人間軍vs杠 瑞希 その1
「あの……俺と付き合ってください!」
学校では見かけない外国から来たような容姿の少女。
本当は人知れず告白したいのだが、その少女は現れる時間も場所も決まっていないため、見つけた時に勇気を振り絞るしかない。
その少年も帰り道、いつもとは違う道を通って偶然、発見したのだ。
周りには友達もおらず、小学生にとって告白は恥ずかしいものだと思っている故に好都合だった。
意を決して告白したはいいものの、帰ってくるのは無情な宣告。
「ゴメン、本当にゴメンね。その……僕、男なんだ。」
余りにも辛い現実に打ちのめされ、呆然と立ち尽くした後、号泣する少年。そんな犠牲者を大勢作りだし、不登校やグレる少年まで現れる。
だが地獄はそこで終わらない。
自分がどれだけ成長しても、初恋の男がいつまでも変わらない姿で街を歩いている。
いっそ殺してくれと、どれだけの男達が願った事だろう。
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東側の人間軍に所属させられている召喚者達の何割かは、トラウマメーカーの姿に無惨に散った初恋を思い出す……
士気はだだ下がりだ。
そのトラウマメーカーこと瑞希が、一本の杖……いや、ステッキをどこからか取り出し、良く通る声を張り上げた。
「お願い、フェアリーステッキ。僕に力を!」
その声と同時、周囲がピンク色の空間へと変わっていくが、その間は不思議な事に誰も動けない。
瑞希の体が白く塗りつぶされたように光り出す。
最初に足のつま先から膝より下のシルエットが変形して光が弾けると、そこにはピンク色に塗られた靴とニーハイソックス。
今度は手の指から肘の先までの光が弾け、純白の手袋を装着していた。
次に腰辺りから上下に分かれるようにして、光が弾ける。
フリルに彩られたミニワンピースが、どこからともなく吹く風に揺らされ、ひらひらと宙を踊る。
最後に顔の光が弾けると、バレッタのような物を付け、髪を飾りながらウィンクをして一回転。
ステッキを片手に持ち、ポーズを決めた。
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二十年前、こことは違う異世界である妖精の国がピンチに陥った際、一人の妖精が地球へと転移。
その時、謎の病で身体が弱っていた瑞希を見つけ、事情を話して取引を持ちかけた。
「私は貴方に力を与えてあげる。その代わり、私達の世界を守って!」
死を拒み、一も二もなく提案を受け入れた瑞希を待っていたのは、ディメイスと呼ばれる謎の侵略者から異世界を守る魔法少女としての宿命。
激しい戦いの末に敵の首領・クアーガとの一騎打ちで力尽きようとしたとき、妖精の国の女王から更なる力を受け、伝説のトゥインクルモードへと昇華。
見事、クアーガを打ち倒し、平和へと導いた。
その名は――
「ピュア・ハート、ただいま参上! 君の心を癒してあげる♪」
――耳が痛くなるほどの静寂が訪れた。