどこ吹く風。
何もない平野に一人ポツリと立ち、一万もの兵士に言葉を発する様は、滑稽であった。
少なくとも、それを目の当たりにした者は馬鹿にされてるのか、真正の馬鹿なのか、はたまた罠を仕込んでいるのか判断に困っていた。
その困惑を断ち切るように隊長が前進あるのみ、と告げる。
この世界に住んでいる人間にとって、召喚者は駒である。
確かに異常な強さを誇っているが、魔法で呼び出せば大量に湧いてくるし、どれだけ平和な世界にいたのか? 脅し、宥め、すかし、餌をぶら下げてやるだけで洗脳が完了するという、使い捨ての駒。
そんな者がいくら死のうと、数で押せば罠があろうと突破できると踏んでの判断だった。
戦争は数である。英雄と呼ばれるような人物でも、数の暴力には勝てずに蹂躙されるのみ。
紅真も同じ道を辿るはずだった。
普通の人間であったならば、だが……
「引かないか……仕方ない、恨むなよ?」
そう呟くと、両手をクロスさせながら前方に突き出す。
その腕を上下に開ききり、半回転させていく。
すると回転の中心に異次元のエネルギーが抽出され、蒼い水晶のような物体――ガル・クリスタルが精製される。同時にエネルギー変換装置が胸の中心に現れ、ガル・クリスタルを取り込み、紅真は認証コードを叫ぶ。
「ガル……レイヴァァァァァァァ!」
紅真の身体を変換されたエネルギーが巡り、細胞を変化させていく。
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説明しよう!
紅真は異次元のエネルギー、ガルトロンを体内に取り込む事で、ガルレイヴァーへと姿を変えられるのだ!
異次元からエネルギーを抽出できる術を編み出したのは他でもない紅真の父、真一博士である。
だが、その研究をしていて気付いてしまった。異次元からの侵略者という存在に!
博士は侵略者から地球を守るため、実の息子である紅真に実験を施す。
それはガル・クリスタルから抽出したエネルギーを体内の細胞に流し、同じ性質を持たせる事。
それにより紅真はガルレイヴァーへと進化を遂げ、己の身体を意志一つで変質させられるようになった。
侵略者――アズダー帝国との戦いは熾烈を極め、その中で真一博士は命を落とす。
しかし、紅真は博士の願いを……想いを受け、皇帝アズダーとの戦いに挑むも、力及ばず敗れる。
命を散らしてしまうかと思われた時、最後の仕掛けが発動。
負担を考えて制御されていたエネルギー変換装置のリミッターが外され、膨大なエネルギーが身体中を駆け巡り、ガルレイヴァー・インフィニティへと覚醒。
勝利を収めた。
悲しみを乗り越え、世界を救ったヒーロー。
それが流堂 紅真の正体である!